表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

猫の目三角、犬より四角

 (しゅ)は猫でマルと呼ばれている。


 マルという名は、所構わず引っぺがしては隙間に潜り込んで、真ん丸になっている姿が可愛いからではない。

 ましてや、懐石シリーズが並んだ器を眺めて、真ん丸にした瞳を輝かせている姿が愛おしいからでもない。


 主の目は三角だ。

 幸い逆三角ではなく、正しく三角である。


 最近の事である。

 最近と言っても、この棚の上にあるリモコンを(はた)き落とした2分ほど前の、つい最近の事を言っている。


 この家には犬である事を自覚したことさえ無い、飼い犬が一匹いる。


 シロという安直な名をしている。

 その名に似つかわしく想像に容易い見た目。そう、シロナガスクジラだ。


 主は時々、この様な意味のないウソの様な話しをする。


 話しを戻そう。

 シロの話は実はどうでも良く、そのシロが使っている皿に乗っけられた黒ずむもの。そうだ、ジャーキー。こいつで話しは始まる。


 魚を干さずに肉なんてものを干すのだから驚くのは頷ける。

 当然、干したのはシロなんかじゃない。そんな事する様なタマじゃないから。


 何もする事がないから、シロの近くで眺めていたんだ、ジャーキーを食べている姿を。


 とても間抜けた顔をしていたさ、よほど美味しかったのだろう。


 するとシロは、主の鼻の前にジャーキーをチラつかせてくるんだ。


 わかるんだ。

「食べてみる?」って貢ぎ物を差し出す様に、大事にしてるゲームソフトを貸し出す様に、そして分かち合う事で確かめ合う様に。


 だから何時だって「ニャー」を突きつける。


 気まぐれではなく毅然と。


 時々噛んでみるから、気まぐれなのだとトンチキな思い込みをされる。


 主も何時だって暇という訳ではない。

 手際良く判断をしたい時もある、主の都合を知らないのだろう可愛い奴である。


 一度だけ訂正しておこう、可哀想な奴である。


「マルー」「マール」なんて呼び止める。

「ちゃん」だの「たん」など付け加えてみたりと随分気まぐれな呼び方だ。


 主が忙しい時に限って呼び止める。

 それは何故だか分かる。

 嫉妬だ。主の目を自分に向けて欲しい一心で。


 それも仕方がない、可哀想な奴である。


 所詮、人というのはそういうものである。


 この飼い犬をシロと決めてはいるが、その名を呼んでやったことは一度もない。


「にゃぁ」


 それが精一杯だ。


 そうそう、マルという名の発音や、装飾に意味はない。


 意味があるのはマルと呼び掛けることだ。


 呼べば、丸でも三角でも四角でもどれでもちゃんと繋がる。

 だが二だけは繋がらないらしい。

 重ねるとバツになるそうだ。


 可哀想な奴である。


 今回だけ特別に訂正を許しておこう、可愛い奴である。


 バツな時には目をよく見てみれば良い。


 瞳じゃない、目だ。


 二つとも曲げれば繋がる事くらい誰にだって分かる筈。

 丸と同じ要領で二つとも曲げればね。


 今日だけ特別に目は瞑っておいてやろうと思う。



これは(しゅ)である猫のマルが教えてくれそうな話し。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ