第8話 試験の始まり
LeN:(れに)です。
最近寒いですね。まじで。
秋はどこへ行ったのやら……
結は選んだ道を進みながら、周りの光景が変化していくのを感じていた。
最初は幻想的な空間だったが、次第に風景は荒れ果てた荒野に変わり、空は暗く重く垂れ込めていた。
足元に転がる岩や枯れた木々が、どこか不安を掻き立てる。
「ここが、試練の始まりなの?」
結は自問自答しながら、足を進めた。
この場所には、何か圧倒的な力が宿っているような気がした。
そのとき、急に風が吹き荒れ、結は目を細めた。
視界が一瞬にして遮られ、砂埃が舞い上がった。
「これは…試練?」
結は顔を覆いながらも、足を止めることなく前に進み続けた。
風の中、ふと目を向けると、遠くに何かの影が見えた。
影はゆっくりと近づいてきて、次第にその姿を現した。
それは巨大な影のように見え、結の前に立ちはだかっている。
「誰?」
結はその影に声をかけた。
すると、その影はゆっくりと動き始め、声を発した。
「試練を乗り越えるためには、まず自分と向き合うことだ。」
その声は低く、力強く響いた。
結はその言葉に驚き、足を止めた。
「自分と向き合う?」
「そうだ。」
影は一歩踏み出すと、その身をはっきりと見せた。
それは、結の顔と同じような、若干歳を取った自分自身だった。
「あなた…私?」
結は目を見開き、その場に立ち尽くした。
目の前にいるのは、確かに自分に似ていたが、どこか違う。
それは、まるで自分が時間を経て成長した姿のようだった。
「私は、あなたが乗り越えるべき試練そのものだ。」
その姿が、結の目の前で確信を持って告げた。
「試練を…乗り越える?」
結はその言葉の意味を理解しようとしたが、心の中で不安が膨らむばかりだった。
自分と向き合うこと、それが一体どんな試練なのか、まだ見当もつかなかった。
「試練を乗り越えなければ、この先に進むことはできない。」
その声が、結の胸に重く響く。
結は深呼吸し、もう一度その姿を見つめ直した。
目の前にいるのは、他でもない自分自身だった。
過去の自分、これからの自分、すべての自分を受け入れることが、この試練の意味なのだろうか。
「私は、どうすればいいの?」
結はその問いを口にした。
その問いに対する答えは、すぐには出てこなかった。
しかし、何かが彼女の中で少しずつ変わり始めていた。
「自分を受け入れること。」
影はそう告げると、結に向かって歩み寄った。
「過去の自分も、今の自分も、未来の自分も、すべてを受け入れて、進んでいくことが必要だ。」
結はその言葉を噛み締めながら、ゆっくりと頷いた。
過去の自分を受け入れること、それが最も難しい試練だと感じた。
「私は…受け入れる。」
結はその決意を胸に、深く息を吸い込んだ。
そして、目の前の自分自身に向かって、歩み寄った。
「私は、今の私を、過去の私を、受け入れる。」
その瞬間、風が静まり、空が少しだけ晴れ間を見せた。
試練の一歩が、静かに始まった。
結はそのまま前に進み始めた。
自分を受け入れること、そして、次の試練に進むことを決意して。
アリエルの声が、静かに響いてきた。
「あなたの試練は、これから始まる。進みなさい。」
結はその声に答えるように、足を進めた。
新たな試練を乗り越えるために、彼女は歩み続けるのだった。
(たぶん)続く
最近、空がすごい綺麗に見えます。
………………………え?私だけ?あれ?