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My home, in yesterday  作者: 葉桜 藍
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My home, in yesterday

「あ、海鳥さん。ここいいんじゃないですか?」

 助手席に座っていた紬が声を上げる。そこは車の通りが少ない道で、少し開けたスペースのある場所だった。向かいの山をみると、何本か風力発電の風車が見えた。

「あ、いいですね。ここにしましょうか」

 そう言って結喜が車を停めると、二人は車を降りてそばにあったベンチに腰かけた。

 神崎鼻公園を後にした二人は、どこかで食事にしようという話になった。二人は途中で見つけたコンビニでご飯を買うと、どこか食事ができる場所を探して走っていた。そうしてこの場所に辿り着いた

「本当はどこかのレストランとかで食べてみたかったけど、見当たりませんでしたね」

 残念そうに呟く紬。ここまで走ってきた二人だが、特にレストランらしきお店もなかったので、コンビニで買うことになった。紬の言葉に結喜が申し訳なさそうに答えた。

「すいません。そこまで調べてこなかったから」

「いえ、気にしないでください。外で食べるご飯も私は好きですから。あ、そういえば」

 紬が何かを思い出したような声を出した。

「今日も海鳥さん、写真を撮ってましたよね? よかったら見せてもらってもいいですか?」

「いいですよ。ちょっと待ってください」

 結喜はスマホを取り出して、この日撮った写真を表示させた。一枚一枚流れるように表示させると、紬が吐息を漏らしていた。

「うわあ……やっぱり海鳥さんの写真て、とってもきれいですね」

 結喜の撮った写真を見て、うっとりと誉める紬

 結喜は今日一日、たくさん写真を撮り続けた。それは結喜だけが見つけた世界で、彼女が素敵だと感じたもので、彼女にしか見つけられないものだった。

「やっぱり、海鳥さんはすごいです。海鳥さんが見つけた世界はとてもきれいで、海鳥さんでないと見つけられない世界だと思います。それを写真にできるのは、本当に素敵なことなんだと思います」

「そ……そうですかね」

 紬の言葉を聞いて、本当にそうだろうかと結喜は首を傾げる。彼女は自分がきれいだと思った景色を写真に撮っているだけで、自分だけが見つけたものではないと思う。

 自分が特別だとは、思ってもいなかった。

 だけど、確かなことが一つあった。自分が撮った写真を見て、喜んでくれる人がいる。きれいだと言ってくれる人がいる。

 もし自分が写真を撮る理由を聞かれたら、きっと理由はそんなところだろう。

「海鳥さん、今日はありがとうございます」

 その時、いきなり紬が声を上げた。いきなりお礼を言われた結喜は戸惑ってしまう。何故そんなことを言われたのだろうかと。

「えっと……ありがとうって、何がです?」

「今日、一緒にドライブに連れて来てくれたことです。海鳥さんが見る世界を私も見たいっていうお願いを叶えてくれて、本当に嬉しかったです。だから、ありがとうございます」

 そう言って、にっこりと笑う紬。それが本心から来る言葉だとわかる結喜は、つい顔を逸らしてしまった。

「あ、そんな、大丈夫です。私も……楽しかったですから」

「本当ですか? だったらよかった」

 紬がホッとしたように笑みを零す。最初は紬と一緒にドライブに出るなど、結喜はどうしようか迷っていた。そのことを知っていた紬は気にしていたはずだ。

 だけど、結喜も今日を楽しんでいたことを知ったことで、紬は安心したようだった。

 その時、紬が身を乗り出して結喜に声をかけた。

「海鳥さん。よかったらまた一緒に、ドライブに連れて行ってくれませんか?」

 その問いかけに目を見張る結喜。紬はまた、結喜と共に旅に出たいと言ってくれた。

「また、一緒に……?」

「はい。私、これからも海鳥さんとドライブに行きたいです。これからも海鳥さんが見つける世界を、私も見つけていきたいです」

 以前の結喜だったら反応に困っていただろう。一人でいることが好きな彼女にとって、誰かと一緒にいることは避けたいことだったから。

 だけど、今は違った。また紬と一緒にドライブに行くことを想像すると、結喜の心がワクワクしていた。またこんな旅ができたら、どれだけ楽しいことだろうかと。

 その時、結喜があることを思い出す。紬の部屋に行った時のこと。その時のことを思い出した彼女は、おずおずと口を開いた。

「……いいですよ」

「本当ですか!」

 結喜の答えに喜ぶ紬。そんな彼女に結喜はさらに口を開く。

「はい。でも、一つだけお願いがあります」

「何です? 私にできることなら言ってください」

 結喜の言葉を待つ紬。結喜はそれを言うのが恥ずかしいのか、言いにくそうにしながら口を開いた。

「私、好きなアニメがあって、そのアニメの音楽がとても好きなんです」

 いきなりアニメの話になって、紬が怪訝な顔を見せる。何を言い出すのかと疑問に思っていると、結喜はそのお願いを口にした。

「それで……私も楽器をやってみたくなって、トランペットをやってみたいんです。だけど、音楽のことは何もわからなくて……蛯沢さんは音楽をやってるんですよね?」

 結喜が好きなアニメ『かるドラ』では吹奏楽の音楽が流れていて、それを聞いていた結喜は、トランペットをやりたいと思い続けていた。

 バンドをやっているという紬に、勇気を出してお願いした。

「よかったら今度、トランペットを買いに行くのに、付き合ってくれませんか?」

 それはささやかなお願いで、だけど結喜にとっては一大決心したお願いだった。以前の彼女なら言い出すことはなかっただろう。今でもそのお願いを口にしたことで、胸がドキドキしていた。

 そんな結喜のお願いを聞いた紬はどう思ったのだろうか。彼女はとても嬉しそうに笑ってくれた。

「私の行きつけのお店、紹介してあげます。とてもいい店だから、気に入ってくれると思いますよ」

 図らずも、次のお出かけの約束ができてしまった。結喜はその日が来るのが待ち遠しくて、楽しそうに笑うのだった。

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