閑話⑩ 5分間の2人の思考
ディルの槍を学長が弾き、その体のブレという隙を見逃さずディルが遅延させていた魔法を放つ。そして学長が素早く詠唱し生じた盾により防ぐ。2人は、これを幾度も繰り返し続けていた。
このままではやがて自身の魔力が先に尽き押し負ける、そう俺は現状を理解し、打開策を考える。
誘導の影響でディルが俺を無視してあいつらを殺しに行くことはないが、俺が死んだらその効果も切れ、あいつらも死ぬだろう。救援が間に合う確率は低い。
魔術関連の技法ではレベルが上回られている以上、総エネルギー量に劣っていることは明らかなため、攻撃したとしても勝ちきれない。
早く殲滅が終わったとしてもここに来るまでにはあと1時間はかかるだろうが、想定以上に消耗が多く、計画していた半分の10分ほど持てば御の字である。
このことを悟られては、誘導に気付かれる恐れがある以上、余裕がある雰囲気を出す必要がある。
で、あるのであれば、魔力が残っているうちに切り札を切るほかないだろう。
そう考えた学長はディルの気のゆるみを見逃さず魔法を放つ。
「光魔法Lv7 ライトジャベリン!」
「ぬっ!?」
やれやれ、我としたことが、守り一辺倒であったために自身の防御のことを一切考えていなかったわ。
慢心は隙となり、命取りであるとロキ様に何度も注意されている以上、この場でこの者をしっかり殺して、任務を・・・ん?なぜこの者を殺す必要が?この者を放置し任務を遂行することに何ら問題は
その思考にとらわれ攻撃の手を数瞬止めたディルに学長は手を触れ、呪術を発動する。
「隙あり、光闇流呪術・奪音・・・ここはどこの 細道じゃ」
前半の部分を強調して言い、後半の部分はディルには聞こえない大きさで呟く。
「しまっ!?」
その瞬間、ディルは自らが発する声すらも聞こえなくなってしまった。
「ちっと、通して 下しゃんせ」
そうつぶやき、これで少しは楽になるな、と考えた後、速やかに距離を取ろうとする学長の腕をディルが掴む。
学長は驚き、声が出そうになるが、堪え、キッとディルをにらみつける。幸い、ディルに学長がかけた音を奪う呪術は効果を成しているようで、何ら不自然に思わずディルは誇る。
「我から音を奪うか!だが、我にはロキ様より賜りし呪いがあるのだ!」
そうディルは言うと学長の腕を引く。
ステータスの差により倒れこむ学長の首をディルが両手で掴む。
その手から禍々しい黒い帯が学長の首に移動し、縛り、消える。そして、ディルが手を離すと、学長は倒れてしまった。




