第7話 紫崎 美咲の ターニング・デイ
私はあの男に首をつかまれていた。
痛い。いたい。イタイ。
私の首からあの男の手が離れると、体に力が入らない。
「けほっ」
「さて、時は満ちた。そして、贄としてふさわしい、女の用意ができた。今こそこの世界にあのお方を招くとき!」
あの男は、そう言い、私を蹴とばす。
「うっ」
あの男は、
「いあ!しゅぶ=にぐらす!森の黒山羊にかりそめの肉体を!宿り給え!」
と、よくわからない呪文を唱え、私のほうに腕を伸ばす。
すると、私の下に書いてあった魔方陣が光りだした。
・・・何も起こらない?
「ふはは!この母体に種付けをし、子を産ませれば、その子こそが大いなる力を宿す支配者となるだろう!」
何を言っているのだろうか、この男は。
そう思っていると、扉が勢いよく開き、年上に見える、私をさらってきた少年が入ってくる。
「ふざけるな!ディル、我を謀ったのか!その少女が不治の病に侵されていて、それを直すためにさらってくるように、と言ったのではないか!」
「ふん!今更気付いたか!だが、もう遅い!儀式は終了した!あきらめるがいい!」
「ふざっけるなぁ!」
そう言い、少年が闇であの男を攻撃する。
「ふはは!効かんな!我に闇は効果をなさぬ!そして、ここはスキルを用いない攻撃が一切できない特殊ダンジョンのBOSS部屋だ!ダンジョンボスを拘束して安全地帯にしているのさ!そして、武器を没収している貴様に我に抵抗するすべはない!」
「っく!なめるな!触手展開!鎖術!」
「ぐっ、なに!?黒宮、貴様、奥の手を隠していたか!だが、我に勝てると思うな!」
戦闘は激化し、少年は地に伏した。
「はぁ、はぁ、なかなかてこずらされたぞ。だが、我の勝利だ!」
あの男が、私に近づいて来る。先ほど言っていた言葉通りなら、私は犯されるのだろう。抵抗したいが、体が動かない以上、何もできない。
あぁ、私は無力だ。
その時、ドン!という音とともにいつの間にかしまっていた扉が開く
「通報があったから来たのだけれど、指名手配されているダンジョン犯罪者が2名。謀られた?でも、片方は倒れてる・・・」
その時、少年が起き上がり、親指を下に向けた左手をあの男に向けながら、
「ディル、タイムオーバーだ。俺の勝ち。地獄に落ちやがれ」
と言った。
あの男はまだ新たに入って来た女性から目を離せないでいる
入ってきた少女が、
「声的に、通報したのは怪盗クロとやら?もともと義賊のようなことをしていたにもかかわらず少女を攫い、指名手配されたと聞いたけれど、よくわからないことばかりするわね。」
ようやく現実を受け入れたのかあの男が
「くそが!黒宮め!ここに覚醒者を呼び込むとは!だが、ここは我、ディル・バンパイアの領域だ!我が深き闇に飲まれるがいい!」
闇が少女を飲み込もうと迫るが、少女は微動だにしない。
「おいで」
そう、少女がつぶやくと、少女の手には大きな鎌が握られており、大きくそれを振るうと、闇は消え去った。
「なっ!魔法を切るだと!ありえん!」
「レベルが500をようやく超えたばかりの赤子程度の魔法が、私に通用するわけがないでしょう?切り裂け、大鎌」
そういった直後、あの男は下半身だけとなっており、少女は何も持っていなかった。
「さて、この後始末をどうすべきかしら」
「おいおい黄泉さん、また派手にやったねぇ」
「!ヴィドさん。何でここに?」
「あぁ、黄泉さんが追ってる相手が、覚醒者と、その前まで至っている少年の二人組って聞いたからな。さすがに荷が重いかと思ったんだが・・・不要な心配だったようだ」
「んーん。私が来た時には、クロのほうは地に伏してた。多分、仲間割れ?まぁ、今から切り捨てるから関係のない話。」
「ま、まってください!」
「ん?被害者の攫われた・・・美咲ちゃん、だっけ?なに?」
「あの、その少年、クロさん?は、悪い人じゃないと思うんです!なので、見逃してもらえませんか?」
「・・・そう。被害者のあなたがそう言うなら、見逃しましょう」
「おいおい、いいのかい?次のミスがあったら俺のチームに入っておとなしく上の言うことを聞くって・・・」
「ぁ・・・まぁ、仕方ない。吐いた唾は吞めぬ。でも、今の国家に縛られたパーティーは嫌だし・・・そうだ、ヴィドさんがチームごとデストロイヤーに来て?」
「えぇー・・・仕方ないなぁ・・・」
よくわからないけれど、私も、あの少年も助かったのかな?
意識が遠くなる




