第6話 紫崎 美咲の一日 後編
「むぅ・・・もう顔色一つ変えないわね」
「執事ですから」
「1年で随分と様になったわよねぇ。最初はあんなに顔赤らめていたのに」
「・・・昔は昔です」
そういうと、いきなり腕を伸ばし、前を洗い始めた。
「キャッ、くすぐったいじゃない。いきなり前を洗い始めるのはやめてよね。」
「・・・その手には乗りませんよ?」
割と本気だったのだけれど、からかいの一環だと思っているようだ。その思い込みに乗ってごまかそう。
「むぅ・・・ちょっとくらい表情変えてくれたっていいじゃない。」
「・・・明日は、お嬢様の15歳の誕生日ですね。」
そうだ、あの話題があった。
「そうねぇ。でも、ルーレットどうやって回しましょう?」
「回すという意思があればボタンを押す必要はないそうですよ」
えっそうなの?
「あら、そうなの?よかったわ。首から下は呪いで私の意志じゃ動かせないもの、どうやってルーレット回すか考えていたのよ?こう、舌を使って、とか」
「とても間抜けに見えますのでおやめください」
間抜けってひどくないかしら?それに、真正面から私の体の全てを見ているのに、少しも顔色を変えないのは・・・少しむかつくわ。
「・・・ねぇ、足を洗う時に私の正面に来ても全く顔色かえないのはさすがにどうかと思うわよ?」
「執事ですので」
絶対違うと思うのだけれど、私は執事じゃないしわからないから何も言えなくなってしまった。
そんな私を気にせず元黒は細部まで洗う。変な声が出るのを抑えながら、終わるのを待つ。
その後、元黒は私の体を流し、洗顔をし、私を浴槽に入れる。お姫様抱っこのような持ち方をするので、ドキドキしてしまう。
それにしても、私を浴槽の中に入れて、数十分微動だにしないのはどういうからくりなのだろうか?
「ねぇ、いつも思うのだけれど、私を数十分風呂に入れている間ずっと腕だけで支え続けるのってきつくないのかしら?」
「執事ですので」
「うーん・・・執事とは何ら関係がない気がするわ」
絶対違うと思うのだが、私は執事ではないので何とも言えない。
数十分が経過し、元黒は私を風呂から上げ、備え付けてある椅子に座らせ体を拭き、ブラとパンツを着せ、髪を乾かし、寝巻を着せる。とても恥ずかしい。この赤らみは入浴したからだと思ってくれるだろうか?元黒は私に「失礼します」と声をかけ、車いすに乗せ換える。
そのあと私は大好物の葡萄ジュースを大人ぶってワイングラスに入れて飲ませてもらい、歯を磨いてもらい、自室に運ばれる。
元黒に抱き上げられ、ベッドの真ん中に置かれ、毛布が掛けられる。
「お休みなさいませ」
「おやすみ~」
全く眠くないのだが、私が寝ないと元黒は何もできないため、私が寝た2時間後くらいに寝ることができる元黒を少しでも長く寝かせるため、ベッドに入るのだ。
いつも通り今日あった出来事に悶々としつつ、体を自分で動かせないことをもどかしいと思いながら、明日のスキルルーレットで念動や飛行を得、思い通りに動くことを思い浮かべながら、眠る。




