第1話 弟子が増えた
アザトース招来を未然に防いでから早1週間、今日、5月14日に、私はどうしようもない存在と相対することとなった。
「なぁ橙木君、一つ聞きたいんだが、いいかい?」
「なーに?」
「なんでここにいるのかな?」
「駆逐さんに修行をつけてもらえって言われたから?」
違う、そうじゃない。聞きたいのはそのようなどうでもいい内容ではない。・・・まぁ、そそのかしたのが駆逐さんであるとわかったのは良いことだが。
「あぁ、私の聞き方が悪かったね。」
「うん?」
「私が作った異空間であるここに、何でいるのか、聞きたいんだよ。入れないはずなんだが・・・」
「あ!それはね、巫女姫様がえいってやったら開いたの!すごかった!ぐわわーってなってぴょんって!」
あぁ、巫女姫サマなら可能か。にしても、なぜ私のところに?いや、修行しに行けと言われたと言っていたが、自分で教えればいいものを・・・
「はぁ・・・まったく。後で文句を言わなきゃな・・・」
「え!?なんでなんで!?」
「私は何も聞いていないからだよ。」
そう、私は何も聞いていない。事前連絡がされていない以上、修行の準備はできていない。そもそもどれについて修行をつければいいんだ?
「ふぇ?駆逐さんが当然のように言ってたから話通ってると思ってたんだけど・・・通ってなかったの!?」
「あぁ・・・ところで、親御さんは心配してないのかい?なんて言って出かけてきたんだい?」
私がそう尋ねると、橙木君はすこし寂しそうな表情をした。これは、聞くべきことではなかったか?だが、一応学長という身分である以上、聞かないという選択肢はない。
「その・・・ね?おとーさんはダンジョンができてからずぅーっと潜り続けて、月に1回くらいしか返ってこないし、おかーさんもおとーさんと一緒に潜ってるから、あんまり帰ってこないの。だから、問題ないのよ?」
おうふ・・・やっぱり聞くべきではなかったか。だがまぁ、生きているならいいだろう。死んでいる者について尋ねたわけじゃないから軽症・・・だ。うん。
「・・・そうか。では、好きなだけいると良い。あぁそうだ、ちょうど藍田君も修行しに来ているのでね、あちらの道場の中にいるからそっちに行っていなさい。」
「ふぇ?わかった!ししょーはどこいくの?」
「し、ししょー・・・んん!まぁ、ちょっと私は駆逐さんに説教しなければならないからね。すぐに帰ってくるさ。」
「?いってらっしゃーい」
その後私は駆逐さんに文句を言いに行ったが、気付いたら言い負かされ、修行をつけることになっていた。おかしいなぁ・・・まぁ、橙木君に修行をつけることを言いに行くか。有言実行がモットーだしな。




