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恐るべき強敵(白目)

はて、この物語を書き始めた時はこんな変態まみれな話になる予定はなかったんだがなぁ……なんでこうなった。

邪神戦ももっとシリアスな感じになるはずだったのに……

「……えーとアルベルトさん? 何故貴方は此方を見ているのでしょうか?」

ジリジリと後退りしながら問い掛ける。うん、わかってるんだよ? わかっていても認めたくない現実ってあるよね?

距離は凡そ15m、だがその程度の距離は英雄クラスの前衛には無いに等しい。俺ですら100m走で1秒を切りそうなのだ、戦士系で位階100なら敏捷メインでなくとも最低保障値だけで+100されているからな。

そして睨み合うこと暫し、ふと俺が瞬きしたまさに瞬間、アルベルトの姿が消えた。

第六感による警報。その感覚に従い前方にダッシュ、勢いに任せて前転しながら振り返ると先程までいた場所にアルベルト氏が立っていた。

ヤベェ。あの人こっちの瞬きのタイミングに合わせて背後に回り込んで来やがったぞ!? 魔物相手というよりは明らかに対人戦闘のテクニック、ベテランの経験は伊達じゃないってことかよ!

「ほう……幾多の相手にセクハラをしてきた私の尻撫でバックアタックを躱すとはな」

まって、どんな経験積んでるのこの人。

「だが私もスケベ大魔王と呼ばれた男……一度狙った相手のケツはそう簡単には逃さない」

おい「双剣乱舞」の二つ名何処に行った。

笑みを浮かべながら歩み寄って来るアルベルトに、俺は背を向けて逃げ出したい気持ちを抑えながらもじわじわと後退る。本能で分かる、アレに背を向けてはいけないと。だが奴はわずかに左右に動く事で俺の動きを制限、その逃げ道を誘導し追い詰める……そしてそれが分かっていても俺はそう動くしかない。誘導された道から外れれば一瞬で捕獲されると理解するが故に。

いつしか辺りは静まりかえり、冒険者達も邪神も手を止め、固唾を飲んで俺達の動きを見守っていた……いや何やってんの? 特に邪神。

そして俺はとうとう追い詰められる。少し前にアルベルトが切り開いた触手の海の空白地帯、ちょうど海に突き出た岬のようになった場所に入ってしまったのだ。背後と左右は状態異常を起こす粘液に包まれた触手の海、正面には変態(アルベルト)……まさに前門の虎後門の狼! まあ狙われてるのは俺の肛門なんだけどな!(笑えない)

「くくく、もう逃げられんぞぉ」

にちゃり、と笑ったアルベルトが、グッと体を沈み込ませて俺に飛び掛かろうとしたその時、俺は覚悟を決めた。

「邪神様助けて! 変態に襲われる!」

──え゛?──

俺は大きく後ろ向きに跳躍し、触手の海の中へと自ら飛び込む……ぬるぬるとした状態異常を巻き起こす粘液にまみれて蠢く触手の塊、普通ならば中に入った瞬間に足を取られて転倒し、粘液まみれになって状態異常の餌食だろう。普通ならば。

だが俺は二本の脚でしっかりと触手の上に立っていた。足に装備されているのは「英霊のブーツ」。その装備効果「踏ん張り強化」はヌメる粘液の上でもしっかりグリップ力を確保し、「バランス能力向上」は蠢く触手の上でも転倒を防ぐ。地味だと思ってた効果だが実は凄い有用でした……何せ踏ん張り強化は壁にすらコンマ何秒か吸い付くからガチで壁走りとか出来んだよなぁ…… ついでに言えば「内部自動浄化(中)」はたとえ粘液がブーツの中に染み込んで来ても浄化して無効化してくれるはず。ある意味「英霊のブーツ」はメタ装備だと言っても過言ではない。

「フハハハハッ! 「双剣乱舞」のアルベルトよ! いかに英雄クラスのお前と言えども、邪神様のお力の前にはそう簡単に手を出せまい! そこで大人しく(俺が逃げるのを)見ているがいい!」

──え゛え゛え゛……(ドン引き)──

助かったぜ邪神さんありがとう! これぞ「虎の威を借る狐」作戦! あーばよーとっつぁーん! 踵を返して触手の海の反対側へと逃げ出す俺……第六感に反応!

とっさに横っ飛びした俺の直ぐ脇を、何かが凄まじい勢いで通り過ぎる。恐る恐る顔を向けると、そこには触手の海が真っ二つに切り開かれて道が出来ていた。その道の先端には双剣を構えたアルベルトの姿。

「(・・;)あの、それ避けなかったら俺死んでるヤツでは?」

思わず顔をひきつらせていると、アルベルトがゆっくりとこちらに向き直る。

「……そう心配するな、避け切れなければ寸止めする」

ニヤリと笑うとアルベルトは、右手の剣を順手に、左手の剣は逆手に持ち、大きく足を開き腰を捻って半身に構える。

「……ブレードテンペスト・アサルト」

ヤバいっ! 再びの横っ飛び。今度は見えた。全身を独楽の様に回転させ、双剣で周囲の触手を切り刻みながら触手の海を進むアルベルトの姿が。紅海を割って進むモーゼの如く、アルベルトの前の触手の海が割れ道が出来る。……あのアーツ、あの威力ならそこまで連射は出来ないだろう。恐らくクールタイムは30秒~1分くらいだろうか。ならばその間に出来る事は……!

「邪神様助けて!(二度目)」

触手の海の中心、恐らく邪神の核であろう人間形の触手の塊に駆け寄る。ちょうど邪神の核ー俺ーアルベルトで一直線になる位置取り。ふっ、邪神よ、アルベルトをどうにかしないとお前も巻き込まれるぞ!(外道) これが作戦名「他力本願寺」だっ!

──く゛る゛な゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛!──

だが俺の目論見は他ならぬ邪神の手によって外される。巻き添えを嫌った邪神はごん(ぶと)触手による凪払いを俺に向かって放つ。咄嗟に跳躍してごん(ぶと)触手の上に乗り、脚をたわめて衝撃を吸収して攻撃を無効化する。だが勢いまでは殺せず、振り抜かれた触手に打ち上げられて吹き飛ばされる。しかし高い器用値と感覚値、そして英霊のブーツのバランス能力向上の効果で、俺のバランス感覚は体操のオリンピックメダリストもビックリレベルの超人の領域に達している。クルクル回転しながらも、俺は触手で出来たドームの頂上に両足で着地する。

「逃がさん! ブレードテンペスト・アサルトォッ!!」

そこに再び放たれるアルベルトのアーツ。畜生! 休む暇もないな! ケツの処女! 俺のプライド! ヤらせはせん! ヤらせはせん! ヤらせはせんぞぉぉぉっ! もう一度跳躍してドームから降りる。ドームに激突するアルベルト。崩壊する触手ドーム。

──あ゛──

「あ」

崩壊したドームの中から折り重なる様に何人もの女性が現れる。例外なく着衣が乱れ、ドーム崩壊時に触手の粘液を浴びたのかほとんどがピンクのエフェクトを纏っている。

「……ふむ?」

それを見てアルベルトは少し考え込むような素振りを見せると、双剣を大上段に構え、裂帛の気合いと共にアーツを放つ……触手の海の外に向けて。

「双飛斬・剛波!」

触手の海が扇形に消滅する。それを満足気に見て頷いたアルベルトは、やおら両肩に倒れていた女性の内の二人(かなり美人、ついでに巨乳)を担ぐと、自らが切り開いた道を通って立ち去って行ったのだった……

──な゛ん゛だっ゛た゛の゛……──

あっ、あいつ女の子お持ち帰りしやがった!

なおアルベルトさんは合意のない性行為をしようとしたところで、復活して合流しようとしたパーティーメンバーに見つかりボコられて戦線離脱したそうな。


ごん(ぶと)がごん()に見えるのでルビ入れることにした。ノッポさんはいません。フゴフゴ。


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