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邪神 その脅威

相変わらずのシリアスさん不在。

戦場は程なく地獄と化した。

俺は……俺達は邪神という存在を甘く見すぎていた。

攻撃能力はそこまで高くはない。だが無限とも思える再生能力と大量の触手による攻撃回数、そして何より戦闘に入ってから謎の粘液を分泌し始めた触手による攻撃は高確率で状態異常をもたらした。それにより多くの冒険者達が戦線離脱する事となり、彼らの現状は地獄としか表現しようがなかった……

「……やらないか?」

「俺、ずっとお前の事が……変、だよな。男同士なのに……」

「ちょっとケツ貸してくんね?」

「こんな可愛い子が女の子のわけがない! エミリアさん! 僕と付き合ってください!」

「ふざけんなエミリアちゃんは俺がいただく!」

「えへへ、ヴァイスさーん♡ しゅきー♡ ね、ボクのこといっぱい可愛がって?」

「シン、すまないが急用が出来た。ここは任せても良いだろうか(キリッ)」

状態異常の名は「発情」、触手の粘液が体に付着する事で効果を発揮し、その効果は性欲が異常に高まり手近な相手で発散したくなる事。効果中はなにやらピンク色の靄のようなエフェクトが掛かる……そして集まった冒険者はほぼ全員男である……地獄だな、ホントに地獄だな!? あとヴァイス、テメーは状態異常にかかってねーだろ! なにエミリア抱き寄せてんだよ! どこ行く気だテメー!

ちなみに一部、我慢出来なくなった連中がいるようだがそちらの方は見ないようにしている……R15は死守しないと運営さんに追放されちゃうぞ!(つまりR18な光景が繰り広げられている模様)

そしてそれ以上にヤバいのが……

「……アイツ……いいな……」

「あれが「逃(インフェリア)水」(ミラージュ)……〇〇〇(ピ───)して泣かせたい……」

「シンきゅんの後ろの処女は俺のもんじゃぁぁぁっ!」

「……俺は見てるだけで満足……ハアハア……うっ!」

……(;ω;) ねぇ、俺、何か悪い事したのかなぁ。何でこんな目にあわなきゃいけないの? 邪神さんと戦いながら背後からタックルかましてくるアホ捌かなきゃいけなくなってんですけどぉぉぉっ!

また一匹、襲いかかってきたアホを躱して触手の海に蹴り込む。すると男嫌いの邪神さんが嫌がって凄い勢いでポイしてくれるのでアホは暫く戦線離脱、戻ってくる頃には正気に戻っているだろう……素でアレな人は混じってないよね? そーゆー趣味でもさすがに戦闘中は控えるよね? つーか半数以上が状態異常くらってるから人手不足で触手の攻撃密度が上がって来てるんですけどぉっ!

「……やれやれ、だらしない連中だ。どれ、私が手本を見せてやろう」

そんな声が辺りに響いた瞬間、触手の海の一部が弾け飛んだ。いや、一瞬で細切れにされた為にまるで弾け飛んだように見えたのだ。

それを行ったのはたった一人の男。白銀に輝く軽鎧装備の上に黒地に金糸の刺繍が施されたサーコートを纏い、明らかに業物と見える剣を左右二本の手に握る中年の男性。明るい茶色の髪に鳶色の瞳、髭面だが不潔感は無く男臭さの中にもどこか愛嬌を感じさせる人の良さそうな容姿。取り立てて特徴のない、一見何処にでもいそうな温厚そうなおっさんに見えるが、そもそもただのおっさんは武装して戦場に出てこない。男が一歩前に踏み出す度に両腕と手にした剣が霞んだように見えなくなり、ほぼ同時に触手の海が弾け飛ぶ。

「……「双剣乱舞」アルベルト……」

位階100、英雄クラスの出陣だった。


「秘奥剣舞! ブレードテンペスト!!!!」

裂帛の気合と共に放たれたアーツが、触手の海を大幅に削る。英雄クラスの出陣は戦況を完全に逆転させた。殲滅速度が触手の再生速度上回り、少しずつではあるものの触手の海の範囲が狭まっていく。

「TUEEEEEE!」

「ヒャッハー! さすがアルベルトの旦那だぜぇっ!」

「来んの遅いッスよー! てかマリアの姐さんとかザックの兄貴とかは来ないんスかー!?」

「あ、すまん。アイツらはヤリすぎて足腰立たなくなったんで置いてきた。あと集中出来るように遮音結界張ってヤってたから気付かなくて遅れた」

「「「「なにやってんのこの人!」」」

「ナニをヤってましたが?(ドヤァ)」

……そういえば両刀使いで乱交上等だから「双剣乱舞」だったなこの人! てかおっさんのシモの事情とか知りたくなかったわ!

「異形の邪神よ! この「双剣乱舞」のアルベルトが来たからにはこれ以上好き勝手にはさせんぞ! 大人しく無限地獄に帰るがいい!(キリッ)」

うん、いまさら格好付けても手遅れなんだよ?

あれ? そういえば邪神って知ってるのこの人達?

『神界との連絡が断絶する前に神託でクエストが発行されています。有力な冒険者には神殿から連絡が入ったのでは?』

ああ、なるほど。それで事態に気付いて遅れ馳せながらもやって来たと。

──お゛の゛れ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ゛! わ゛た゛し゛の゛ゆ゛り゛ハ゛ーレ゛ム゛の゛じゃ゛ま゛は゛さ゛せ゛ん゛ぞぉ゛ぉ゛ぉ゛っ゛!──

おいこら邪神。

「笑止! この世の可愛い子は全てこの私のつまみ食い対象! 貴様などに渡しはせん!」

お ま え も か。

邪神と英雄、相容れない(ただし性癖的な意味で)者同士が己が信念をかけてぶつかり合う……それっぽく言ってみたけどどっちも変態だよ!?

──く゛ら゛え゛っ゛! か゛わ゛い゛い゛こ゛は゛わ゛た゛さ゛な゛い゛ア゛タ゛ッ゛ク゛!!──

「なんのっ! 一人占めは許さんというか俺も混ぜろスラァァァッシュッ!!!!」

邪神が何本もの触手を束ねて生み出した極太触手を叩きつけるが、アルベルトはそれを双剣であっさり切り刻み細切れにする。

──ゆ゛り゛の゛あ゛い゛だに゛は゛さ゛ま゛る゛お゛と゛こ゛は゛ゆ゛る゛さ゛ん゛ク゛ラ゛ッ゛シ゛ュ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ッ゛──

「くっ、ならば百合カプNTR大好きストライクゥゥゥッ!」

不規則な軌道を描く触手が襲いかかるがアルベルトはそれを躱して反撃……しようとしたところで足下の地面を割って生えてきたドリル状の先端を持つ触手に気付いて紙一重で躱す。だが回避先にも二の矢、三の矢として足下からドリル触手が攻撃を仕掛け、更には回避を潰すべく逃げ道に攻撃用触手が置かれる。回避不能の連続攻撃に、しかしアルベルトは慌てることなく両手の剣を大上段に振りかぶり、気合いとともに地面に叩き付ける。まるで爆弾でも爆発したかのような衝撃波が発生、アルベルトの周りの触手は全て吹き飛び、深さ1m程のクレーターの底にアルベルトだけが立っていた。

……いや、凄いバトルなんだよ? だがお前ら、技名が適当過ぎてギャグにしかならないんだよ? もうちょっと何とかならなかったのマジで。あと邪神、お前は俺の中ではもう残念キャラにカテゴライズされた。

──……や゛る゛じゃ゛な゛い゛──

「……貴様もな」

なにやらお互い認め合って強敵と書いて「とも」と読む的な感情が芽生えた模様。(へんたい)(どうし)を呼んだだけのような気がするが。

剣と触手を突き付け合いながらも共感を得た二人は、相容れないながらも相手を理解し、顔を合わせ微笑み合う。たとえ殺し合う運命(さだめ)だとしてもこの瞬間は確かに彼らは通じ合っていた……

べちゃ。

──あ゛──

「あ」

「「「「あ」」」」

アルベルトが吹き飛ばした触手、その比較的大きな切れ端が、偶然にもアルベルト本人の頭の上に落下。見事に着地するとなにやら粘液を撒き散らして消滅する。……そして現れるピンク色の霞。

アルベルトは頭をブルブル振ってから辺りを見回し……

あれ? なんか目が合った。そしてなんかめっちゃ見られてる。

「…………(にちゃあ)」

ヒェッ!

大 惨 事 の 予 感

ちなみに女の子達が「発情」していないのは「嫌がる女の子を無理やり手込めにしたい」という元縁故神の性癖が原因です。


邪神のくせに意外と弱いのも

・元縁故神と色欲の邪神が内部で主導権争いしてるのでエネルギー総量に対して攻撃に振り分けるリソースが少ない。

・そもそも分体。

・実は戦闘エリア全体に「発情」「感度上昇」「魅了」の状態異常の抵抗ロールを毎ターン発生させるヤベー能力があるが元縁故神が男なんか魅了したくないから使ってない。正直発情付与攻撃を使ったことも、そのせいでおぞましい光景を見るはめになって後悔してる模様。

・肉体に一切影響を与えず装備品や服だけ溶かす溶解液とかなんかもあったが元縁故神が男の裸体なんか以下略。

女の子に使わなかった理由? 半脱ぎの方が燃えるからだそうですよ?

・神界の干渉を防ぐために結構なリソースを割いているから。

等の理由があります。

制限無しだと英雄クラスが状態異常対策してレイド組む必要アリ。ぶっちゃけ迷宮都市単独では無理ゲー。

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