パワーレベリング3
最下層でエミリアと合流、その後ヴァイスを担いだままボスエリア手前の安全地帯まで移動する。そこでスヤスヤと眠る『いや気絶だから』ヴァイスを下ろして、ついでに返り汁まみれだったので生活魔法の「洗浄」と「乾燥」で綺麗にしておく。俺ってば親切♪
『……さっき自分がゾンビ汁を浴びないために盾にしてなかった?』
…………気のせいじゃないですかね。
さて、パワーレベリングを行うわけだが、今回は前回までとは一味違う。俺は収納から一つのアイテムを取り出す。
「ててててん!
魔香「闇の誘い」~(ダミ声)」
説明せねばなるまい! 魔香「闇の誘い」とは錬金術で造り出された特殊なお香である。これを焚くと出る香りを嗅ぐと暫くの間、闇属性と精神系状態異常への耐性が付与される。ただし敵味方を区別しない上、副作用として周辺の闇属性の魔物を呼び寄せリポップを促進してしまうため、闇属性のダンジョンで危険な為に使用してはならないとされている……
まあ使うんだけどな! いやー、昨日このアイテムの存在をエミリアから教えてもらった時は、そんな便利な物がある事に感動しましたわ。何故かエミリアは「え、ホントに使うんですか?」とか言って引いていたが。ちなみに原材料はゾンビの腐肉とスケルトンの骨にダンジョン産の木材……一回の錬成でキロ単位出来るのに使用は一回分ひとつまみ(約0.5g)だった。不人気アイテム過ぎて売ってないからヘイグさんに錬金依頼出したわ。例によってピカッで終わった。腐肉はビジュアル最悪だけど肉系アイテム特有のあの謎のビニール的な膜のおかげで匂いも汁も気にならないのは良かった……膜なかったらスミス親方に店から叩き出されてたかもしれん。
木の枝に生活魔法で着火、その上に魔香ひとつまみをパラパラと……なにやら甘いような臭いような妙な香りが漂ってきたな。お、さっそくスケルトンさん達がわらわらとやって来ましたね。こんにちはでは死ね!
素晴らしい。やはり道具の使用は人類の叡智、効率が段違いだ。なんかボスの経験値さんもリポップ一時間かかるところ20分で復活してたわ。もうウハウハですわ。
「……なんか目が覚めたら位階が上がってるんだけど……」
「諦めて下さいヴァイスさん。シンさんに関わると常識が破壊されます」
なんか酷い事を言われている気がするがスルー、確認するとヴァイスが位階37に、エミリアが33になったらしい……あれ? ヴァイス悪霊女の時に35になってたよな? まだそんなもんなの?
『……一応言っとくけど、一般的な冒険者は自分より位階の低い魔物をパーティー組んで狩るのが普通だからね? 格上狩りとかやってんの少数派だからね?』
言われてみれば最初に兎狩りしてた時は俺もそんな感じだったな。そりゃ位階も上がらんわ。つーか格下の経験値って絶対に獲得量減らされてますよね?
『位階1低くなる毎に-10%です。……ぶっちゃけそうしないと長命種が有利過ぎるから……』
あー、エルフとかスライム倒して300年とか出来るもんな……迷宮都市のチンピラの位階が低いのも上(ダンジョンならむしろ下か?)に行かないのが原因かな?
しかしこれなら夜中までガッツリ狩ればヴァイスは3次職いけるかな? 朝までやればエミリアも行けるかもしれん。と言う訳でそんな提案をしてみる。
「…………(白目)」
「……いや、そこまでおんぶにだっこと言う訳には……」
いやさすがに3次職になったら多少は魔物を受け持ってもらいますよ? まあパーティー(予定)メンバーのレベル差を少しでも無くす為のものだから此方にもメリットはあるんだよ? ……そーいやパーティーは組んでもらえるんだろうか……
「いやそれは構わないよ? 今のところ固定では組んでいないし、ここまで世話になってハイサヨナラはさすがにない」
「……なんかボクの中の常識がピンチですけど、それが性転換への一番の早道な気がします。だから此方からお願いしたいくらいですね」
「OKOK、なら正式にパーティー結成だな。あ、パーティー名とか決めるか?」
「そうだね……「†奈落の騎士団†」とかどうだい?」
「「ないです」」
ヴァイス……貴様厨二の者であったか……
「全くヴァイスさんは……ボクは「マジカル☆アドベンチャラーズ」がいいと思います!」
「「人の事言えないよね!?」」
魔法職お前だけじゃん!
なお、俺の候補「シンと愉快な仲間達」も普通に却下されました。解せぬ。
「なら「闇夜を渡る者」はどうだ!」
「いやそれはどうかと……「♡プリティ・ウィッチィズ♡」ていうのは?」
「魔女要素お前だけじゃん! と言うか現時点で全員生物学的に男だよ! 「美味しいご飯食べ隊」とかは?」
「単に自分の欲望じゃないか……「黒き放浪の群狼」!」
「誰も黒くないが? てかヴァイス、お前闇属性好き過ぎだろ。絶対「深淵」とか「混沌」とかも使いたいんだろ?」
「何故それを」
「わからない訳がないんですよね……「純潔の乙女隊☆」とか……」
「だから乙女要素が(ry と言うかお前ら純潔と言い張れるのか? えーと「ダンジョンキャンパーズ」……」
「「ダンジョンに寝泊まりするのは君だけだ」」
なんやかんやで収拾がつかず、結局第三者の神様案である「運命の標」に決定しました。
「まって! たかだかパーティー名を決めるのに神託使わないでーっ!?」
気にしない気にしない。
えー、年末の忙しさで会社が残業と休日出勤だらけになっていまして……頑張りますけどひょっとしたら3日に1回の更新ペース守れないかも……
まだ11月なのに36協定の特別条項がっ! 12月がどうなるのか今から戦々恐々です……




