パワーレベリング
「えええ……」
さて、怨念渦巻く古戦場10層、経験値さんことエルダーリッチさんをぶっ殺した時のエミリアの反応がこれである。おかしいな、最高効率で経験値稼ぎしたのにドン引かれたぞ?
確かに中級ダンジョンでも最高難易度のボスを何もさせずに暗殺したし、人間一人オンブして隠密してたのは絵面的に間抜けだったかも知れないが、経験値は大量に稼げたはずなんだが……
とりあえず放心したエミリアを背負って近場の安全地帯に移動する。
「おーい、安全地帯に来たぞー。位階どうなったー?」
「っ!? え、えーと……3つ上がってます……」
ふむ、元々の位階が低いから道中とエルダーリッチの経験値だけでも結構上がったな。そういやパーティーの経験値共有って別行動してても有効なんだろうか?
『あー、ダンジョンの同じ階層で100m以内に居れば有効ね』
神ぺディアさんいつもありがとうございます。……その条件だとエミリア安全地帯に待機させて100m以内で狩りすれば安全にレベリング出来そうなんですが可能ですかね? 後、ここボスエリアの最寄り安全地帯なんでボスまで100mないですよね?
『……あー……ヤバい可能だわ……え、これバグじゃないの?』
……!! つまり修正くらう前にやれと言うことですねわかります。あ、それとも神罰と言う名のペナルティとかあります?
『いやネトゲじゃないからそんなの無いけど……あ、創造神様に念話送ったら「仕様です」って返って来た。絶対面倒なだけだこれ』
……この世界、致命的なバグとか放置されてたりしませんよね?
『いやさすがに壁抜けとか地面すり抜けてマントルまで落下とか全裸でトリプルアクセル決めると硬直して操作不能とかは対応したからもうないし……』
かつてあった事にびっくりだよ! というか最後のどういう状況で発覚したバグなの!?
《エミリア主観》
「……なにこれぇ……」
ボクにとって彼……シンと言う少年は不思議としか言い様のない人間だった。
僕が男だと知っても態度を変えず、むしろ女の子として接してくれる人。
ヴァイスさんと並んでも遜色のない、ちょっと信じ難い美形。
いきなり神様をその身に降ろしてしまう聖人らしき人。
あんなに美味しいボニェルを滅茶苦茶嫌う人(納得いかない!)。
そして今日、ダンジョンに一緒に来てそのラインナップに幾つか新しいものが加わった。
人を背負ってダンジョンを信じられないほど高速で移動する(ヴァイスさんより、ずっとはやい)。
出会った魔物をすれ違い様に一撃で斬り殺す(ここ中級ダンジョンだよね!?)。
なんならボスも一撃(絶対おかしい)。
そして今、ボクは安全地帯にいて何もしていないにもかかわらず、定期的に位階上昇の光に包まれていた。
「ヒャッハー! 経験値置いてけーっ!」
シンさんは奇声を上げながら魔物を集め、安全地帯の近くで倒している。何か性格変わってない?
「おっと宝箱……おっとラッキー、アラームじゃん。はいパカッとな」
その階層の魔物を呼び寄せる罠を解除せずにわざと作動させてまで敵を集めてる!? 何やってんのこの人!?
怒涛のごとく押し寄せる魔物達。でも彼は焦る事なく剣を構えるとアーツを発動させる。すると剣が光に包まれて巨大な刀身を形成、そしてその剣を振るうと軌跡が飛ぶ斬撃となって魔物達の多くを切り裂き滅ぼす。残った魔物達は彼が切り込んで行って剣を振るう度にその数を減らし、あっという間に殲滅されてしまう。強すぎじゃないこの人!?
「やー、さすがに疲れたわ。ちょっと休憩」
うん、あれ普通なら即死級のピンチだよね。それをちょっと激しい運動した程度って……
……でもなんでこの人、ボクにこんなに親切にしてくれるんだろう。やり方こそ強引で非常識でイカれt……げふんげふん、変わっていても位階を安全に上昇させるパワーレベリングは、普通なら貴族やお金持ちが大金を支払ってやるものなんだ。ましてや中級ダンジョンの最下層だなんて相場が幾らなのか考えただけでも気が遠くなりそう。それを話の流れで実行し、しかもタダ。どう考えてもおかしい。……っは! まさか体目当て!? 駄目だよボクにはヴァイスさんという人がっ! そんな黙っていればわからないなんていや強引にだなんてダメぇ背徳浮気エッチとかそんな興奮なんてしてないらめぇ調教しないで離れられなくなっちゃううへへ……
「……おい、エミリア。いきなりぐねぐね身悶えしてどうしたんだ?」
「っ! ななな何でも無いよ気にしないで」
「あー、さすがに暇だったか? 何ならちょっと戦闘に参加して体動かすか?」
ヤバい妄想に没入してた。ちょっと今ボク立ち上がれる状態じゃないから時間を稼がねば! えーと……
「あ、あのさ、何でこんなにボクに良くしてくれるの? パワーレベリングとか普通はお金取ってやるものだよね?」
これで体求められたらそれはそれでうへへ。
「(え、そうなの? パワーレベリングって金になるの?)……あー、言って無かったな。ま、簡単に言えば後で体で返して貰おうと思ってな」
「(キタ━(゜∀゜)━!)か、体で?」
「あ、変な意味じゃねーぞ。……俺、今上級に潜ってるって言ったよな。ソロだとそのうち詰みそうだからある程度秘密守ってくれそうな奴とパーティー組みたいんだよね。エミリアとかヴァイスなら大丈夫そうだし、位階上げて一緒に潜れないかなーって」
「あ、あー体で返すってそーゆー」
(´・ω・`)残念、でもパーティー組んでくれるって……頼りになりそうだね。ヴァイスさんも誘う……っ! つまり3P! あ、鼻血出そう。横にならなきゃ……
「っ! お、おいエミリア! いきなり倒れてどうした!」
あー、なんか頭ぐるぐるするー。よし寝よう。おやすみなさーい。
「……寝たよコイツ……あー、レベルアップ酔いってやつか? 一気に位階上げ過ぎたか」
んー、シンさんがなんか言ってる……? あ、もう意識が……zzzzzz
主人公以外の視点にすると変態臭漂ってくるのは何故なんだろう……




