戦士の試練の闘技場
気を取り直して、やって来ました「戦士の試練の闘技場」。上級ダンジョンとしては比較的安全なので腕試しには人気だそうな。最初の敵は位階50相当で連続で2回戦うと位階が1上がって行く。ちなみにランダムで出現するレアエネミーの英霊は位階+5~10だそうな……あれ? 加護のレア率アップって……オラなんかやな予感がしてきたぞ。
『(・з・)~♪』
ま、まあつまり100連戦でボスの位階110の英霊と戦う事になるわけだ……ソロで格上で戦わせるとか無理ゲーじゃね? 人間位階100でカンストよ? クリアさせる気ないよね?
『スキルガン積みすれば行ける。あと位階は上限突破できるよ? 試練の大迷宮で100層以下に行けば攻略階層=位階上限になるよ?』
試練の大迷宮ってあれですよね。階層=敵の位階でやたら広くてドロップは微妙、オマケに転移陣が無いって言う嫌がらせみたいな迷宮。大陸各所にあって誰も最下層を見たことがない(不人気すぎて攻略する奴がいない)迷宮。あれレベルキャップ開放用コンテンツだったのか……この国にもあったよな。もしカンストしたら行ってみるかねぇ。つーか何気に誰も知らない知識をゲットしてしまった。神様との会話はチートですな。
『? いや知ってる奴は知ってるよ? 今も強さをひたすらに求めるパーティーが312層に篭ってるし。ドロップはショボいけど食料と生活用品多めだから無補給でもう50年は篭ってるわね』
その人達何が楽しくてダンジョン入ってるの……と言うか50年って今何歳だよ。人間ならそろそろ寿命で死なない?
『あ、位階が上がると病気や老化に耐性付くから寿命も伸びるよ? 大体位階50超えた辺りで病気にかかり難くなって、100超えで老化が露骨に遅くなって来るから。300オーバーとかたぶん殺されない限り死なないんじゃない?』
人間やめてらっしゃいましたか……
関係ない世界の話はさておき、今は「戦士の試練の闘技場」の話である。
ダンジョンの入口をくぐると石造りの真っ直ぐな通路になっており、しばらく進むと鉄格子に行く手を阻まれる。向こう側は所謂円形闘技場になっている……なんか観客席にゴブリンやらコボルトやらがいてギャーギャー騒いでるんだけど……あいつら乱入とかしてこないよね?
『実は闘技場の外側はただの背景です。音声付きの動画だけどね。鑑定スキルとかで調べて見えるフレーバー的には「内と外は結界で隔絶されている」事になってるけどね』
酷い裏事情だな!? つーか鑑定スキルって神様の都合で嘘吐く場合あるんかい!
ま、まあいいか、実害もないし。気を取り直して鉄格子に軽く触れる。すると目の前に半透明のプレートが現れる。
《闘技場に闘士として出場しますか?
Yes or No 》
もちろんyesで。タップすると鉄格子が音を立ててゆっくり上に上がる。同時に背後からガシャン!と音が響き、振り返ると鉄格子で来た道が塞がれている。……勝つかギブアップすれば脱出出来ると解っていてもなんか不安になるなこれ。
通路から闘技場に出ると、反対側にあるもう1つの出入口からガシャンガシャンと音を立てて、フルプレートアーマーの戦士__実際は中身のない鎧型ゴーレム__がこちらに向かって駆け寄って来る。
先ずは一当て、正面から斬り掛かるが、あっさりと左手に持った盾に防がれ……なんか凄い音がして盾に一文字の傷が入ったんですけど。何発か攻撃入れたら盾壊せないかこれ? 蒼牙の理不尽性能に戦慄しつつ、相手の剣を避けつつ防御の隙間を付いて反撃を入れる。……鎧に傷は付くが動きに変化なし。まあ痛みとか感じないからね。おっと良いのが入った。剣を持った右手首を斬り飛ばす事に成功する。これでほぼ攻撃能力を奪った……と思ったら盾を水平にぶん回して縁で攻撃してきやがった。驚いて思わずバックステップで距離を取る。そこに追撃でなんと盾をぶん投げて来た……いや投げてどうすんのさ。盾を失ったリビングアーマーに止めを刺すべく、一気に距離を詰め……何か嫌な予感がしたので横に跳ぶ。するとさっきまで俺のいた空間を回転する盾が通過、リビングアーマーがキャッチして再装備する。まってなんか物理法則無視した動きしてない!?
『むう、あれぞ世に言うブーメランシールド』
知っているのか神様!
『盾術のアーツだね。盾投げて攻撃、投げた盾が弧を描いて戻って来るっていうやつ』
……まともな回答だった。そこは嘘情報で適当な由来でっち上げて民○書房刊ってやつにしましょうよ。
『いや咄嗟に思い付かないからね!?』
それはさておき、リビングアーマーは思ったよりも手強い。確かにスピードはないが防御力とタフネスに優れる上に斬撃に耐性があり、攻撃面でもパワーがあるから一発がある。まあそもそも軽戦士系は相性が悪いんだよな、俺も蒼牙なんてチート武器が無けりゃ戦う気になれない。
ただまあ逆に言えば蒼牙さえあればどうとでもなる。何発か攻撃を入れてわざと防御させれば、案の定あっさりと盾が破壊される。こうなればもう無力だ。両腕と両脚を斬り飛ばしてダルマにすると、鎧の切断面から中を覗く。ふむ、鎧の胴体内部、ヘソの下__所謂丹田__のあたりに赤黒い謎の結晶が浮いている。これがリビングアーマーの急所のコアか。資料では胴内部にあるとだけで具体的な位置はなかったからな。場所は固定なのかランダムなのか知らないが、一度は見ておきたかったんだよ。さて、確認したらとりあえず「盗む」……反応なし、これは所謂「なにももっていない」状態。リビングアーマーはドロップも盗めるアイテムもないって話だったが本当だったな。では貴様はもう用済みだ。サクッとコアを蒼牙で一突き、リビングアーマーは煙と化す。
《次の戦いに挑みますか?
Yes or No 》
ここでNoを選ぶと報酬の宝箱が手に入るが、一戦目の報酬は下級ポーションで固定なのでいらない。5戦目からマジックアイテムが出始め、10戦目からスキルスクロールが混じり始めるらしい。とりあえず初回は10戦で様子見かな?
Yesを選ぶと再び相手方の出入口からリビングアーマーが出現する。ここでスピード差を生かし一瞬で背後に周り込むと暗殺術の初期アーツ「急所突き」を発動する。
急所突き
使用武器種:細剣、短剣、ナイフ
必要能力値:敏捷25 器用25 感覚40
消費精神値:5
効果:敵の急所に自動命中する突き攻撃を放つ
(攻撃の誘導だけで敵は防御や回避が可能)
使用後、再使用までに20秒が必要
敵の急所についての正確な知識が必要
発動したアーツは正確にリビングアーマーの丹田の位置にあるコアを背後から貫く。鎧の防御力は背後の方が弱いから、防御力自慢のリビングアーマーでも背後からなら簡単に貫ける。コアを破壊されたリビングアーマーはあっさりと煙と化して俺の前には再び半透明のプレートが現れる。
とりあえず後8戦、頑張ってみますか。




