狼の群れる森の狩場
やって来ました「狼の群れる森の狩場」。
ここに出て来るのはコボルトと狼系の魔物、ともにスピード系で群れる性質がある。さらにこのダンジョンでは「狩場」の名の通り、冒険者を確実に狩るために隠密状態から不意討ちしてくる場合があり、「索敵」と高い感覚値は必須である。更にコボルトが仕掛けたスネアトラップや落とし穴なんかの罠もあるので注意が必要だ。ただしコボルトの住処には宝箱がある場合があり、魔物を倒した時にも極低確率で宝箱がドロップするので、マジックアイテムを入手する機会が初級ダンジョンより圧倒的に多い。まあ大抵ゴミなんだが。
おっと、第一コボルト発見。第一層にいるのはただのコボルトだが、ゴブリンエリート程度のステータスはあるし、敏捷は倍近い。牙と爪は十分な殺傷能力がある上に、連携したり不意討ちしてくる知恵もあるわりと手強い魔物だ。……作品によっては雑魚として描写されるんだけどな。俺の「索敵」によって見えているコボルトの背後の茂みにさらに4体のコボルトが隠れているのが分かる。あいつ囮だよ。しかもあちこちに罠の反応があるから不用意に近付いたらヤバいな。さすが中級、厳しい。まあピュアシーフの俺にはバレバレなんだけどね。「隠密」状態で罠を避け、隠れているコボルト達の背後を取る。ほい、サクッとな。
ぼんっ!
背後から首を刺した瞬間、首が爆砕してコボルトの頭が飛んでいった。はい?
『……oh……』
頭が真っ白になるが、そのまま剣を振って隣にいたコボルトに切り付けると、なんの手応えもなく胴体をすり抜け、斬撃の軌道が爆発して上半身が下半身から分離して宙を舞う。グロい。
それを見ていた残りのコボルト3匹は、一瞬で目配せを行うと、バラバラの方向へ逃げ出した。……うん、怖いよね。やった俺がビビったもん。あ、慌て過ぎて1匹自分達の仕掛けた罠に掛かって、蔦で宙吊りになった。お間抜けさんにしっかり止めを差すと(やっぱり爆発した)ドロップを回収して一息つく。
……で、神様なんか知ってます?
『……自分がせっかく考えてたのに誰も利用してなかったゴーレム採掘をしてる子がいる事を知った鍛治神が、武器を新調するとき12の子供と聞いてせいぜい鋼の武器だろうと高をくくって祝福てんこ盛りにして製作されたのがその剣です。なんかあり得ない確率引いてランダム能力が最強クラスの組み合わせになっています』
……それ、神様の加護のレア運上昇のせいじゃ……
『あ』
あ、気付いてなかったっぽい。つまり実質運命神と鍛治神2柱のコラボによる剣がこの蒼牙になるわけだ……伝説の聖剣かなにかかな?
『……少なくとも王国の国宝より性能は上、聖属性あるからガチで聖剣を主張出来るね。ぶっちゃけラスダンの宝箱に入ってるクラスの武器』
まじで最強武器だった!? 冒険者歴1ヶ月未満のガキが手に入れて良い武器じゃないよね! これバグじゃないの?
『仕様です』
……これ、戦ってるところ他の冒険者に見られると絶対ヤバいよなぁ。剣の性能が普通じゃないのが一目でバレるだろうし。やっぱり位階上げは不人気ダンジョンでやるかなぁ……聖属性なら候補から外したアンデッドダンジョンも視野に入れるかなぁ。
とりあえず「狼の群れる森の狩場」を苦戦するところまで進むことにする。
コボルトファイター、スパンッ!(即死)
フォレストウルフ、スパンッ!(即死)
ウルフライダーコボルト、スパンッ!(即死)
フォレストウルフリーダー、スパンッ(即死)
コボルトリーダー、スパンッ!(即死)
コボルトレンジャー、スパンッ!(即死)
…………………………
……………………
………………
…………
……
はい、こちら「狼の群れる森の狩場」30層、最下層ボスエリア前になります(虚ろな目)。うん、道中の敵は全部一撃だったんだよ……10層ごとの中ボス含めて。まさか1日で中級ダンジョンの最下層にくるとか思ってもいなかったんだよ!
名前シン 性別:オス 年齢:12
位階:28 天職:墓荒、盗賊 恩恵:幸運
筋力:38 体力:18 敏捷:102 器用:94
知力:10 精神:18 感覚:102 幸運:90(+28)
技能:短剣術、生活魔法、隠密+2、索敵+1、盗む+2、解錠+2、罠+2、第六感、地図、鑑定、収納+2、採掘+2(ツルハシ装備で更に+1)
称号:兎の天敵、運命神の加護、採掘マスター
さすが中級ダンジョン、道中の経験値で位階が2上がった。経験値稼ぎを意識せず、移動だけでこれなら泊まり込みでダンジョンキャンプをすれば1週間もせずに位階40、すなわち3次職も見えてくるな。……なんかゲームで最強武器引継しての2周目感あるなこれ。
さらに道中2つの宝箱がドロップ、1つは中に入れた液体が冷え冷えになるコップ、もう1つは体術用の奥義書で「絶・○狼抜刀牙」(犬科四足獣のみ使用可能)を習得できるもの……テイマーなら需要あるかな? あ、コップは普通に自分用にとっておきます。たぶん売っても大した値段にならないし。
さて、ボスについてだが、ここのボスはコボルトキングで個体の力はさほどでもないがバフと回復を得意とする。また、大量の取り巻きが同時に出現し、さらに戦闘中にも一定時間ごとに仲間を呼ぶ能力を持っている。え、前の「深き緑の森」の群狼の長と被ってる? 群れる系統のボスなんて大抵そんなんだよ。
ボスエリアの外から見ると大きな岩の上に一際体格の良いコボルトが座っており、その周辺に数十体のコボルト達がたむろっている。数多くね? いや半分くらいはただのコボルトだからほぼ賑やかしかな? ぶっちゃけ全部一撃だったから処理の手間は変わらん気がするが。範囲攻撃が欲しいとこだな。短剣術のアーツは手数系か状態異常系が多いらしいんだよな。無いわけじゃないみたいだが。ちなみにボスの初回討伐報酬は、討伐で使用している武器に対応した奥義書が6/パーティー人数分落ちるらしい。ソロなら6つ、1つくらい範囲攻撃が混ざっていてもいいんですよ? 討伐2回目以降でもここのボスは奥義書を落とし易いらしいから、周回するのもありかな?
ボスエリアの境界を越える。それに気付いたコボルトキングが一吠えすると、周りにいたコボルト達が一斉にこちらに向き直る。……犬面が数十揃って歯を剥き出して威嚇してくるとか普通に怖いな。先ず来たのは鎧を纏った大きな狼に騎乗したこれまた鎧姿のコボルト、アーマードウルフライダーコボルトナイト……いや長いよ! アーマードウ、のあたりで鎧ごとずんばらりんされてお亡くなりになられちゃったよ! 一瞬で強目の個体が殺られたことに動揺するコボルトの集団に、俺は高い敏捷を生かして距離を詰めて切り込む。「蒼牙」を振るえば、一撃で葬られていくコボルト達、気分はもうチャンバラである。脳内では暴れん坊将軍の殺陣シーンのBGMが再生されている。もはや上位種も下位種も関係無い、どちらも当たれば即死なのだから区別する必要もない……嘘です。遠距離攻撃持ちのメイジ系とアーチャー系が鬱陶しいです。こちらとら攻撃力は高くても防御力は据え置きなんだぞ!(防具更新忘れ) 回避回避回避、近接型のコボルトを盾にして「隠密」、攻撃が途切れたところで後衛に襲いかかる。中級ダンジョンの敵だけあって「隠密」しきれずに幾つか攻撃が飛んで来るが数が少なければ問題は無い。一気に距離を詰めて目の前のコボルトハイメイジを……殺気! 背後から殴り掛かってきた大柄なコボルトに、振り向きざまに腕を切り落とし、返す刀で胴体をぶった斬る。そしてメイジに向き直ると……あれ?
皆さん、なんで尻尾を巻いて逃げ出してらっしゃるのでしょうか? ふと気が付いて直前に倒した大柄なコボルトを見る。立派な体格、しっかりした鎧にマント、頭に小さな王冠……どう見てもコボルトキングです、本当にありがとうございました。ぼんっと音を立てて宝箱に変わるキング。え、まじでこれで終わり? なんかボス倒したって気がしないんですけど!
コボルトキングさーん!( ;∀;)




