ゴーレム錬金術(ゴーレムを造るわけじゃない)
そういや10/14は砥石の日だそうですよ。
「おおー、めっちゃドロップしたなー」
ホクホク顔でドロップアイテムに近付く。
そこには1m×50cm×50cmの石の塊が5つ鎮座していた。1つ1つ色や質感が異なるが、具体的にどんな石なのかは素人目には判別がつかない。というわけで「鑑定」発動。
石材(花崗岩)、石材(玄武岩)、荒砥石、石材(石灰岩)、中砥石……ラッキー、砥石が二つある。石材を無視して砥石を収納、ツルハシを構え直して次に目を付けた獲物へと走り寄る。
さて、何故大量のドロップアイテムを得られたのか説明しよう。キーワードは「採掘」。実はゴーレム等の一部の無生物系の魔物は採掘が可能という仕様になっている。そう、さっき俺がやっていたのは攻撃ではなく採掘だったのだ。採掘行動では同じポイントから一定数採掘すると、一時的に採掘ポイントは消滅するという仕様だが、ゴーレムでもこの仕様は生きており、何度も採掘されたゴーレムは消滅する。この採掘行動によって手に入るのは魔石以外のドロップアイテムになる。欠点は戦闘扱いではないので経験値が入らない事だろうか。ちなみに採掘は一回ツルハシで叩くと筋力値(採掘技能による修正あり)に応じたポイントが累積し、一定数でドロップ機会が訪れ、器用値で入手判定、幸運値でアイテムの質が上方修正される……誰が検証したんだこれ。
そんなこんなで数時間もすると「収納」内部が砥石でいっぱいになる。まあ2m×2m×2mの空間にはゴーレムドロップの砥石は32個しか入らない。アイテムポーチの方は道具類を入れているから使えないしな。
こんなに簡単に収集出来るのに砥石が品薄なのには理由がある。
理由1、クソ重い。1m×50cm×50cmの石の塊を持ち歩きたい人っておりゅ? って話。つまり「収納」必須。
理由2、判別がつかない。ただの石と砥石に向いた石の判別がつけられる人っておりゅ? って話。つまり「鑑定」必須。
理由3、ゴーレムの攻撃力。動きは鈍いが中級に来たばかりの前衛冒険者が防御に失敗して直撃すれば即死しかねない攻撃力がある。そんな攻撃回避しながら採掘したい人っておりゅ? って話。つまり高い敏捷値による回避力と図太さ必須。
理由4、ダンジョンの仕様。実はゴーレムの索敵距離はパーティー人数に比例する。ソロなら5mだが2人なら10m、3人なら15m……逃げてノンアクティブになる距離も15m、30m、45mとなる。つまり複数人集めると採掘中に他のゴーレムが乱入してくる可能性が高まる。そうなると理由1~3の条件を満たしたソロでの採掘が最適解となる……そんな都合の良い奴そうそういないよねって話。
つまり現状、俺の独占状態な訳だ。まあ砥石の需要がどれ程あるのか知らんし、1個がでかいからこれ売ったらしばらく買い取ってくれなくなるかもしれん。とにかくスミス親方の工房に行って幾らになるか聞いてこよう。
はい、こちら現場のシンです。親方の工房に行って砥石見せたらお弟子さんが奇声を上げて飛び上がりスミス親方を呼び、その親方も砥石を見るなり目を見開いて襟元掴んでガクガク揺さぶってきました。そして現在、鍛治ギルドで筋肉質のおっさんどもに囲まれています。なにこの状況。
「……大物の荒砥石が15、中砥石が14、仕上げ砥石が3、粒度と硬度は様々だが、いずれも質は上々」
「「「「おぉぉぉぉぉぉ……」」」」
砥石を調べていたおっさんの言葉にどよめきが起きる。
「となると後はこれがどれだけ手に入るかだが……」
一番奥にいる偉そうなおっさん(たぶん鍛治ギルドのマスター)の言葉に、おっさん達の顔が一斉にぐるんとこちらを向く。ヒェッ。
ビビる俺に苦笑いしたスミス親方が話しかける。
「あー、すまんな。ここまで均質で大きい砥石が出て来るのは珍しくてな。ちょっと興奮してた」
「……ちょっと?」
「気にするな。で、シンよぉ、こいつは売ってくれるんだろうが、まだ仕入れる気はあるのか?」
「……経験値も稼ぎたいからずっとは嫌ですね。まあ数日なら……あ、ちなみにそれ午前中の稼ぎです」
「半日でこれかよ!」
ちなみに荒砥石1つ1000セル、中砥石1つ2000セル、仕上げ砥石5000セルだそうだ。マジか(`$ ω $´)
「ちなみにこいつを使いやすい大きさに切り分けたら末端価格は軽く10倍はするぞ」
マジか。
「……10日ぐらいならやってもいいかも。あ、でも供給過多になりませんかね」
「多分どこの工房も予備在庫として抱え込むと思うが、仮に余っても輸出すりゃいいだろ、良い砥石が不足してんのはどこも一緒だ」
「となるとボトルネックは収納の容量と鍛治ギルドまで売りに来る手間ですね。32個貯める度に鍛治ギルドまで来るのは地味に手間なんですよね。こう、1日に何度も面倒な事やると集中力が削がれるっていうか……」
「あー、ダンジョン入るのに集中力無くすのは不味いな」
「ふむ、それは此方でなんとかしよう」
スミス親方と話しているとギルドマスターが会話に入って来た。
「まず冒険者ギルドと交渉して砥石を受付で預かってもらえるように脅s……お願いしておこう」
いま脅すって言いかけたぞこのおっさん。
「後は一定数の砥石を納める契約をしてくれるなら、代金の前払いで鍛治ギルドにある「収納」のスクロールを売っても良い。市場価格は5万セル程だがそもそも出物が無いから手に入る物ではないぞ。おまけに「採掘」も2つばかり付けよう」
5万セルは大金……あれ? 荒砥石が1000×15で15000に
中砥石が2000×14で28000、仕上げ砥石が5000×3で15000の計58000セル……うっそだろこれだけで買えるやん。収納が+2になれば3m×3m×3mになって砥石が108個収納出来るし、採掘が上がればスピードアップは確実だ。うん、契約書を確認して……問題ないな。納める数が200とかになってるけど2、3日あれば余裕でこなせるな。
さて、食料と夜営道具買い込んだらダンジョンキャンプと洒落込みますか。
名前:シン 性別:オス 年齢:12
位階:26 天職:墓荒、盗賊 恩恵:幸運
筋力:36 体力:16 敏捷:94 器用:88
知力:10 精神:16(+5) 感覚:94 幸運:80(+26)
技能:短剣術、生活魔法、隠密+2、索敵+1、盗む+2、解錠+2、罠+2、第六感、地図、鑑定、収納+2、採掘+2(ツルハシ装備で更に+1)
称号:兎の天敵、運命神の加護
ところでゴーレムの砥石は天然砥石なのか人工砥石なのか……え、神工砥石? じゃあそれで。




