初めてのレアアイテム、初めての位階上昇、そして初めての収入
はい、休憩終了。狩りの時間じゃー!
50分も休まなくても精神値が1回復するだけでしんどさが無くなることに気付きました。まあ体の疲れを取る為に15分程は休憩したけどね。
後はひたすら兎狩り。戦闘時間で精神値を回復させ、ある程度貯まったら「盗む」、精神が0になると休むはめになるから1だけ残してまた戦う。そんな廃人じみた、この世界基準では狂気的な狩りを繰り返していると、「盗む」が発動した瞬間にいきなり謎の虹色のエフェクトが発生した。
そして俺の手の中には木製のデフォルメされた兎のブローチ。その存在を認識した瞬間、頭の中に勝手に情報が入ってくる。
幸運兎のブローチ(レア)
種別:アクセサリー
効果:幸運+5 位階上昇時幸運成長+1
兎系の魔物から低確率で「盗む」ことが出来るアクセサリー。一見安物だが装備者に幸運をもたらすれっきとしたマジックアイテムである。もっともこのブローチを手に入れることが出来た時点で十分幸運ではなかろうか。
キター! このアイテムの存在は知っていたし狙ってもいたが、盗む成功率は0.1%と聞いていたからここまで早く手に入るとは思わなかった。こういう成長補正アクセサリーは、位階が上がった時に能力値を追加で上昇させてくれる恩恵と同じ効果がある。つまり低レベルで入手する程効果が高くなるアイテムである。幸運補正アイテムは一般的な評価は低いが、それでも売ればそれなりの値が付く。売らんけど。
では早速装備してみよう。方法は簡単、ブローチを服のどこかに付けて「装備する」と念じるだけ。すると脳内でカチッというがして効果が反映される。ちなみにアクセサリーの装備枠は現在1つだけ、例によって位階が20上昇するごとに装備枠が増えるらしい。
補正装備も手に入ったし、そろそろ位階上げの為に経験値を本格的に稼ぎますか。いやもう頭突き兎を百匹近く狩ってるはずなんだけどね。経験値低過ぎじゃない? もう2層目に行ってもいいよね?
兎を狩りつつ入口の反対側、2層への階段を目指す。もう慣れ過ぎてほとんど足を止めずに処理出来るようになったよ。
そして2層への階段が見えてきた頃、兎を踏み殺した瞬間に俺の全身から粒子状の光が立ち上るエフェクトが発生。なるほど、これが位階上昇。分かりやすいな。
2層への階段を降りるとある安全地帯、その階段脇に見覚えのある石板が立っている。そこに手を触れると表面に文字列が浮かび上がる。
名前:シン 性別:オス 年齢:12
位階:1 天職:盗賊 恩恵:幸運
筋力:11 体力:10 敏捷:13 器用:13
知力:10 精神:10 感覚:13 幸運:12(+5)
技能:隠密、索敵、盗む、解錠、罠
よし、ちゃんと上がっているな。なんか体のキレが明らかに良くなっているように感じたけど、数値的には3割上昇してるんだよね。そりゃ変わるわ。しかしこれだけ身体能力が変わったのに普通に制御出来るのが不思議だ。車とかだったら、いきなり加速性能が3割増になったら事故りそうなんだけどな。異世界しゅごい。
さて、確認が終わったら2層で戦いますよー。2層に出てくるのは「角兎」。また兎かいっ! という突っ込みはさておき、この兎は額に5cm程の尖った角が生えているので普通に殺傷力があります。ドロップ品は最低品質魔石(極小)、まずい肉、小さな毛皮、そして兎の角……角が増えた以外変わらない? しょせん兎ゆえ致し方なし。ちなみに角は天職が「薬師」か「錬金術師」の持ち主が粉末にして初級ポーションの材料に加えると回復量が2割増の初級ポーション+になるらしい。つまり素材としての需要があるのでギルドで買い取ってもらえる。まずい肉と小さな毛皮? 買い取り拒否だよ、言わせんなよ。
飛びかかってきた兎を木の棒で叩き落とし、足で踏んで体重を掛けて首を折る。うん、角がある以外なにひとつ頭突き兎さんと変わりませんね。ただドロップの魔石が確定で落ちるようになって、たまに追加で肉、毛皮、角が落ちるようになった。魔石以外のドロップ率もこころなし増えた気がする。いや、これは幸運が増えたからか? 「盗む」の成功率も1/4ぐらいに上がっている。
そしてそろそろ迷宮の空の偽太陽が傾いてきた頃、再び俺の全身から光の粒子が立ち上る。
名前:シン 性別:オス 年齢:12
位階:2 天職:盗賊 恩恵:幸運
筋力:12 体力:10 敏捷:16 器用:16
知力:10 精神:10 感覚:16 幸運:14(+5)
技能:隠密、索敵、盗む、解錠、罠
今日のところはこんなものかな。引き返して階段を上がり、1層をダッシュで抜けてギルド地下まで戻る……いや足めっちゃ速くなってるな! ちょっと楽しいわ。
そして冒険者ギルド1階、受付の列に並ぶことしばし、職員のおっさん(美人受付嬢マダー)の前に立つと、魔石の入ったボロ袋と兎の角6本をカウンターの上に置く。
「換金お願いします。」
職員のおっさんはこちらをジロッと見ると無言でドロップ品を回収、魔石を秤の皿の上にぶちまけて重さを量る。
「魔石がまとめて19セル、角が1本6セルで36セル、あわせて55セルになります。」
といって返却されたボロ袋と共に1円玉サイズの穴空き硬貨5枚と10円玉サイズの硬貨5枚が差し出される。
1円玉サイズの穴空き硬貨が小銅貨1セル、10円玉サイズの硬貨が銅貨で10セル、ちなみに1セルはたぶん日本円で10円ぐらいの価値……魔石やっすっっっ! 明日からは1層は無視だな。当然、この稼ぎでは宿なんかには泊まれない。そこでギルドの購買で必要なものを購入することにする。
ゴブリンナイフ:10セル ゴブリンのドロップするナイフ。錆びている上に刃こぼれしている。
塩の小瓶:15セル 塩を再利用したポーションの空瓶に詰めたもの
火口箱:25セル 火打ち石と火口の入った箱
乾いた木の枝:1束5セル 「深き緑の森」で新人冒険者が採取した木の枝。迷宮都市の一般的な燃料
はい消えたー! お金が右から左に流れて消えましたー! ……大丈夫、これは投資、枝以外は明日からも使えるから……(´;ω;`)
ギルド裏口の傍らにある井戸で水分補給(水筒も買わなきゃダメだな)したら、とんぼ返りして「小さき獣の草原」へ。いやだってダンジョンって温度も天候も一定だし、安全地帯なら魔物出てこないし、ホームレス向きの環境じゃない? 小さき獣の草原なら人も来ないだろうし。まあ念のため入ってすぐの安全地帯は避けたほうがいいかな。
再び1層をダッシュで抜け、2層の安全地帯にたどり着く。
「ここをキャンプ地とする!」
この世界の人々が気付いていない恩恵の隠し効果
筋力:荷重による行動制限を軽減。
体力:疲労や負傷による能力低下を軽減。
敏捷:走った時の疲労軽減。
器用:急所攻撃時ダメージ上昇。
知力:集中力が上昇。
精神:高ストレス下での脳内麻薬分泌量上昇
感覚:感覚器への過度な刺激(閃光、爆音、悪臭etc.)に耐性。
幸運:入手したことがないアイテム限定で入手率上昇。
地味な補正なので誰も気付いてないよ!