魔王の思惑~続・内緒のお話☆~
時を緩やかにする魔法をかけた空間で普通に動ける者は
このお城の姫様と神官、そして魔法をかけた張本人の魔王の三人と
加護に護られた妖精族の二人だけ。
『其方の姫君と妖精の娘にも、人の世界の危機をどう思うのか、答えを聞こうか?』
『ちょ……』
チロリと横目で妖精族の姫君を流し見ると、隣の妖精には口角を上げてみせる。
『……それは……我が一族は人の世に口を出せませんが……』
『姫!!!』
怯えた表情の妖精族の姫様が、震える声を絞り出すも……不意にその瞳を細めた。
『我等妖精は人の世に興味は無いが……三族の同盟が無くなるのは困る。……言うても人はか弱き生き物。魔王の意思を尊重せねば、妖精族も魔族の脅威に安心は出来まいよ……と、母が言うておりましたわ……』
『姫っ!!!』
「え?……それって……」
「魔王の言いなり、と言うことで?」
驚愕する姫様と新官の隣で、魔王がほくそ笑んだ。
『さて、姫様?も~さ、めんどくさいから選択肢を2つから選んでね?……なんて事は言わない。……そこの男!!さっさと戦いの準備しなよ!!!……但し、勇者には『拘束』以外の攻撃はさせないからねww』
「Σえ……ちょ……まだ話は……」
「は?…はぁぁぁ~ッッ?!」
ちょっとイラッとした魔王が、神官に向かってふわっとその指を振れば……
神官の周囲に緩く風が舞う。
「く……ぁ……っ!!……」
「Σ先生?!」
その風に圧されて闘技場へ歩く神官の背には
憐れみを浮かべた妖精族の姿と、姫の困惑。
『行ってきてね♪人の世は頭の回る人の子が統治しなきゃ上手くはいかんのだよ?』
ひらひらと手を振る魔王が、ちょっとだけ真剣な瞳を向けていた事は……
妖精族の姫君しか見ていなかった………。