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第二十一話 四対一

「隊長と模擬戦ですか?」


 新人が不思議そうに聞いてくる。

 何か不自然だっただろうか。


 まあ、確かに俺の急な参加はあれかもしれないが、別に問題はないと思うが。


「何かあるか?」


「いえ、しかし四人と同時というのはさすがに……」


 新人は苦言を呈するかのように(立場的には合っている)言ってきた。

 四人はさすがに? 何が言いたいんだ、このアホは。


 というか、四人全員やる前提なんだ。

 初めて知った。


「それがどうかしたのか?」


「どうかですか?」


「ああ」


 それにしても、コイツら俺の戦闘を見てないのか?

 この前の化け物戦で目の前で戦ってあげた気がするんだが。


「隊長さんが強いことは重々承知しているわ。でも、あたしたちだって騎士団員よ。四人も集まればそれなりの強さですのよ」


 そう、その通りだ。

 俺の見せ場にはそれなりの強さ(なんならもっと上)を望んでいるのだ。


 貴様らにはそれなりの強さの案山子となって俺の前で倒れてもらう。

 それはもうド派手に。


「分かっている。だが、お前たちの連携を鍛えるためには四人同時の方が良いだろう。個人個人との戦闘では時間がかかってしまう」


 それっぽい理屈を並べておく。

 こんなもの俺のやりたいことに無理矢理付けて言い訳にしかないのだが、納得できそうなものができたと、俺も少し驚きというか感銘というかそんな感じのものを覚えた。


 実際彼らの実力という物を身に染みて感じたことはなく、見るのと戦うのでは全く違うのだ。

 戦って初めて知ることもあるかもしれない。


「分かりました!隊長がそこまでいるのなら我らアーテーの実力をその体にたたき込んで差し上げましょう!!!」


 ボルダンは少し嬉しそうに了承する。

 面倒な前置きがなくて、ボルダンは大変助かる。


「じゃ、じゃあ、場所の方は少し開けてますし……その……ここで良いですか?」


「ああ、ここで結構だ。武器の方は各々が使ってる剣だと危ないよな」


 ここから木剣がある武器庫まで行くのは面倒だ。

 この場の空気的にも、今すぐ戦闘は始めた方が楽しいだろう。


 なら……。


「ゼン」


「無理よ」


「何でだよ!場の空気的に分かったよ、って言う場面だろ」


 ゼンは、いつもとは違い少し弱々しく下を向く。

 その様子から俺は少し不安にな───りはしないが、不審に思う。


「どうしたんだ?」


「……お腹が空いたから無理」


 不安にも不審にもならなくてよい。バカみたいな話だった。

 そういえば、朝食に行ってないな。


 ニーカさんに会いに行くために朝食を抜きにしていたことを思い出した。

 今の時間的に、そしてこの後模擬戦をしようとしていることを考えると一緒は間に合わないだろう。


「分かった。模擬戦に使える武器を出してくれたら、朝食に方に行っても───」


「ねえ」


 俺がゼンに対して話していると、リンカが突然遮ってくる。

 お前に用はない、黙ってろ。


「なんだ」


「もういないわよ」


「え?」


 そう言われて、俺はリンカに向けていた視線を前方(ゼンの居たところ)に向けると、そこには────四本の刃を潰した剣と曲がった鉄の棒があった。

 言い換えるならが、それしかなかった。ゼンの姿など跡形もなくなくなっていた。まるで、最初からそんなものがなかったかのように、きれいさっぱり。


「あ、アイツ……」


 自分に有益な話が出たからって、一瞬でいなくなりやがった。

 まあ、やってほしいことはやってくれたから良いが、ふざけてるな。次会ったらぶん殴ってやる。


「じゃあ、各々剣を一本取ってくれ」


「分かりました。けど、それだと隊長の分の剣がその曲がった鉄の棒しかありませんよ」


 新人は、剣を取りながら残った一本の鉄の棒を指す。

 他の者は、鉄の剣を握り感触を確かめていた。


「ああ、俺はそれで大丈夫だ。その方が使いやすいからな」


「そうですか? じゃあ、いいですけど」


 新人は訝しげに返事をして離れていく。

 俺も鉄の棒の握りやすいように加工が施されている部分を握って、持ち上げる。重すぎず、軽すぎず。長さも問題ない。しっかりと考えて創造してくれてたようだ。


 鉄の棒に向けていた視線を周囲に向けると、もうアーテーの彼らは剣を正面に置いて構えを取っていた。

 俺準備すらしてないのだが、気が早すぎないか。


 模擬戦に対して期待に胸を膨らませてくれているのは嬉しいが、焦りすぎだぞ。

 俺も一振りしてから鉄の棒(もう面倒なので鉄棒と呼称する)を構える。


「先手はお前たちから始めてくれ、誰かが動き始めたのと同時に開始だ」


 俺の一言で、周囲に空気が一変する。

 先ほどまでの彼らたちの期待に満ちた表情は一瞬にして変わり、己もしくは俺の動きは一瞬たりとも見逃さないという強い意志を感じる。


 そんな空気に当てられてか、周囲にいた騎士団員も俺たちの方へと視線を向け始まる。

見て欲しいとは思っていたが、派手になりすぎても困るぞ。


 そんな事を思っているとジャリっと、音が鳴る。

 シャーミーの足が少しずれた音だ。


 このほんの少しの音。

 人によっては聞こえてない人が居てもおかしくない。


 だが、それが。



 ─────戦闘の合図となる。


 ここまで見ていただきありがとうございました。

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 それではまた次のお話で会いましょう

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