第二十七話 その理由は
やっと時間が出来たという事で、俺はアーノさんから手渡された手紙を開ける。
書き置きと一緒に置かれたと言っていた(さらに俺宛のようだ)ので、今回の使命の理由が書いてあるはずだ。
そう願い、俺は手紙の中身を取り出す。
そして、底に書かれた文に目を走らせた。
ぱっと見ても、長文であーだこーだと言われているわけではないと判断できたので。
サクッと読ませてもらった。
別に内容は一から十まで書き出しても良いのだが、それをするほど内容は詰まっていなかった。
例えば箇条書きにするとしたら、点が一つ二つで終わりそうな内容だ。
文章と内容が反比例していた。
短い文に、あっさりとした内容。
その短い文に書かれていたのは、私が不在の間の団を君に授ける的な文章だった。
俺が選ばれた理由的なものは欠片も書いていないし、それを予想できそうなヒントさえもなかった。
今の情報が限りなく少ない状況で推理するとしたら、俺に前世の知識があることを知っていたという幻想極まりないものになる。
ニーカさんが俺にここまでのことをさせると言う事は、それができると思うほどの理由があるはずだ。
すると、廊下からいくつもの足音が聞こえてくる。
バタバタと急いでいるというよりも、ただ鍛錬が足りないとかそう言った感じの歩き方からの足音だ。
この静寂な空間とは相容れないもので、不快にすら感じる。
タイミングとして最悪だとも言えるし、打つ手無しの状況だったので最高とも言える。
「まったく、静かに歩けっての」
俺の口から愚痴がこぼれると同時に、扉が開かれる。
大きな音を立てながら、扉を開く。音を付けるのなら──バンッ!──とかがぴったりだろう。
「どうも代理の団長!アーテーの隊長『ボルダン・ハンナ』です!」
筋肉質で、マッチョという言葉が似合いそうな男が部屋に入ってくる。
なんだろう、部屋の温度が少し上がった気がする。
その後ろには、死にそうな顔の新人が立っている。
まあ、連れてきてくれたので合格としよう。特に試験的な意味合いは全くなかったが、取りあえずそういうことにしてしまおう。
「どうも、代理の団長になったアイン・イーノスだ」
「何ですの、この子供。迷惑な母親の善意はやめてほしいですわ。代理の団長はどこに行ったですの?」
少し不安はあった、最初の問題として誰が俺の事を団長だと信じるのだろう。
新人の言葉じゃ信憑性がない。副団長が先に戻ってきてくれると嬉しいなと淡い期待をしていたんだが、どうやら期待は裏切られたようだ。
というか、俺がここにいることを子供の願いを叶えたい親の行動だと決めつけないでほしい。
俺はガキじゃない。
「新人、説得できるか?」
「が、頑張ってみます!」
アーテーの部隊員の全員が部屋に入ってくる。
女性が二人いるようだ。男尊女卑がそこまで強く残ってないにしても、軍人として女性がいるとは珍しいな。
新人は、俺がなぜ代理の団長をやっているかの説明を頑張って色々と話してくれた。
が、しかしその話の信憑性もなければ、それを保証する書き置きも副団長が持って行ったので、さらにうさんくさくなる。
副団長、早く来てほしい。
「分かりました。いまいち信用はできませんが副団長や一番隊が簡単にここを通してくれるとは思えません。信用しようじゃないか!」
最後は隊長がそれっぽいことを言ってくれたので、なんとか信用とまではいかないが、信じてもらえることになった。
「隊長が言うのなら、信じてあげますわ。しかし、あくまで隊長の言葉のおかげであるということを覚えておくことね!」
「お姉ちゃん。代理だとしても団長さんだよ。その言葉遣いは……」
「団長って、どう見たって子供ではないの!これを真に受けてるシャーミーの方がおかしいと思いますわ!」
「まあ、見張りをしていた対象がなぜいつの間にか団のトップになっているのかは謎ですが、ここは「はい」と言っておきましょう!」
「あっ!ほんとですわ!何でアナタがここに!」
地の文が入る隙がないほどにしゃべるアーテーの隊員たち。
地の文はそれなりの大切なので勝手にしゃべらないでほしい。読者に状況の説明ができない。
ちなみに説明すると、隊長・さっきから文句を言ってる女の子・それをなだめる女の子の順で並んでしゃべっている。
新人は、文句を垂れる女の子の後ろで小さくなっている。なにもできなかったので、傷ついているのだろう。
「おーい、話を聞いてくれるか~」
「うるさい!だまりなさい!」
おい!
俺団長なんだが!団長に対する口の利き方よ。
怖いよ、この人たち。
もしかしてニーカさんにもこんな感じなのか!?だから、俺にもこんな対応を!?
「違いますよ。ほら、君たち団長に対してなんだその態度は」
「「副団長!!」」
副団長!
やっと来てくれた。どれだけ待ちわびたことか。
副団長の圧倒的なまでの信頼感よ。
もうこの人がいるだけで、何でもできそうな気がしてくる。
「この人は正真正銘団長ですよ。言葉遣いを改めなさい」
「「はい」」
「それで、アインくん。この方々は誰ですか?」
「え?」
副団長コイツらの事本当に知らないの?
じゃあ、真面目にコイツらニーカさん直轄というかニーカさんしか指揮を執れなかったって事になるのか。
それならば適当に言い訳をしておいた方がいいのか?
しかし、ニーカさんの部隊だ。勝手に変な設定を加えるのはあれだろうか。
「私が余っていた人たちを集めて急造の部隊を作ったんですよ。そちらの方の指揮は完了しましたか?」
俺は、それっぽい説明をして話の話題を変更する。
あまり深々と彼らについて聞かれても、どこまで話していいのか俺には判断できないからな。
「はい。問題ございません、全ての部隊が問題なく出発しました」
「そうですか」
会話が続かない。
いや、厳密に言えば話題はある。正しくはアーノさんをこの部屋から追い出す方法が分からない。
アーノさんに指示を出せばいいだろう。
しかし、この人以外にこの状況に説明をできて、ある程度の信頼がある人がいない。追い出すには惜しい人材なのだ。
うーむ。
悩ましいな。どちらを取るべきか。
さすがにこれは両方取るのは無理だよなあ。
どうにかできないものか……。
視線を泳がすが、特に助けになるような物は見当たらない。
これでは走馬灯が流れてもどうにもならないだろう。
……少しぐらいならニーカさんも許してくれるだろう。
その結果、俺はアーノさんを部屋に置いたまま話を続けることになった。
「まずは……全員簡単に自己紹介をしてもらえるか?」
「了解しました!では、隊長である私からさせてもらいましょう!!!」
耳を塞ぎたくなるような大きな声で、隊長は自己紹介を初めてくれた。
話の整合性を保つために努力した結果、もっと大変なことになった気がします。
なぜアインが選ばれたのか、その理由が分かる日はいつになることやら……。
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それではまた次のお話で会いましょう。




