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依存
「名前はどうしましょうか?」
女が発したその言葉は、これまでの二人の関係から飛躍したものだ。女の問いは純白の病室をこだまして男の鼓膜に気持ち悪い違和感を感じさせた。
女は思うに、何か縋るものを要求したのだろう。決して、男の存在を欲したのではない。これまでの人生で、何かに熱中した事のなかった女にとって気持ちが落ち込んだ時に誤魔化す方法を知らない。知らないからこその依存性だ。男に対して気持ち悪く、不気味な笑顔を向ける。
「脆い、」
(狂ってる)
呟くように出てきた言葉は男の心情とはあまりに違う言葉であった。しかし、心根からの言葉を呟いたつもりの男は自分の言動に混乱していた。
依存先を決めた女は決して男を逃そうとはしない。退院の翌日には同じ戸籍に入っていた。