私はボロアパートを追放されたブラウン管テレビ 〜廃棄を待つだけだった私はカリスマイケメン社長に拾われて溺愛されて一躍有名になりました 今更捨ててごめんなんて知りません〜
なろうラジオ大賞2第二十弾。テーマ『ブラウン管』をこなすべく、あえて流行りに手を伸ばすッ!
追放された良い子が報われる系の話は良いですよね。落として上げるは文学の鉄板。
素人物真似芸ですが、お楽しみ頂けましたら幸いです。
「お前、廃棄な」
突然の死刑宣告に、私は耳を疑った。
「な、何で、私、まだ映るよ?」
「4Kのご時世にブラウン管テレビとかあり得ねぇんだよ!」
「そ、そんな、じゃあせめてリサイクルセンターに」
「うるせぇ!」
彼は無慈悲に私を追い出した。粗大ゴミのシールも貼ってもらえなかった私は、業者に回収される事もなく、野ざらしにされた。
(雨が来そう。そしたら私、楽に……)
降り始めた救いの雨。……あれ、濡れない? 傘の影?
「ったく、濡れたら壊れるだろうが」
声に驚く間も無く、私は抱き上げられた。何!? 誰!?
「出せ」
凄い高級車の座席に私を置くと、男の人は運転手の人にそう言った。どこに連れて行かれるの? 表情を伺おうとチラリと見ると、切長の目が私を見つめていた。
「あ、あの、私」
「あんな所に放り出されていたんだ。行く所は無いんだろ」
「えっと、はい」
「なら俺の所に来い」
「は、はい」
私には拒否権もする気も無い。でも私なんかを何故……?
「お、重い、ですよね」
「別に」
置かれた部屋は私には不似合いな高級マンションだった。
「さて、早速開けるぞ」
「えっ」
急にそんな……。やっぱり部品目当てなのかな……。
「……よし、悪い所は無さそうだ。繋ぐぞ」
「ひゃっ」
急にアンテナと電源を繋がれて、声が出ちゃった。恥ずかしい……。
「あぁ、懐かしい。この色合いだ」
うっとりと私を見つめるその目は、まるで少年みたい。そんな瞳で見つめられたら回路が焼きついちゃいそう……。
「あの、何で私を拾ってくれたんですか?」
彼が満足したのを見て、私はずっと抱えていた疑問を伝えてみた。
「……俺は今でこそ新型テレビ開発で財を成したが、その原点はブラウン管テレビだったんだ。だが画質を追い求めた結果、柔らかな絵を映すブラウン管テレビはいなくなっていた」
「……」
「でもお前は無事でいてくれた。だから俺はお前を守りたい。大事にしたい。命終わるその日まで……」
「……」
「……嫌、か……?」
そんな訳ない。嬉し過ぎて声が出ないだけ。
「……喜んで」
私はそう言うのが精一杯だった。
今をときめく家電企業の社長だった彼の影響力は凄まじかった。ブラウン管テレビの温かみを求める声が、多くの企業に再生産を決意させる位に。
そうそう、前の持ち主が「捨ててごめん! お前は俺のだろ!」とか騒いでいたけど、知りません。
「今日は昭和の映画を頼む」
「はいっ」
私を愛し、私が愛しているのは、彼だけなのだから……。
読了ありがとうございました。
ねんがんの『ブラウン管』をクリアできたぞ!
まさかブラウン管テレビを可愛く思う日が来るとは……。
色々投稿している中で、第十弾で投稿した『うちの僧侶が聖女過ぎて困る』がかなりPVを稼いでいたので、分かりやすいタイトルが良いのではないかと考えました。そこで「乗るしかねぇこのビッグウェーブに……」をすれば、とりあえず読んでもらえるんじゃないかなと浅はかな望みを託しています。看板は大事。
『羊頭狗肉』って正論でぶん殴るのは勘弁してつかぁさい。
ではラストお題の『農民』をお楽しみに!