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せっかく美少女に転生したのに不幸なまま終わってたまるか!  作者: 田舎師
3章 エルトリア巡見士
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ハバキア帝国潜入調査(1)

数日見ないうちに評価が増えていて驚きました。ありがとうございます;;


ようやく完走までの道筋が見えてきましたので、更新を再開します。

ご一緒に楽しんでいただければ幸いです。

エルトリア王国歴229年。

新しい年の幕開けを、私は異国の地で迎えることになった。


エルトリア王国とハバキア帝国、長らく親密であった両国の間でにわかに緊張が高まったのは、100日ほど前に遡る。


東方に侵攻していたハバキア帝国の皇太子ゲルハルトが都市国家群の制圧を完了し、帝都に凱旋したのが昨年秋。

直後に皇帝の廃位とゲルハルトの登極が報じられ、エルトリアには駐在官の退去と国境の封鎖が伝えられた。


エルトリア国王ベルナート陛下は事態を憂慮し、数名の巡見士(ルティア)を帝国に潜入させることを決定した。

巡見士(ルティア)は国王に直属するとは言え、直々に指令を受けることもまた少ない。それほど重要な任務ということだ。


「調査項目は以上だ。頼むぞ」

「復唱します。ハバキア帝国に潜入し、前皇帝と一族の安否、新皇帝ゲルハルトの人柄、開戦の意思の有無、帝国民の意識および経済状況を調査致します」

「フェリオ、ミハエル、ユイ、無理はするなよ。まずは無事に帰ってくれ」

「はい。必ずや情報を持ち帰ります」


巡見士(ルティア)は基本的に単独行動だが、不正の調査など特に危険が想定される場合は3人1組で行動する。

今回の任務は先輩のフェリオさん、同期のミハエルさんと行動を共にする、つまり「特に危険が想定される場合」であることを意味している。




ハバキア帝国西端、国境の町ヴァーミリオン。

親友カチュアと飲み明かした思い出のある町だが、当時とは違い、この地を踏むためにかなりの労力を要した。

エルトリアとハバキア、両国の国境が封鎖されているためだ。


エルトリア側の国境付近から草深い山中に分け入り、2日を要していくつかの山を越え、帝国側の街道に出たのが昨日。

慎重に行動したつもりだったが、それでも二度は帝国兵に見つかりそうになった。

静穏(サイレンス)】、【不可視(インビジビリティ)】といった魔術が使えなければ、今頃は帝国の警戒網に捕らえられていたか、「国境を越えられませんでした」と陛下が失望するような報告をしていたかもしれない。




裏通りにある安宿の一室にてフェリオさん、ミハエルさんと今日得られた情報を交換する。

草色のローブに短めのマント、細剣に古木の杖という私らしくない出で立ちは、「帝都で魔術を学ぶ妹を兄二人で送る旅」を装っているためだ。


長兄役のフェリオさんは中背の引き締まった身体を旅服に包んで長剣を帯び、次兄役のミハエルさんは長身痩躯に着崩した格好で短剣のみ。当然ながら皆、巡見士(ルティア)の身分を示す銀製のプレートは身に着けていない。




「・・・とまあ、そんなところかな」

「さすがミハエル殿だね。情報収集力は随一という噂通りだ」

「どこでそんな話を仕入れるんですか?」

「とても女の子には教えられない場所だなあ」


国境を越えてまだ最初の町だというのに、ミハエルさんはベルナート陛下が求める情報をほぼ掴んでしまっていた。




新皇帝ゲルハルトは今年31歳。かねてより豪勇無双と名高く、苛烈で容赦がないと言われることも多いが、かと言って卑怯卑劣な人物ではないとの評もある。


皇位の継承については多くの諸侯が態度を保留、または反対していたが、反対派の首魁であったエッカルト侯爵をゲルハルト自らが軍を率いて瞬く間に討伐、一族ともども誅殺。以降は表立って異議を唱える者はなくなり、既に国軍のほぼ全てを掌握しているという。




「さて、これだけ調べればいいだろ。そんじゃエルトリアに帰りますか」

「まだやる事ありますよね?前皇帝の安否とか、経済状況なども調べないと」

「相変わらずマジメ子ちゃんだねえ。いくら働いても給料同じだぜ?」

「だからと言って手を抜いていい理由にはなりません」


ミハエルさんは4年前、巡見士(ルティア)に登用された時点で29歳だったはずだ。どうも掴みどころのない人で、適当なことを言っているかと思えば実は核心を突いていたり、訓練をさぼっている割に腕は確かだったりする。

以前どのような仕事に就いていたのか、どうして巡見士(ルティア)を志望したのか何度か聞いてみたのだが、そのたびに違う答えが返ってきた。もうそういう人だと思うことにしている。


「そうだね。帝都でなければ掴めない情報もある。以前とどう変わったか比較したいところだ」

「はい。まずは予定通り帝都に向かいましょう」


フェリオさんは5年ほど前に帝都ミューズに滞在していたことがあるらしい。

当時は両国の関係は良好であり、エルトリア王国巡見士(ルティア)として堂々と国境を越えての旅だったそうだ。




フェリオさんには軍学校入学前から様々にお世話になったが、巡見士(ルティア)として行動を共にするのはこれが初めてだ。

互いに国内各地を巡ってばかりでほとんど顔を合わせることもなく、年に数回の手紙も次第に仕事絡みの事務的なものになっていた。


一時は素敵な年上の男性と憧れていた時期もあるが、今回長旅を共にするからと言って浮ついた気持ちはない。

なにしろ王国の存続に関わる重要な任務だ。そんな事を考えている余裕はない。




そういえばこの道中で年齢を聞いてみると、もうすぐ30代後半だよ、と苦笑いしていた。

ふうん、私とは意外と離れているんだ。いや、別に恋人の有無を聞く気もないし、気になるわけでもない。

別に聞いてみても良いのだけれど、それほど気になるわけでもないから聞かない。聞く必要もないと思う、別に。


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