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せっかく美少女に転生したのに不幸なまま終わってたまるか!  作者: 田舎師
3章 エルトリア巡見士
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メブスタ男爵家調査依頼(7)

魂喰い(ソウルドレイン)がぼろ布のような身体を震わせ、同時に4個の【暗黒球(ダークスフィア)】を放つ。

ラミカが頭上で左手を舞わせ、出現させた6本の【光の矢(ライトアロー)】を撃ち出す。

屋敷を揺るがす轟音が響き、交差した光と闇が互いに消滅する。


勢いに勝る光の矢が魂喰い(ソウルドレイン)の【魔術障壁(マジックバリア)】を叩く。障壁がひび割れ、砕け散り、最後の1本が本体に直撃した。

宙で奇怪に跳ねる黒いぼろ布に、追撃の【光の矢(ライトアロー)】。異界の魔物はその姿を明滅させ、明らかに存在力を低下させている。




部屋を見渡すと、ユッカ君とアロイスさんが男爵と夫人を、兵士がアイネさんを、それぞれ背に庇っている。

どうやら勝てそうか、という判断は甘かったようだ。

男爵が剣を抜こうとするのを、ユッカ君とアロイスさんが懸命に押しとどめている。


「貴様ら何者か!ユッカペッカ、そこをどけ!」

「落ち着いてください、父上!」


男爵の怒りももっともではある。愛する妻を永らえさせようと邪法にまで手を染めたのに、その力が失われたのだから。

そこに魂喰い(ソウルドレイン)がゆらりと迫った。


アロイスさんが騎士らしく立ちはだかり、剣を舞わせた。

技量は悪くない、瘴気をまとう異界の手を四度、五度と受け止め、さらには背後から迫った私と同時に斬りつけた。

だが手に残ったのは、ぼろ布を切り裂いた感触だけ。黒い布切れは体勢を崩したアロイスさんを覆った。


「おお・・・お・・・」


アロイスさんが片膝をつく。その名の通り魂を喰われつつあるのか。


「天に(あまね)く光の精霊、我が意に従い彼の者を撃ち抜け!」


私とラミカの【光の矢(ライトアロー)】に弾かれた魂喰い(ソウルドレイン)は、身体を明滅させながら宙を彷徨(さまよ)い床に落ちた。先ほど倒した魔人族(ウェネフィクス)の上に被さるように。


まさか。私はカラヤ村での3回目のゴブリン討伐を思い出した。


「我が内なる生命の精霊、宿りて輝け!【魔力付与(マジックエンハンス)】!」


慌てて魂喰い(ソウルドレイン)に駆け寄り、魔力を帯びて白く光る細月刀を突き入れた。

先程と違い手応えはある。だが与えた傷より、魔人族(ウェネフィクス)から吸収する生命力の方がはるかに多い。


「だめだ!ラミカ、お願い!」


続けざまに放たれた【光の矢(ライトアロー)】は魂喰い(ソウルドレイン)を直撃したが、その存在を消滅させるには至らない。

不意に私の眼前に【暗黒球(ダークスフィア)】が出現した。咄嗟に発現させた【魔術障壁(マジックバリア)】が粉砕され、部屋の中央まで弾き飛ばされる。受け身もとれず、無様に背中から床に落ちてしまった。


そうだった。以前カラヤ村の洞窟にて、魔人族(ウェネフィクス)の亡骸を喰らうゴブリン魔術師に遭遇したことがある。

初級魔術しか修得していないゴブリン1匹に苦戦したのは、その圧倒的な魔力のためだ。魔人族(ウェネフィクス)の身体を取り入れれば、魔力が増幅されるのだろうか。


「ユイちゃん、大丈夫?」

「なんとかね。ラミカはどう、余裕ある?」

「どうかなー。太っちゃったからなー」

「そういう問題?」


こんな時に軽口を叩ける相棒というのは助かる。

度重なる誤算から不利を招いてしまったが、おかげで少し冷静さを取り戻した。




魔人族(ウェネフィクス)を吸収し尽くした黒いぼろ布は、最初に見たときよりも深く濃く、強く存在を主張している。


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