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せっかく美少女に転生したのに不幸なまま終わってたまるか!  作者: 田舎師
3章 エルトリア巡見士
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亜人種自治区における産業の調査及び振興(5)

「内なる精霊、生命の根源たる者よ。我が魔素を贄とし仮初めの血肉となれ。【身体強化(フィジカルエンハンス)全能力(フルブラスト)】!」


この瞬間から100秒間だけ、私の身体能力は人間の限界近くにまで跳ね上がる。

ただし技術はそうはいかない。私に確かな技があれば・・・例えばあの「達人(エスペルト)」カチュアなら、この鷲獅子(グリフォン)に勝てるのだろうか?


振り下ろされた鉤爪を躱しざま、愛用の細月刀を一閃。鮮血とともに爪の1本が宙を舞った。

体格差は絶望的だが、攻撃は単純だ。鉤爪の攻撃の直後を狙えば・・・


再び振り下ろされた鉤爪を両断しようと踏み込んだ瞬間、巨大な嘴が眼前に迫った。身体を捻って直撃は避けたものの、革鎧の肩当てをもぎ取られた。鎧がなければ左腕を砕かれていただろう。

反射的に鷲の首あたりを斬りつけたが、羽毛に阻まれてろくに刃が通らない。


「これは・・・参ったな。どうしようか」


鉤爪を斬り落とされた攻撃をもう一度見せたのは、嘴で仕留めるための陽動か。

巨体に厚い羽毛、鋭い鉤爪に嘴だけでなく高い知性まで備わっているとなれば、一人の人間が勝てるような相手ではない。




奇声を上げて振りかぶった鷲の頭に、何かが当たった。

鷲の前半身に石礫いしつぶてが跳ね、獅子の後半身に矢が突き立つ。


「せんせい!ぶじですか!」

「テロル君?下がって!」


テロル君が村の人達を連れて来てくれたのか。でもこれでは何人いたところで、犠牲者が増えるだけだ。

鷲獅子(グリフォン)が村人に向き直り、翼を広げた。ここで飛び立たれては勝ち目がない、懐に飛び込んで・・・


鷲の目玉がぎょろりと私を見下ろした。しまった、これも陽動か。

飛び込んだところを鉤爪に捕らえられ、仰向けに抑え込まれてしまった。巨体にのしかかられて息もできないところに巨大な嘴が落ちてくる。


「・・・天に(あまね)く光の精霊、我が意に従い彼の者を撃ち抜け。【光の矢(ライトアロー)】」


鷲の頭が光の矢に弾かれ、のけ反った。

これはプラたんの魔術か。押さえつける鉤爪の根元に剣を突き立て、緩んだ隙に逃れ立ち上がる。


「プラたん、助かった・・・よ?」


礼を言うべき相手は、短杖(スタッフ)さえも手放して草の上に倒れていた。限界まで魔素を使い果たしたのだろう。

身体強化(フィジカルエンハンス)】の効果時間が過ぎた私も似たような有様だ。全身から汗が噴き出し、力が抜けていく。


降り注ぐ石礫や矢には一切構わず、魔獣は私だけを見据えて両の鉤爪と嘴を振りかぶった。

疲労で足が動かない。あんなものを細剣で受け止められるとも思えない。相討ち覚悟で飛び込むかと覚悟を決める。


一斉に振り下ろされた鉤爪と嘴は、だが私には届かなかった。


「なにあれ・・・」


鷲獅子(グリフォン)の全身に木の根、蔓、枝が絡みつき、地に縛りつけている。

根の束縛(ルートバインド)】の魔術の亜種だ、それはわかる。でも術者は誰だろう、私やプラたん以上の魔術師がこの辺りにいたのか?


などと余計なことを考えて好機を逃すほど鈍くはない。それらを考えたのは全て終わってからだ。

体毛が薄い獅子の腹に深々と剣を埋め込み、そのまま一文字に切り裂く。中から赤黒い何かが大量に溢れ出し、鷲の頭部は奇怪な断末魔を上げた。植物の束縛を解かれた巨体は横倒しになり、二、三度羽ばたくと動きを止めた。


「エルフ・・・?」


もはや立ち上がる力もなく座り込む私に歩み寄るのは、男女一組のエルフだった。彼らが先程の術者だろうか。

男性の方は集落の前で私達を拒んだ人だ。女性の方は見覚えがないけれど・・・

豊かに波打つ亜麻色の髪、そこから飛び出した長い耳。プラたんにそっくりだ。


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