第三次カラヤ村防衛戦(2)
「天に瞬く光の精霊、来たりて闇を照らせ。【照明】」
私が自分とロット君の剣の鞘に、ルカちゃんが自分の杖に光を宿らせる。
単に「西の洞窟」と呼ばれる鍾乳洞が青白く照らし出された。
既に洞窟の入口には4匹のゴブリンの死体が転がっている。軍学校での修練を終えた私とロット君は、以前とは別人だ。下級妖魔が数匹では姿勢を崩すにも至らない。
「もういないな。今年はこんなものか?」
「一応気を付けてね。また魔人族がいるかもしれないし」
「魔人族・・・?」
「そう。一昨年、この奥にいたんだ」
あらゆる能力において人間よりも数段優れるという魔人族を倒せたのは、油断につけこんだ奇策がはまったからだ。まともに戦って勝てる相手ではなかった。
入ってすぐの広い空間に生活の痕がある。半ば腐りかけた果物、焚火の痕、穀物が入った袋や箱は村から盗んだものだろうか。
粗末ながらここで生活を営んでいたと考えると罪悪感も覚えるが、村が襲われたときの死闘を思えば同情もできない。
一つだけ伸びた通路の奥。上下から突き出た乳白色の柱、はるか下の地底湖に架けられた人工の橋。そこから・・・
「・・・ねえ、何か聞こえない?」
「いや・・・?」
「聞こえる・・・ような、気がします・・・」
私達が動きを止めると、確かに物音が聞こえてくる。
水滴が落ちる音、微かに水が流れる音に混じって、ぴちゃぴちゃと湿った音、ごりごりと何かを削るような音・・・
「下から、かな・・・」
「はい・・・」
「じゃあ・・・天に瞬く光の精霊、来たりて闇を照らせ。【照明】」
私は拾い上げた小石に【照明】の光を宿らせ、放り投げた。
地底湖の畔に落下したそれが青白い光で照らし出したものは・・・
何者かの亡骸を喰らう異形の姿だった。
黄とも赤ともつかぬ双眸がこちらを見上げ、歯を剥き出す。
「うわああああ!!!」
「ひいいいい!!!」
「・・・・・っ!!!」
三者三様の悲鳴を上げて、私達は通路を転げ出た。
否、転げ出ようとした私達を何かが阻んだ。通路を塞ぐ淡い半透明の壁。
「これは【物理障壁】!?あいつが出したの!?」
「どいてろ!このおっ!」
ロット君の斬撃をまともに受けても、障壁は僅かにひびが入っただけだ。
【障壁】の強度は術者の魔力に比例する。私ではこんな強度は出せない、ラミカやアシュリー並みの相手とは思いたくないが・・・
その障壁を作り出したであろう術者は、黒衣を纏った姿を虚空に浮かび上がらせた。
私達を嘲るように口元を歪めた、その乱杭歯から肉片が覗いている。




