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巡見士フェリオ(5)

もう何度目だろうか。身体に当てても仕方ないとまで思った打ち込みを躱され、木剣で軽く打ち据えられた。


「っ・・・そんな・・・!」

「そんなはずはない、かい?」


切れ長の目が私を見下ろす。こんなものか、君には失望した、とその目が言っている。

私が憧れたフェリオさん、命の恩人の巡見士(ルティア)さんは、こんなに怖い人だったろうか。


自警団長のカイルさんも腕を組んだまま見ている。

実の娘でないとはいえ、こんな目に遭っているのに助けてはくれないのだろうか。


「もう終わりにするかい?」

「・・・いえ」




どうやら私は思い上がっていたようだ。


軍学校であの「達人(エスペルト)」カチュアと互角の勝負をして準優勝。もはや魔術抜きでもカイルさんより強い、このあたりの町や村でまともに戦える人は少ないだろう・・・


それは事実だ。だが私が志したものはその程度だったか?

フェリオさんと同じ巡見士(ルティア)になって世界中を巡る、そのためには公職試験に合格するだけでなく、あらゆる危難を排す力と知識が必要だ。私が目指すものは、町一番の剣士などでは断じてない。

カイルさん・・・お父さんも私の慢心に気づいていたのだろう、だから黙って見ている。


このままでは終われない。フェリオさんを失望させたくない。

それに・・・私が簡単にあしらわれては、決勝戦の相手だったカチュアまで軽く見られてしまう。それだけは絶対に、たとえフェリオさんでも許せない。




木剣を杖にして立ち上がり、ふうっと息を吐き出した。

左手を天にかざし、小指に嵌められた指輪に精神を集中させる。


「内なる精霊、生命の根源たる者よ。我が魔素を贄とし仮初めの血肉となれ!【身体強化(フィジカルエンハンス)全能力(フルブラスト)】!」


小石だらけの地面を蹴る。10歩の距離が瞬く間に詰まる。木剣が唸りを上げて激突する。静かな村に響く轟音に、広場じゅうの人が振り返った。

委細構わず打ち下ろす。反撃の一閃は後ろに跳んで空を切らせる。


「万物の基たる大地の精霊、集いて我が礎となれ!【土壁(アースウォール)】!」


フェリオさんと私が立つ直径十数歩ほどの地面が隆起し、平屋の屋根ほどの高さまで持ち上がった。その音と光景に村人が何事かと家を飛び出す。



「お、おい。ユイ君」

「【崩壊(カラプス)】!」



隆起した地面を急速に崩壊させる。さすがにフェリオさんも体勢を崩した、そこに飛び込んで横薙ぎ。ほとんど足場が崩れ去ったというのに剣を立てて防がれる。



「ちょ、ちょっと待ってくれないかな」

「【色彩球(カラーボール)】!」



空中に出現させた球体を蹴って反転、フェリオさんの着地を狙って斬り下ろす。これさえも弾かれた。ならば。



「村の人達が・・・」

「草木の友たる大地の精霊、その長き手を以て彼の者を戒めよ!【根の束縛(ルートバインド)】!」



崩落した土の塊から植物の根がわさわさと踊り、フェリオさんを捕らえようと迫る。

剣で打ち払ったが私を見失ったようだ。今なら!



「【水飛沫(スプラッシュ)】!」

「うわっ!」


フェリオさんの真下、割れた地面から勢いよく水が噴き出す。それと同時に頭上から打ち下ろしたが、これも防がれた。ならば次は・・・!




「いい加減にしなさい!!!」


お父さんの声に我に返ると、村の広場が大変なことになっていた。

盛り上がり崩れ落ちた地面、四方八方に飛び出した植物の根、下半身ずぶ濡れのフェリオさん、空中には色とりどりの謎の球体。村じゅうの人々が口を開けてそれらを眺めている。




「ごめんなさい・・・」

「申し訳ない・・・」


被害者のフェリオさんにまで頭を下げさせてしまった。

心から反省している。


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― 新着の感想 ―
[一言] これは煽ったフェリオが圧倒的に悪い 煽り方も最低だし大人気が無さ過ぎ 静観してたカイルも良かれと思ってやってたのかもしれないけど、計画段階でこうなることが予想出来なかった以上責任は重い ユイ…
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