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16歳の学園生活(7)

「おはよう。やっぱり今日もやるんだ?」

「うん。いつも通りにしないと落ち着かないから」


卒業記念試合4日目、最終日。カチュアと私はいつも通りの早朝訓練をこなした。


「どう、疲れは残ってない?」

「大丈夫だよ。今日で終わりだし」

「終わっちゃうね」

「そうだね・・・」


カチュアはもともと多弁な方ではないが、今日は特に口数が少ない。濃密な学園生活を振り返っているのか、それとも・・・


私達は今日の準決勝に勝てば、決勝の舞台で剣を交えることになる。

この2年間、自主練で打ち合ったことは何度もある。しかし学園生活の集大成、今日に懸ける思いは特別なものだ。

出場を決めてからの150日間、私はカチュアに手の内を隠してきたし、もしかすると彼女も同じかもしれない。互いに親友と認識する私達が少しぎくしゃくしているのは、今日来たるべき戦いのためだ。


「じゃあ、決勝戦で」

「うん。カチュアと戦えるように頑張るよ」


言葉少なに普段通りの訓練を終えて、私達は女子寮に戻った。




総勢192名の出場者も、最終日の今日まで勝ち残ったのは僅か4名。

ほとんどの生徒が出番を終えているためか、屋内競技場の観覧席は早い時間から満席になってしまった。立ち話をする生徒、飲み物を売る屋台、ざわめく観覧席、半ばお祭りのような様相も呈している。


「2年生カチュア・ユーロさん、2年生ロット・レックハルト君、第1試合場に入ってください」


この2年間、ロット君の成長は著しいものがあった。入学前はひょろりと背が高いだけの少年だったのだが、今日この場に立つ彼は肩幅広く胸板厚く、一人前の剣士たる自信と風格に満ちている。


「ロットく・・・」


声を掛けようとした私の前に、何者かが割り込んだ。


「ロット君!頑張って。上から見てるからね!」

「おう、見とけよ。面白いもの見せてやるぜ」

「楽しみ~。応援してるよ!」


カイナ。昨年アシュリー達と一緒に、私に嫌がらせをしていた子だ。

栗色の髪、ぷくりと膨らんだ唇、ぎりぎりまで短くしたスカート。計算された可愛らしさに溢れているが、祈るように両手を組み合わせて飛び跳ねる仕草は少しあざといのではないか。


私に嫌がらせをしていた3人のうち、アシュリーは学長先生に大喝されたし、エリンは別件ではあるが私に頭を下げてくれた。しかしこのカイナだけは反省も謝罪もせず、いつの間にか剣術科のロット君とも仲良くなっている。周りを散々に掻き乱した挙句自分だけは傷つかない、そんな恐ろしさを感じる・・・とは考えすぎだろうか。


カイナはロット君の手に軽く触れ、まだ何やら話し込んでいる。

ロット君もどうなのだろう、試合前だというのにいつまでやっているのか。


「カチュア・・・」


ならば先にカチュアに声を掛けようと思ったのだが、彼女は喧騒に背を向けて競技場に向かってしまった。

双方に取り残された私を見て、カイナが薄く笑ったように見えたのは気のせいだろうか・・・。




会場が沸いた。少し乱れ始めた私の心などとは関係なく、試合が始まった。

血縁の無い兄と親友、決勝の舞台で私を待つのはどちらだろうか。


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