ただいま
「ただいまーーー!!!」
「おー。待ってたよー」
「・・・ユイちゃん、おかえり」
私は自室に入るなり、牛と猫の着ぐるみに抱きついた。
50日間の春休みを終えて戻ってきた軍学校の女子寮は、今の私にとってどこよりも落ち着く場所だ。あと1年しかいられないのが残念ですらある。
「ラミカ~~~元気そうだね!」
「なんだよう、揉むなよう」
「プラたんも着ぐるみにしたの?いいねそれ」
「・・・ラミカにもらった」
「ユイちゃんのもあるよー」
牛の着ぐるみを着たラミカが布袋から取り出したそれは、灰色っぽい狼の着ぐるみだった。大きく開いた口から顔を出す形になっているので、狼というよりも「狼に食べられた人間」のようだ。
「どうかな・・・?」
「・・・っぷ。ユイちゃん、かわいい」
「プラたん、いま笑ったよね?」
ハーフエルフのプラたん、プラタレーナは耳をぴこぴこと動かした。無口であまり表情も動かない子だが、慣れると耳の動きで感情がわかるようになる。
私達はそれぞれのお土産を披露し合った。ラミカは猫と狼と熊の着ぐるみ、プラたんは果物を乾燥させて作ったお菓子を大量に、私は帝国産の果実酒を数種類。さて再会を祝して乾杯・・・という時に扉がノックされた。
「失礼します。ユイちゃん、いるかな」
カチュアが遠慮がちに部屋を覗き込み、その場で固まった。
「な、何してるの・・・?」
「まあまあまあまあ。どうぞどうぞ」
剣の達人でもある侯爵令嬢は牛と猫と狼に寄ってたかって服を脱がされ、訳も分からず熊の着ぐるみを着て乾杯することになった。
ざわっ。驚いたような声がいくつも上がった。
春休みが明けた私達魔術科の2年生12名は、軍学校の訓練施設にて昨年と同じように魔力測定を行った。
皆が驚いたのはその結果だ。【精霊感知】【精霊操作】【体内魔素量】【総合魔力】いずれも最下位だった私が軒並み高得点を上げ、総合3位の成績を収めることになったから。
「おー。やるじゃーん」
「・・・ユイちゃん、すごい」
「うん。でもこれのおかげかな」
左手の小指に光る指輪。真銀で造られたそれは、魔術の媒体として至高の品だ。術者である私自身にとって思い入れが大きいという事情も、さらに性能を引き上げる要因になっている。
ただ私自身も休み中の努力は怠らなかったし、魔人族などという格上との戦いで掴んだものもある。決して優れた媒体のみで成しえた結果ではない。
・・・などという事情を知らない者からすれば、劣等生がたまたま良い媒体を手に入れて成り上がったとしか思えないかもしれない。何の努力もせずに私達の地位を脅かした、気に入らない、と。




