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軍学校初日(2)

魔術とは、世界中に存在する精霊(アダ)を抽出して体内の魔素(マナ)と混合することで変質させ、様々な現象として発現させる技術をいう。

そのためには目に見えない「精霊を感知」して「目的の精霊だけを操作・抽出」する必要があり、それと混合する「自身の魔素」の量が多いほど威力・範囲に優れた魔術を数多く使うことができるのだ。




私達魔術科の生徒12名は、軍学校の訓練施設に移動して簡単な魔力測定を行っている。


「みなさんにはまず、こちらで【精霊感知】のテストを行ってもらいます」


30代後半だろうか、性格も言葉もちょっときつそうな女の先生が書類を片手に宣言した。その横にはガラス製だろうか、人間がすっぽり入れるほどの透明な直方体の箱が置かれている。


「この中に精霊を模した物体が入っています。それを見えた通りに描いてください」


生徒全員にその直方体が描かれた紙が配られ、テーブルにクレヨンが置かれた。

私には箱の中に、親指の爪ほどの大きさに白く光る生命の精霊が20個ほど、赤く光る火の精霊が6個、青く光る水の精霊が7個・・・と見える。厳密に言えば「見えて」はいないのだが、魔術の修練を積んだおかげで「感じる」ことができるのだ。

その通りに描き終えて隣を見ると、ラミカちゃんは箱全体に白、赤、青、茶、緑、黄、黒が混じり合う混沌とした模様を描いていた。塗りの乱雑さと前衛的な描画のセンスも相まって、毒々しいことこの上ない。


「ラミカちゃんにはこう見えるの・・・?」

「うん。気持ち悪いよねー」


【精霊感知】の能力は、「基礎魔術指南書」では星を見ることに例えられていた。

感知力に劣る者は強い精霊しか感じ取ることができない。視力が弱く夜空に一等星しか見えない者と同じだ。

感知力に優れる者は微弱な精霊をも感じ取ることができる。視力が強く夜空に六等星まで見えるので、満天の星を見ることができるのだ。


他の生徒達も私よりはたくさん色を塗っているが、ラミカちゃんのように箱全体を塗りつぶした者はいない。つまり彼女には六等星どころかもっと弱く小さい光まで見えてしまうので、夜空全体が輝いて見えるということだ。


「はい終了です。みなさん提出してください」


先生は淡々と用紙を回収していたが、ラミカちゃんの絵は二度見、いや三度見した。眉をしかめて首をひねり、気を取り直したように別の器具を取り出す。




「次にこれで【精霊操作】のテストを行います」


巨大な砂時計のような器具が台車で運ばれてきた。その下側にだけ先程と同じ精霊に模した物体が満たされている。


「名前を呼ばれた人は前に来てください。私が指定した精霊だけを上側に移してもらいます」


おとなしそうな女の子が名を呼ばれ、前に進み出る。火の精霊、と言われて手をかざすと、下に溜まっている物の中から徐々に赤い光だけが上に移動していく。水の精霊、土の精霊、と何度か続けてようやく終わる。


「ラミカ・ベラヌールさん」

「はーい」

「火の精霊だけを上に移してください」

「はーい」


ラミカちゃんが無造作に手を伸ばすと、盛大に噴き上がった赤い光が上の空間に溜まった。ざわっ、と周囲で密かに声が上がる。


「で、では戻してください。次に水の精霊」

「はーい」


今度は青い光が噴き上がり、砂時計の上部が青色に輝いた。ざわざわ、と先程より多くの声が上がる。


「・・・次、ユイ・レックハルトさん」

「はい」


ラミカちゃんの後とはついてない。まだ周りがざわめく中で火の精霊を操作したが、時間をかけても僅かずつしか動かすことができず、砂時計の上部は赤色に淡く光るだけだった。回りでほっと安心したような声が上がる。集中できなかったわけではない、悔しいけどこれが今の私の実力だ。




次いで【体内魔素量】【総合魔力】の測定を行ったが、結果は同じようなものだった。ラミカちゃんは全ての項目で先生が二度見するような結果を残し、私は先生どころか生徒全員に同情されるような出来に終わった。


「みんな凄いなあ・・・ここにはやっぱり優秀な子ばっかり来るのかなあ」

「まだ初日だよー。2年もあるんだから大丈夫だよ」

「そうだね!よし、明日からがんばろう!」

「おー、立ち直り早いね。いいぞー」


ラミカちゃんと一緒に女子寮で夕食を済ませる。私は制服のままだが、彼女は帰るなり牛の着ぐるみに着替えてしまっていた。この子は人間より牛でいる時間の方が長いのではないだろうか。


「じゃあお仕事に行ってくるね。帰りは遅くなるかも」

「うん。がんばってねー」


ごちそうさまでした、と食器を下げ、部屋で着替えると再び学校に戻った。

学校内での仕事、それも魔術師にしかできない仕事が掲示板に貼り出されていたので応募したところ、今日からすぐ来て欲しいと言われたのだ。


願ってもない。なにしろ私は22万ペルもの借金を背負っているのだ、落ち込んでいる暇も立ち止まっている暇もない。

薄暗い廊下を抜け、私は地下にある動力室に向かった。


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