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007 噂の可愛いアイドルは…?

アイドルが来るお話です。

前の時よりは微修正しております。

今日はシュクレール亭にとっては1週間の中ではひときわ暇な木曜日。

この曜日に限っては、1日通して何故か来客数が少ないのである。

そのため、アルバイトの子達は必ず木曜日に休みをもらっている形になっているのだ。


その上、母親であるチャティーが来ているので、木曜日は基本シュクレールファミリー&ステアで店を回せる形になっているのだ。

余程の事がない限り、アルバイトの子が入ることはないのだ。


そんなシュクレール亭のホールにて…。


「どうしたんだ、ニーサン? お財布の中身とにらめっこなんかしてさ」


ステアが、正光が財布の中身とにらめっこしている様子が気になったのか、正光に直接尋ねてみた。


「ああ、ステアか。折角だから、今日の夜はみんなですき焼きにしようかと思ってさ。予算を考えてたんだよ」


正光は、せっかくチャティーが来ているのだから、せめて食事だけでも団欒をと思ったのだろう。

そのための費用を頭の中で計算しながら、財布の中身を確認していた。


「みんなですき焼きかー、いいなそれ。私は楽しみだぜ」


「うん、そだねー。今日はお客様が少ないから早めに閉店してもいいくらいだし、この機会に家族団らんで食事してもいいかもねっ♪」


そんな中…、一人のお客さんが現れた。


「「いらっしゃいませー♪」」


アリアとステアが同時に元気よく挨拶をして出迎える。

お客さんは、女の子のような声色のサングラスをかけた見た目が可愛い子だった。


「こ、こんにちはー」


緊張しているのか、何かに怯えているのか反応はぎこちない。


「なんだ? どうしたんだ? 元気がないようだが…相談にならのってやるよ」


ぎこちない仕草に正光は、相談役を買って出たが…


(ん? この子…もしかして…)


相手の容姿に何か気付いたみたいだ。


「い、いいんですか? それじゃ、相談に乗って欲しいんですけど…。 あ、ここってカツカレー作れますか?」


「あ、カツカレーだね? 作れますよー。 すぐに作るから待っててねー」


ついでに注文したお客様にアリアは素直に答えて、厨房に入っていった。


「えっと…、ボクは水鏡要(みかがみかなめ)といいます。 こう見えても…アイドルをやってまして…」


「あ、アイドルだって!?」


(やはりか…。どこかで見た事のあると思ったけど…)


お客様こと要の紹介にステアが驚き、正光はやはりといった雰囲気で冷静に応対していた。


「水鏡要といえば、最近ブレイクしている歌って踊れる可愛いアイドルとして有名だろう。そんな君が、ここに来るという事は…一体どうしたんだ?」


正光がアイドルである要にここに来た理由を尋ねた。

横のステアは相変わらず硬直したままだ。

アリアは、気にせずカツカレーを作っている。


「実は…プロデューサーからここの店長さんが【丹後地方の魔神】としてここの町では有名らしいって聞いたので…ぜひ、守ってもらいたくて…」


それを聞いた正光とステアは、同時にズッコケた。


「なんちゅう肩書きを貰ってるんだ、ニーサン…」


「俺に聞くな…。俺だって好きでこの二つ名を持ってるわけじゃないんだ…。それにしても…あいつ、アイドルになんちゅう事を吹き込んだ…」


どうやら、要のプロデューサーは正光の知り合いのようだ。

正光も意外と顔が広いようだ。

とても昔、虐待されて捨てられた少年だったとは思えない。


「そりゃ、お兄ちゃんは逸脱しすぎたお客様に色んな制裁をしてるからねー。花壇に埋めたり、鉄棒に十字架みたいに張り付けたりとかねー。 はい、カツカレーお待たせしましたー」


「あ、カツカレーありがとうございます」


平然と正光の制裁ぶりを明かしながら、アリアは要にカツカレーを差し出す。


「それで…なんで俺にそんな事を?」


余りにも突然のボディガード要望に疑問を持った正光は、改めて要に理由を聞いた。

要はカツカレーを食べながらその理由を話す。


「実は…、最近有名になってしまったせいで…色んな人に付きまとわれてしまって…。 それらが余りにもしつこくて…多くは男の人なんですけど…」


「まぁ、アイドルのおっかけは老若男女問わないからな…。でも、男のおっかけが多くて困るのはなんでだ? 君のような容姿なら当たり前だと思うんだけど…」


そこで、要はある意味で重要なことを告白した。


「見た目も衣装も女の子なんですけど…、実はボク…【男】なんです」


「ぶふーっ!!?」


「うわあっ、ニーサン汚いぞ! 飲んでたお茶吹くんじゃない!!」


要の告白に、アリアは無言で硬直し、正光は飲んでたお茶を噴出してしまった。

そして、噴き出したお茶がステアの顔面に直撃という二次災害に見舞われていた。

どう考えても男には見えない可愛い容姿。

いわゆる「男の娘」というものである。


「そ、そりゃあ…確かに困るよなぁ。あんたが男だと知ったら…ファンはショックになるんじゃないのか?」


「いえ…、実は何らかの情報で知ってるファンがいまして…付きまとわれてるのはその人たちなんです…」


「それって、つまり…君が男だと知っててもなお、追いかけてくるって事か?」


「はい…」


要の答えた内容に、3人は驚きを隠せない。

要が男であると知った上で、おっかけをやっているあたり、「男の娘」スキーなのか、真性なのか…。

どちらにしても、性質が悪いのは明らかである。


「事情は分かった…。しかし、君がアイドルをやってることは両親は知ってるのか?」


「それが…、ボクをそうしたのは…両親でして…」


「うわぁ…、両親が元凶ときたか…」


「それじゃ、要が報われないよなぁ…。 アイドルだと魔法も使用禁止だろうし…」


正光とステアはため息をつく。

何せ、元凶が要の両親だったのだから。


「よし、分かった。何かあったら遠慮なくここに来てくれ。 とりあえず、町内会の人とも相談して、マナーの悪いファンを何とかしてやるよ」


「すみません、お願いします!」


要の事情を完全に知った正光は、要の要望を受け入れた。

とりあえず、彼をここを拠点に活動させるというアリアからの提案も受け入れてくれた。


「あ、そうだ、要くん」


「はい、なんでしょうか?」


カツカレーを食べた要が、正光に声をかけられて振り向く。


「支障がなければ、今夜すき焼きパーティやるつもりなんだけど、君もどうだ?」


「え? いいんですか?」


「そうだねー、もう閉店の時間だけど、せっかくなんだし一緒に食べようよ♪」


「そうだな、私も異論はないぜ」


「は、はい。それではすき焼きも…ごちそうになりますっ」


もう時間は既に閉店の時間になっていた。

正光とステアが急いで閉店の後片付けを行い、アリアはすき焼きパーティーの準備に取り掛かった。

ついでに正光は、知り合いの要のプロデューサーに今回の顛末をこっそり電話し、そのプロデューサーも了承し、正光に託したそうだ。


さて、この後は楽しいすき焼きパーティーが始まる…。

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