005 母親、襲来
アリアの母親が来る話です。
この話も前とほぼ変わってないかも…。
いくら夕方が忙しくても、日によっては1日中暇な時がある。
お盆やゴールデンウィーク、そして今日のような雨の日はすこぶる暇になる。
それでも、来てくれる客はしっかり来店してきてくれるのだ。
「どうした、綾子?」
「雨、なかなか止みませんねー」
雨の中、シフトに入っていたA子改め加賀 綾子は掃き掃除しながら項垂れていた。
「大雨じゃない分だけマシだろうけど…あんたは帰りも辛いよな。服が濡れる可能性もあるから」
そんな綾子にステアはそう心配する。
上の階で住み込みで働いているステアは問題は無いとしても、綾子は家まで徒歩10分ながら、その間は傘を差して帰宅しなければいけないからだ。
「そうなんですけどねー。まぁ、今日から3日間は両親が旅行でいないんですけどね」
「へぇ、旅行か、いいよなぁ…どこに行ってるんだ?」
「えーっと、ドイツ…ですかねー。ブンデスリーガの試合を生でみたいとかで…」
「へぇ…、サッカー好きなんだな、あんたの両親」
「そうなんですよー。 サッカー談議になった時はすごく苦痛でしたから…」
「あはは…」
ステアと綾子が旅行の話題でやりとりをしかけていた時…
(カラーン、コローン)
「いらっしゃいませー♪」
どうやらお客が来たようだ。
「あら~、元気があっていいわねぇ~」
黒髪のツインテールの少女(?)が現れた。
どうやら来店したのは彼女のようだ。
だが、二人はその外見に一瞬だが硬直した。
そして、先に我に帰ったステアは彼女に声を掛けたが…
「えっと、どこの小学校に通ってるのかな?」
ステアの開口一番の台詞がまさに失礼極まりない台詞だった。
だが、無理もない。
ステアの感じていたようにその人の外見がどう見ても小学生にしか見えないからだ。
当然、綾子も同じ反応をしていた。
そこに…
「あ、アリ姉さん」
「あれ? お客さんが来たのー?」
アリアが現れた。
暇な日は、調理中心の彼女も接客に参加をするからだ。
だが、ツインテールの少女(?)を見てアリアは一瞬硬直した。
「アリアさん、どうしたんですか!?」
「お…お…」
「お?」
硬直するアリアにステアと綾子は首を傾げる。
アリアはツインテールの少女(?)を知っているみたいだけど…。
「お母さん!!?」
その後のアリアの口から出た言葉…。
その言葉に…。
「「な、なんだってーーーーっ!!?」」
ステアと綾子は某○MRみたいな感じで本気で驚いた。
気持ちは分かる。
どう考えても母親の外見には見えない。
でも、それが事実であるということをアリア自身が証明してしまったのだ。
「やっほ~、アリアも元気そうね~。あれから正光くんとは上手くいってるのかしら~?」
「うん、ちゃんと順調にいってるよ。でもなんでいきなりここに来たの!? 来るなら来るって連絡くらい入れてよ! おにーちゃんは今、材料を仕入れに市場に行ってていないんだから」
「ふふ~、 VTuber部門以外の他の業種も順調だからね~。 娘と義理だけど息子の様子を見に行きたくてね~」
「えーっと、アリアさーん?」
親子のやりとりに唖然としてた綾子が恐る恐るアリアに声を掛けた。
そこで、ハッと綾子に気付く。
「あ、ごめんね? 見た目は小学生みたいだけど、立派なお母さんでシュクレール・コンツェルンの副社長なの」
「アリアと正光くんの母親、チャティー・シュクレールよ~。よろしくね~」
「ステア・ロウです、よ、よろしくお願いします。それと先ほどは失礼しました」
「えーっと、加賀 綾子といいます。 ここで週4日程アルバイトしています。 こちらこそ、よろしくおねがいしますー」
アリアの母親、チャティーとステアと綾子がそれぞれ自己紹介をした。
でも、ステアと綾子はどうもぎこちない。
やはり、副社長であるチャティーに失礼なことをしてしまったのが尾をひいているのだろうか。
「よろしくね~。あと、先ほどのはしょうがないわよ~? 初見殺しな容姿は自分でも理解しているしね~。 あと、私が副社長だからってそんなに畏まらなくてもいいわよ~。 いつも通りにお話してくればいいからね?」
「あはは、ま、まぁ、改めてよろしく、チャティーさん」
チャティーのフォローにステアと綾子は一安心したようだ。
「ところで、お母さんは今回はいつまでいるのかな?」
アリアが、チャティーに滞在期間を尋ねた。
彼女は副社長なのだ。
それほど長くは居られないかもしれないという思いがあった。
まぁ、仕事の関係上、あまり家族団らんはなかったせいか、余計にそう感じるのだろう。
しかし…
「VTuber部門を除けば、他の業種は順調だしね~。 私は暫くはここを拠点に他のグループ店舗とかを回ろうかとも思ってるわ~。もちろん、ここも手伝うわよ~。」
「あ、そうなんだ…あはは…、じゃあ部屋を用意しないといけないね」
今回はどうやら暫くはここに居座るようだ。
少しアリアにとっては一安心なのだろうか。
「そうそう、正光くんとの愛の巣の邪魔はしないからね~」
「ちょっと、お母さんっ!!///」
だが、直後のチャティーのストレートな台詞に顔を真っ赤にして俯かざるおえなかったアリア。
そして、改めて感じた。
お母さんは…こういうキャラだったという事を…。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方、正光は、とある市場にて仕入れを行っていた。
「すみませんね、朝木さん。いつもこっちの仕入れを手伝ってもらって」
「なに、気にする事はないさ。 トラックを運転できる僕がやらなければ、君一人じゃ到底むりがあるのだろう? 何せ、食堂を営んでるみたいだから、多くの食材が必要なはずだろうからね」
正光は、市場において牛肉や鮮魚関係の食材を仕入れていた。
一人ではトラックに積むのに時間が掛かるのと、正光はトラックを運転できないということで、隣町のトラック運転手である朝木夢人に正光の友人のつてで手伝ってもらっている。
念のためにいうけど、正光は普通の乗用車なら運転できる。
ただ、トラックなどの免許は持っていないだけなのだ。
「とはいえ、野菜がだんだん値が張ってしまってますからね…」
「そうみたいだね、特にレタスやキャベツは…かなり高いみたいだね」
トラックに今回の食材を詰め込みながらお話している最中だった。
TRRRR…
「あれ、携帯が…。アリアから?」
アリアからの着信…気になったので出てみた。
「もしもし、アリア? 今、市場にいるぞ? え、帰って来い? え!? 母さんが来たのか! 分かった、すぐ帰るからな!」
簡潔に伝えて、電話を切った。
「君の母親が君の店に来たのかい?」
「義理ですけどね…。今回は連絡もなしに突然だそうです…」
「なるほど…、丁度食材の積み込みは終わったし…少し飛ばして帰ろうか」
「スピード違反で捕まらないようにしてくださいよ…?」
「何、大丈夫さ。 問題ないよ」
そして、暫く考え込んむ…。
義理の母親であるチャティーの事で考え始めた。
(母さんは…ある意味合法ロリみたいな容姿だからなぁ…。アルバイトの二人が見たら…絶対小学生に間違えるに決まってる、はぁぁ…)
そんなため息交じりの正光は、朝木と共にトラックに乗り、早急にシュクレール亭に帰っていった。
幸い、スピード違反で捕まらなかったのは奇跡と言ってもいいだろうがそれは別の話としよう。
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