003 シュクレール亭、夕方の光景
この話はあまり変わってないかもです。
ここは中規模の飲食店「シュクレール亭」。
午前中はこの町に住む常連さんたちがよく訪れていたのだが、夕方になってしまえば、急激に忙しくなってしまうのだ。
「おはようございまーす」
「おはようございますですー」
夕方に備えての他のアルバイトの子達が次々と店にやってくる。
「おはよう、今日も忙しくなりそうだから気合入れて行こう」
アルバイトの子達にそう声をかける正光。
「はーい!」
元気よく返事をするアルバイトの子。
「ははは、気合は十分みたいだな、ニーサン」
厨房でスタンバイしているステア。
彼女は夕方になれば厨房で料理する役目になる。
そしてもうひとり…
「ただいまー」
「お、お帰りアリア」
「えへへー、お兄ちゃんただいまー」
笑顔で正光に浮かべる女の子こそ、正光の婚約者で「シュクレールコンツェルン」の令嬢でもあるアリア・シュクレールである。
彼女は現在16歳。
北欧人なのだが、日本で育ったので日本語は上手い。
「少し休んだら、私も厨房に入るねー」
「ああ、すまないな。頼むよ」
そう、彼女も厨房で料理を作る役目なのだ。
夕方はアリアとステア、そして後から来たアルバイト4人が厨房での調理担当。
店長である正光と、あと最初に来た二人の女の子アルバイトを含む5人のアルバイトが接客・会計を担当するのだ。
まぁ、正光自身も料理はできる。
シュクレールコンツェルンの従業員たちからも「食の変態」とまであだ名されるくらいだ。
という事で、そろそろ夕方の時間になってきた。
人が多い分、色んなことが起こるものである。
さぁ、宴の始まりだ。
次から次へと高校生の4人グループやら会社の連れのグループやら大学生の何かのサークルのメンバーも続々と入店する。
もちろんその中には、朝にステアのスカートの中を覗いていた信彦の姿もあった。
「いらっしゃいませー」
アルバイトの子達が一斉に注文を聞きに行く。
その中の一人、A子ちゃん(仮)が…。
「いらっしゃいませー、ご注文は…ってきゃあっ!?」
注文を取る事にしか集中していなかったのか、足を滑らせて思いっきり尻餅をついた。
「おおーっ!?」
尻餅をついたA子ちゃんは気づいてないが、一部の男たちの視点が彼女に集中していた。
下着が見えていたのだ。
(ほほう、今日は白…と)
と、心の中でしっかり下着の色をチェックしていた男たちに対して…。
「店長さん、こっちです!」
隣の女性が正光に通報していた。
すかさず、正光は…こう言った。
「何うちのアルバイトの子のあられのない姿を見てるんだよ、この変態どもめ」
「ちがうよ、ボクは変態じゃないよ。仮に変態だとしても、変態という名の紳士だよ!」
男はどこかで聞いたような台詞で切り返す。
「どっちにしても変態だろうが!」
さらに突っ込む正光。
だめだこいつ…早く何とかしないと…。
その時、男の友人が割り込み、がしっと男の首筋の襟を掴んだ!
「店長さんすみません、とりあえずこの変態はつるし上げておきます」
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
友人に引きずられて店を出て行った男。
彼がどうなったかは…聞かないほうがいいかも。
「あ、あのーご注文はー?」
いつの間にか立ち上がり、一連のやりとりを見ていたA子ちゃん。
下着を見られたことには気にしてはいないようだった。
それだけ、彼女のドジな件は日常茶飯事だからなのだろう。
「どうしましょう、店長…」
「まぁ、今はそこの人の注文を取ってあげなさい」
「はーい」
切り替えの早いA子ちゃん。
その直後…
「きゃあぁぁっ!! 何するんですか、お客様ー!?」
別の方向からアルバイトの子…ここはB子と名づけようか。
彼女の悲鳴が聞こえた。
何事かと振り返って見ると…?
「ふひひ、いい尻してんじゃーん。 触り心地抜群だぜ!」
「ねぇ、彼女~お茶しない?」
こっちもこっちで、セクハラとナンパのコンビネーションを受けていたB子。
それを見た正光は、食堂でこれをされるのは勘弁被りたかったのか、ぶち切れモードに入ってしまった。
「おい、何うちのバイトの子にセクハラ&ナンパしてんだよ…!」
「あ、アイエエエ!!?」
どこかで聞いたような奇声に近い悲鳴を上げながら、二人は正光のモップ攻撃を受けた。
「ぶっ飛びやがれーーーーっ!!」
「「アバーーーっ!!」」
カキーンといい音を立ててジャストミートした二人は、これまた奇声を上げながら遥か遠くへ飛ばされた…。
無事に帰ってこれるのだろうか…。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます、店長」
「ショックもあるだろうし、休憩に入りなさい」
「は、はーい」
手に腰を当ててため息ついた正光は、被害を受けたB子ちゃんをフォローしつつ、休憩を指示した。
とまぁ、夕方にはこんなことが良く起こるのだ。
これはまだ序の口だが…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方、厨房に近いカウンターの所で…
「相変わらず、騒がしいなぁ」
「ははは、まぁ、恒例行事だからな、ここの」
相変わらずの安定した騒がしさにため息をつく信彦に対して、ステアはこう返した。
「まぁ、それだけここの住民達は、ある意味でフリーダムなんじゃないかな?」
奥でせっせと調理していたアリアも信彦にたいしてそう答えた。
「ほい、焼きそばお待ちー」
ステアは信彦に注文した焼きそばを渡した。
彼はやはりステアと焼きそばが好きなのだ。
夕方もここに通っているのはステアが目的だから。
「うんうん、やはりこれがなければエネルギーは補給できないさ、いただきまーす」
美味しそうに焼きそばを食べる信彦を見て、ステアは…
「ホントに焼きそばが好きみたいだなぁ。いい食べっぷりだし」
一方のアリアは…
「あはは、お兄ちゃんも大変だねー」
苦笑いを浮かべながら、酷い行動をする客の対処をしている正光を心配していた。
そんなこんなで、今日のシュクレール亭は夜の21時で閉店する。
後は正光とアリアのスーパーイチャイチャタイムが待ち構えている。
閉店後の掃除を行い、アルバイトを見送った後、二人は2階に先に入っていた。
「こっちも恒例だなぁ」
ステアは自重しない二人を見て、ため息をついていた…。
実は彼女は、ここの2階で住み込みで働いている。
幸い、防音設備があるので寝れないわけではないのだが。
「今日は眠れそうだけど…ふあぁ~」
あくびをしながら、元いた部屋に戻っていった…。
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