017 アリアと温泉デート(前編)
アリアの学校が期末テスト終了し、その後も無事終業式を迎えて冬休みを迎えた。
例のイベントまで残り二週間に差し掛かったところで、予定通り福井へ一泊二日の温泉デート。
それが今日なのだ。
朝8時、シュクレール亭裏口玄関にて正光はアリアを待っていた。
まずは、敦賀までは車で行く事になっている
「お待たせ、お兄ちゃん」
いつも以上におめかしをしたアリア。
ブラウスとフリルスカートの組み合わせが彼女の可愛さを引き出している。
そんな可愛いアリアの姿に正光は、一瞬ではあるが言葉を失っていた。
「どうしたの?」
「あ、いや、アリアが可愛いから…つい…」
「なぁんだ。 びっくりしたよ、お兄ちゃん。 でも、可愛いって言ってくれたのは嬉しいな」
そう言いながら正光に抱き着くアリア。
彼がシュクレールに引き取られて、アリアと出会ってからずっとこんなスキンシップを行っている。
それだけ仲がいい証拠なのだ。
「さて、出発しようか」
「おー!」
二人は腕を組んでシュクレール亭の裏口から出発した。
ホントに仲がいいよね、この二人。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「座席、フカフカだねー」
「そうだなぁ。 ほぼ車か普通電車だからな。 座席の質も違うだろうな」
敦賀まで車で行った後、予約した特急に乗り目的地は福井の温泉街がある駅。
車内販売はないが、着いた先の駅で買うので問題はない。
「駅に着いたら何を食べたい?」
「うーんとね、そばが食べたいかなぁ」
特急電車がまもなく目的の駅に着くので駅に着いたら食べたいものをアリアに聞いた。
彼女はそばが食べたいらしい。
シュクレール亭では、ざるそばの類は扱っていないのもあってかせっかくだからという事だろう。
「駅に着いたら蕎麦屋を探すか」
「うん」
二人はまず、駅に着いたら蕎麦屋を探すことに合意した。
予約した温泉宿は、時間的に多少の余裕はある。
昼食を取ってからでも遅くはないだろうとの見込みだ。
『まもなく、芦原温泉~芦原温泉です』
「お、もうすぐか。 降りる準備をするぞ、アリア」
「おっけー、お兄ちゃん」
アナウンスが聞こえ、二人は降りる準備をする。
着替えや飲み物が入ったバッグを持ってドア付近に行く。
そして、駅に着き、ドアが開いた瞬間二人は下車した。
帰省ラッシュに被らなくてよかったと思わざるおえない程のガラガラだったが救いだが。
「さて、蕎麦屋さんを探すか」
「そうだね、美味しい蕎麦屋さんはどこかなー?」
駅のトイレで用を足し、改札口を出てまずは駅前周辺に蕎麦屋がないかを探し回った。
駅前から100メートルほど歩いた場所に蕎麦が食べられる店があった。
「あそこでそばを食べようか」
「うん。 意外と駅から近かったね、お兄ちゃん」
「そうだな。 近くて良かったよ」
アリアが嬉しそうに正光と一緒にそのお店に入る。
そこで、おろし蕎麦を注文して美味しく食べたようだ。
アリア本人は久しぶりのおろし蕎麦なので、ゆっくり味わうように食していた。
正光はそんなアリアの様子を見て、微笑ましそうに自分の分の蕎麦を食べていた。
「ごちそうさま」
「あー、美味しかった。 ごちそうさまでした」
「ありがとうございます。 またお越しください」
有意義な昼食を終えた二人は、会計を済ませて店を出る。
時間的に丁度いい時間帯だ。
「よし、そろそろ予約した温泉宿へ向かおうか」
「うん、そっちも楽しみだよ。 お部屋は二人部屋なんだよね?」
「それで予約は取ってるぞ」
「えへへ、夜はお兄ちゃんと一緒に寝ちゃうよー」
「ははは、嬉しいけど、お手柔らかにな?」
アリアと正光がそんな会話をしながら、目的の温泉宿へと目指していく。
しばらく歩いていると目的の温泉宿が見えて来た。
和風の大きな建物の宿屋で、露天風呂があり、貸し切り風呂も可能な宿屋である。
「ここが私達が泊まる予定の宿屋さんだね?」
「ああ。 流石にここでホテルはありえないだろうし、折角だから露天風呂にも入りたいからね」
「でも、男女別なんだよね? まぁ、仕方がないけど」
アリアは正光と一緒に入りたかったが、世間一般的にそれは不味いだろうと割り切った。
実際にシュクレール亭の時は高確率でアリアと正光が一緒に風呂に入っている。
二人が婚約者だからこそ、成し得る行為なのだろうが、旅行先でそれはまずいだろう。
「それじゃ、チェックインしようか」
「うん。 夕食にカニ料理もあるんだよね? 楽しみだなぁ」
アリアはカニ料理を楽しみにしながら、正光の後についていく。
そして、正光が代表でチェックインをして予約した二人部屋に入っていった。
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