表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

京の寺院巡り

宝珠での結界が崩壊したため代替えとして、

寺院での結界を構築しようとする


「見て九十九殿! 茶店があるよ。入っていこうよ」


 その九十九と烏天狗の勘九郎が見合って、

「お婆様になんと言われたのか、もう忘れたのか?」


「だって、息が詰まるんですもの。少しは羽を伸ばしたって良いでしょ?」


「駄目!!!!」

 と言う九十九に呼応し、

『駄目でござるよ!』

 と、勘九郎にまで言われた始末。


「もう、それだったら」

 と注意を引いてから、

「お仕事が終わったら、ね? 良いでしょ?」

 そう言いながら髪に挿した花を気にしている。


 それで仕方なくなのか九十九が、

「取れそう?」

 と、後ろに回りその花の具合を見てみると、

「結わえた紐が解けそうなんだ」

 そう言って結び直し、

「しかし、これから大仕事なのに、こんなんで大丈夫?」


「だってお寺周りってだけでしょ?」


 少し驚いた九十九が、

「えぇ? 宝珠の代わりの結界を張りに行くんだろ。張るのは陰陽師の真紅殿のお仕事」


「そうだけど、そんな大したことをするわけじゃないのよ。お寺さんに眠っている力を借りるだけだし、ね! 簡単でしょ」


専門外な九十九にはとんと分からない。だから、

「それは真紅殿に任せるよ」


「その言い方、なんだか余所余所しいな!? 私たちって婚約者なのよ!」

 と、ついつい婚約者と言うところを強調してみる。


「それはそうだけど」

 と、九十九もこの仕合わせをこそばゆいような照れくさいような気持ちで、

「しかしな、昔っから真紅殿なんだし、真紅殿だって、俺のことを九十九殿だろ」

 と、こちらは髪の毛のある頭を掻きだした。


 それを見ていた勘九郎が、

『あ~~ぁ、見てられないぜ!!!』

 と、呆れかえっていた。


 そうこうしている間に目的の沙羅寺が見えてきた。


「ほら、早く参りましょ」


 真紅はそう言って九十九を急き立てる。


 その九十九、急き立てられるのが嫌いで、

「早くって言わない!」


 多分だが、あのきつい母親に小さいときから言われ続けてきたのだろう。それでコンプレックスになったのかも知れない。


 真紅はそれならばと、九十九の手を取り足早になった。


「おいおい、それって立場が逆だろ?」


「良いの。九十九殿はこういったときには悠長なんだから」


「そうか?」


「そうよ。遊びとなるとあっという間にいなくなるのにね」


「それはそれ、だからな」


 そんな話をしているといつの間にか四脚門を通り過ぎていたようで、小僧さんが手招きしていた。


 二人は連れだって何事かと近寄れば、その小僧さんが指差しながら、

「その物の怪を入れてはなりませぬ。ここは不浄の地ではございませぬゆえ」


 それに驚いたような九十九だが、

「これは気が付きませぬことをして、申し訳ない」

 そんな大人びた対応をし、勘九郎に、

『外で待っていよ』


 そう言われた烏天狗は、自身を烏に変化させて飛び立っていった。


 勘九郎を見送った九十九は、

「便利なものよのう」


 その場違いな感想がおかしかったのか、真紅がクスクスと笑い出した。


「なにがおかしい!?」

 と、九十九は恥ずかしそうに先へと進み出した。


 真紅も早足で駆け寄り、九十九に体が接触するほど近づき、

「だって、物の怪の方が人間になりたがって羨んでいるというのに!」

 と、今にも手を握りそうだ。


 その時、先ほどの小僧さんか、どこからかかなり大きな咳払いが聞こえた。


「オオォォ~~~ホンンン!!!」


 それで二人は少し離れて歩き出した。


 程なくして住職の許可をもらい、像という像に、墓石という墓石に印を付けていった。


「これで全部かな? かなりの数があったね」

 と、九十九はこれで終わったものと思っていた。


 されど真紅の方は、ここからだと言わんばかりに、

「それぞれの力を少し分けてもらい結晶をつくるのね!」


 寺院の敷地内でほんの僅かばかりだが、浄められ蓄えられていた仏のちからが集まりだした。


 真紅はその一つ一つを優しく手に取ると、握り飯を作るような感じで像形を整え、まるで大きなからくり時計を組み上げる感じで作用する結晶へと造り替えていった。


 最後の一つを組み込むと結晶は生き物の如くに自己啓発しだした。


「われは何をすればよいのじゃ?」


 光り輝く結晶に中腰になりながら頭を垂れ、恭しくかく言う。

「この浄化された地をお守りください」


「それは大丈夫だ。我らの力をみせてくれようぞ!」


「お願いいたします。後、五カ所備えるつもりであります。作りましたら他と協力し結界を張って頂きたいのです」


「ふむ、その時はその時で判断いたそう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ