チュートリアル
扉を開けると、そこは雪国、ではなく見渡す限りの草原だった。よく見ると、草原の中にと数本の標的が並んでいる。
俺が門をくぐるとシスティアも後に続いた。
『ここが【チュートリアルの間】になります。ここでは、先ほどキャラメイクで決めてもらった技能を実際に試しながら基本的な使い方を覚えていただきます。あくまでも基本的な使い方なのでその後はご自身で試行錯誤してください。』
基本的?応用的な技能の使い方もあるのか?今後が楽しみだな。
『あ、それと、このゲームでは攻撃力や、俊敏性、HPなどの数値は隠しステータスになります。それではチュートリアルを始めていきますね。』
「お願いします。」
『え~と、ノウェム様がお選びになった技能は【言語学】、【鑑定】、【暗視】、【鍛冶術】、【飛翔】、【火魔術】、【闇魔術】、【魔力操作】、【風属性耐性】、【水属性脆弱】の10個ですね。では、まず【風属性耐性】と【水属性脆弱】の説明です。この二つはパッシブスキルになるので常に発動しています。』
えっと、パッシブスキルというのが常時その効果が発揮されるスキルで、逆にコマンド選択などによって発動するスキルをアクティブスキルというんだったな。
『【風属性耐性】は名前の通り、風属性に対する耐性を得るスキルです。効果は風属性の攻撃によるダメージを抑えます。
【水属性脆弱】は耐性の反対で水属性の攻撃によるダメージを高めるスキルになります。ですが、【水属性脆弱】などの脆弱系のスキルは、その属性のダメージを受け続けることで打ち消すことが可能です。』
そういえば、スキル選択の時にも、脆弱系のスキルは打ち消せるという話をしていた。重要なことなのだろうか。チュートリアルが終わったら水属性ダメージを継続的に受ける方法を考えるのもいいかもしれない。
『残りの8個は全てアクティブスキルになります。では、【言語学】の説明からしていきますね。【言語学】は会話や、本を読んだりするときに使います。【言語学】のレベルを最大まで上げると何かいいことが起こるかもしれませんね。』
『次は、【鑑定】の説明になります。【鑑定】は周りのものや、指定したものの情報を見ることができます。鑑定で見ることができる情報はスキルレベルに依存します。では、試しに周りのものを鑑定してみましょう。』
『鑑定したいものに意識を集中してみてください。』
鑑定したいものといっても周りには草しかないが…。
まあ草でいいか。そう思うと俺は目の前の草に意識を集中した。
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品名:草
品質:C
レア度:普通級
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「鑑定は出来ましたが、品質のCとレア度の普通級というのは何ですか?」
『その話をまだしていませんでしたね。品質、レア度には階級があります。品質の階級は低いほうから順に、F<E<D<C<B<A<Sとなりますので、草の品質Cはちょうど真ん中ですね。レア度の階級は低いほうから順に、普通級<希少級<秘宝級<英雄級<遺産級<伝説級<神器級になります。分かりましたか?』
「はい、わかりました。」
『では次は暗視の説明します。【暗視】はスキルを発動すると、暗闇の中でも周りが見えるようになります。これもレベル依存で見える範囲が変わりますね。【チュートリアルの間】を夜の設定にして試すこともできますが、発動するだけなので試す必要もないと思います。どうします?試されますか?』
「いえ、大丈夫です。」
『分かりました。では【鍛冶術】の説明に移りますね。【鍛冶術】は名前の通り鍛冶に必要なスキルになります。鍛冶はスキル【鍛冶術】がないとすることができません。【鍛冶術】については「鍛冶の入門書」をお渡しするのでそれを読んでください。』
『次は一番難しい【飛翔】ですね。これは数をこなして慣れるしかありません。では試してみましょう。【飛翔】を発動して腕に意識を集中してください。』
これは!腕が広くななった感じだ!
「翼が自分の一部になったような感覚ですね。」
『そうですか?ふつうは違和感を感じる者なんですが…。まあ出来たらいいです。次はその翼を上下に動かしてください。』
「お、浮いた!飛べましたよ!」
『早いですね。では、前に飛ぶことはできますか?』
う~ん、前か。どうしたらいいのだろう。後ろに風を押すようにして…おっ進んだ!
『進みましたね!回旋は回りたい方向に重心を傾ければ曲がることができます。では後は自由に飛んで慣らしてみください。私は【チュートリアルの間】から一回出ますので、終わるときに呼んでください。では。』
そう言うとシスティアはどこかに消えた。
「さて、練習しますか。」
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ーーーー1時間後ーーーー
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よし、ある程度は飛べるようになったぞ!もう、練習はいいだろう。
ん?読んでくれと言っていたがどうやって呼ぶのだろう?
「お~い!システィア様~!終わりましたよ~!」
俺が入ってきた門に向かて叫ぶとシスティア様が目の前に現れた。
「わお!びっくりした~。」
『どうかしましたか?』
「いえ、何も。」
『そうですか。それで練習は終わりましたか?』
「あ、はい終わりました。」
『では次の説明に行きましょう。後は【魔力操作】と魔術系なので一緒に説明しますね。』
『まず【魔力操作】ですが、魔力操作は自分の体内の魔力を操作して攻撃の威力を高めたり、魔術媒介がない状態で魔術を発動するスキルになります。ノウェム様の場合、手がないので魔力媒介が持てないので必須と言ってよいスキルですね。』
『では、体の中に流れる血管を意識してください。』
「はい、しました。」
『ではその血液が体中を循環するようにイメージできますか?』
お俺は言われた通りに血液が体中を循環するようにイメージしていく。
難しいな…。おっ出来たぞ!どこからか力が湧いてくる感じだ。
『出来たようですね。では今度は実際に使てみましょう。あそこに的がありますのであそこで魔術を打ってみましょう。』
システィア様は【チュートリアルの間】のドアを開けたときに目についた標的を指さすとそう言い、標的のほうに歩いて行ったので俺もあわてて後を追った。
標的まであと20メートル位だろうと思う場所でシスティア様は立ち止った。
『これ位の距離でいいですね。では標的に向かって魔術を発動し、技名を唱えてみてください。』
「分かりました」
「【ファイアーボール】」
俺が【ファイアーボール】と唱えると目の前に魔法陣が現れ、そこからサッカーボールくらいの大きさの炎の球が飛んでいき着弾すると標的を燃やしながら消えていき少し表面に焦げた跡が残った。
「やったー、当たった!」
【火魔術】が成功したので、次は【闇魔術】を発動してみる。
「【ダークボール】」
【ダークボール】を発動すると再び目の前に魔法陣が現れ、今度は野球ボールくらいの黒い球が飛んでいった。【ダークボール】が着弾すると標的は少し削れていた。
『これでチュートリアルの項目はすべて終了です。』
『もう少し練習することができますがどうしますか?』
「いえ、大丈夫です。」
『分かりました。ではこれでチュートリアルはすべて終了ですね。』
『チュートリアルのクリア特典をお渡ししますね。後でメールボックスをご確認ください。』
「分かりました。ありがとうございました。」
『いえいえ。ではこれでお別れですね。また会えることを願っています。』
『それでは。』
そう聞こえると視界が暗転した。