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 1白い手袋  作者: ベン マウント
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ハイジャック

高校を卒業して、佳代子も大学に入学した

「なにも同じ大学に来なくても」

「良いじゃない、いろいろと都合が良いのよ」

「まあ、それはそうだが

「嫌なの」

「嫌じゃないよ、嫌じゃないけど、嬉しいなんて照れくさくて、言えないじゃないか」

「言っても良いじゃない、言いなさいよ」

「だから嫌なんだよ、こういう事が、小悪魔め」

「冗談よ、だけど、秘密を共有する為に、慎也の傍が一番安心なの、分かってよ」

「そうだな、分かってはいるんだが、秘密を誤魔化すにも二人なら、なんとなく心強いしな」

「そう言う事」

そんな次第で、前以上に佳代子と過ごす時間が増えた、大学生活は結構楽しい、平和な日本だからこそかもしれないが、平凡な日々が過ぎていく、平凡と言えば、平凡ではない事が一つあった、佳代子と二人で学長に呼ばれたことだ、何事かと思ったが、学長の言うには、二人には緊急時、大学は可能な限りの、便宜を払うから、申し出るように、という事だった、何の事かわからないが、俺たちの都合に、大学が合わせてくれるという事だ、白下さんの指示に違いない、学長は理由は知らないという、政府筋からの通達はあったが、理由は書いてなかったという,理由を聞かれなかったので、ほっとした

いろいろと移動が必要な事が増えた、移動に便利と言えば車だ、車を購入した、その記念と言う訳でもないが、納車されて初めてのドライブで信州に来ている、勿論佳代子も一緒だが、もう一組親友の、如月英治と恋人の高岡由利子だ

「わ~、素敵、松本城」

佳代子と由利子は、何度か会っているが、意気投合して、俺たち男は構ってもらえない、彼女たちの後をついて歩いている、全く女の言う生き物は、楽しみ方を知っているというか、楽しそうだ、男の俺たちはどう楽しむかが分からない

「なあ、慎也、楽しいか」

「ああ、こうして信州に来ている事だけで、気分的にだけでも楽しいよ」

「そうだな、そう言う事で言うなら楽しいな」

「旅何てそんなものだろう、彼女たちみたいな楽しみ方は、俺には無理だ、だけど気分は最高だから」

「そうだな、見てみろ天守閣が青空に映えてる」

「うん、良いな、ドライブで、いかにも遠くに来たって感じがするよ」

「東京にはない、風景と空気に触れるだけで、ワクワクして嬉しくなってくるよ」

「本当だな、意外と人が少なくて、今日は得した気分だな」

「ああー、なんか幸せだなー、心が癒される」

「うーん、俺も幸せを感じたら、何だか腹が減って来たな」

「うん、あっ、もう昼だ、ご飯食べなきゃ」

「そうだな、信州はやっぱり、蕎麦だよな」

「慎也、お腹すいた」

佳代子が由利子と戻って来た

全員、信州そばで異論はなかった、車に戻り通りに出て少し走ると蕎麦屋があった、店の駐車場に車を入れ、四人で店に入る、趣のある由緒ありそうな店だった、それぞれに注文して蕎麦の来るのを待つ間、これからの予定をみんなに伝える

「これから、美ヶ原にいって、ビーナスラインで霧ケ峰、霧ケ峰から茅野、原村に抜けて諏訪南から高速に乗って帰る、それでいいか」

「うん、異議なし、良いね、高原を走るわけか」

本場だと言う気分的なものもあるが、最高においしい蕎麦だった

「旨かったな蕎麦がこんなに、おいしと感じたのは始めてだよ」

「本当、おいしかった、信州は空気おいしいからかなぁ」

「そうかもな、一味違うもの」

皆が絶賛している、ご機嫌な気分で車に乗ると、美ヶ原を目指し車を出した、その時、携帯電話が鳴った、車を道脇に寄せてスマホを見る、白下さんからだ、いやな予感しかしない、電話に出ると

「今どこにいますか」

「長野県松本ですが」

「そうですか、ちょっと遠くにいますね、実は、ハイジャック事件が発生しまして、協力して頂けないかと」

「ちょっと待ってください」

スマホを顔から離し佳代子に

「白下さんからだ、どうしよう」

「約束だから、しょうがないじゃない」

皆まで言わなくとも、想像がついたようだ

「分かりました、急いで戻ります」

「それで、出来るだけ早区お願いしたいので、こちらから手配する方法で、来てもらえませんか」

「手配って」

「ちょっと待ってください

そう言って少し間をおいてから

「松本だと、自衛隊の駐屯地がありますから、今竜崎さんのいる位置から、十五分程です、そこに向かってください、守衛所に行けば分かるようにしておきます、今スマホに地図を送りました、よろしくお願いします」

俺の携帯の位置情報で、場所は分かっているようだ

「分かりました」

電話を切ると

「英治、悪い、急用ができてしまった、車自由に使っていいから、家まで持ってきてくれるか」

「良いよ、何だか知らんが、お前はどうするんだ」

「なんか、俺の知り合いが、自衛隊に来てくれと言うんだ、松本の」

「分かった、まかせろ」

深くは聴いて来なかった、奴なりに気を使ってくれたようだ、急いでスマホに届いた、地図の案内で、自衛隊松本駐屯地に到着する、佳代子と一緒に降りると

「悪いが頼む、何時でもいいからうちに届けてくれ」

「おお、なんか知らんが、気をつけてな、じゃあな」

英治たちは車で走り去った、守衛所に行くと待っていたらしく

「竜崎さんですか、こちらです」

きびきびとした動作で、案内されたのは、もうプロペラを回転させ、飛び立つばかりになった、ヘリコプターだった、乗り込んで扉が閉められると、直ぐにふわりと飛び立った

「凄い、ヘリコプター何て、初めて乗った」

「俺だって、初めてだよ」

操縦士と副操縦士の二人が、前席に乗っているが、終始無言だ、俺たちは秘密兵器のようなものだから、探られないように、会話を止められているのだろう

「どうぞ」

突然、無線のイヤホンとマイクの付いた、物を渡してよこす、頭にかぶるようにつけると

「竜崎さん、聞こえますか」

白下だ

「ええ、聞こえます」

「無事に乗れたようですね、状況を説明します、犯人は五人、乗客を人質に取られています、二百十三名乗員を入れてです、要求は金と、佳代子さんの高校で捕らえた、テロリストの釈放です、後はついてから打ち合わせましょう」

「了解です」

三十分もしないうちに、現場が見えて来た、羽田空港だ、着陸して、降りると白下が自分で運転した車で迎えに来ていた

「余り人と顔を合わせたくないですね」

そう言うと

「分かっています、私も竜崎さん達の事を知られたくないので、一人できました、此処からは竜崎さんに自由に動いてもらって、結構です、どうせ、こちらは何もできない、膠着状態ですから、要求の最終刻限は、今から三時間十三分、八時間の猶予でしたが、何も出来ずに、竜崎さんにお願い知る事になってしまいました、申し訳ないのですが、なんとか力を貸してください」

「分かりました」

遠巻きに警官隊が囲んでいる、ジェット旅客機がみえる

「あれですね」

「そうです」

「二人分の警官の制服、用意できますか」

「すぐに用意します」

「着替えたら、俺たちもあのそばまで行きます、機体の下まで行けますか」

「下までなら大丈夫です」

「俺たちが、下まで行ったら、全員引きあげさせてください」

「えっ、大丈夫ですか」

「俺たちのやる事を、大勢に見られたくないので」

「ああ。そうですね、でも大丈夫ですか」

「大丈夫です、その後安全を確保したら、連絡しますから、通常のテロ対策道理の動きで、突入してください、俺たちでなく、対策部隊が制圧した事にしてもらいますから」

「其れで良いのですか」

「じゃあ、俺たちの存在がばれても良いのですか」

「そうですね、成功したら世界が注目してますから、突入部隊には厳重な緘口令を敷いておきます」

「お願いしますよ」

「分かりました」

「あ、いけない、忘れてた、丈夫な結束バンドも用意してください」

「すぐ用意します、それからこれを、小型のトランシーバーです、連絡はこれで」

白下が連絡して、制服とバンドが届いた、着替えると

「では、俺たちが到達したら、お願いします」

そう言って歩き出す、フルフェイスのヘルメットをかぶっているので、取り囲んでいる警官たちに、俺たちの顔は見えない、警官隊の列を通り過ぎ、機体の前輪の処で止まった、警官隊が引き上げていく、恐らくカメラが望遠で、映しているに違いない「あそこまで登るぞ」

車輪の上の方に上る、此処なら大丈夫だろう、両手に白い手袋を嵌める、異次元に移動すると、機体も高いも低いもない、話し言葉も聞こえない

「行くぞ」

佳代子に声を掛けると、腕にしがみついてきた、一寸飛び上がるようにすると、客室の中にいた、男が三人、前後と中間に陣取って、目を光らせている、もう二人は何処だろう、操縦室に一人と、客席との中間で一人、コーヒーを飲んでいた、余裕綽々と言う処か、こいつがリーダーだろう、まずこいつからやっつける、当身をくれて気絶させると、口からコーヒーを吐き出して気絶した、結束バンドで両手両足を縛る、都合よく棚にガムテープがあったので口を塞ぐ

「客席の方から仲間が来ないか、見張っていて」

佳代子を残して、操縦室へはいる操縦士たちは、疲れた表情で席に座っている、操縦士たちに分からないように、気絶させ縛り立っているように見せるため、壁に有ったフックに結束バンドを使って吊るす、戻って客室の入り口の見張りを、他の仲間がみていないのを見計らって、首を絞め気絶させてカーテンの陰に引き込む、佳代子に見張りして貰って、最後部に移動し、中間にいる男に分からないよう、気絶させ拘束すると、トイレに放り込んだ、最後に中間にいた見張りの男を気絶させ、乗客に分からないように、わきの下を支え、いかにも歩いているように見せかけ、キャビンに連れて行き、拘束する、客が気が付かないうちに、制圧班に来てもらわなければいけない

「白下さん、制圧完了、トイレに一人、キャビンに三人、操縦室に一人です、では、先程の場所で」

「佳代子、行くぞ」

佳代子の手を取ると、跳躍する、先程の場所を思い浮かべて飛ぶと、先程の場所に着地する、暫く待つと白下が車でやって来た

「何と言っていいのか、お疲れ様です」

車に乗ると、無線のスピーカーから

「制圧完了、乗客乗員異常なし、帰還します」

そう聞こえて来た

「ありがとうございました、ありがとうございました、ありがとうこざいました」

「もう良いです、うまくいって良かった、送ってもらえますか」

相当に気が張っていたようだ、安心でどっと気が緩んだのだろう、涙していたが、ハンカチを出して、涙を拭くとハンドルを握った

「家までで良いですか」

そう言って車を発進させた


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