佳代子危篤
大学空手部での対決によるショックから、少し自分に自信が持てるようになって来た、ハードなトレーニングを、最近は軽くしている、鍛える気になれば、日常生活はトレーニングをいくらでもできる、最近ではテレビなどで、広く知られているが、実践すれば効果絶大だ、だからごく最近は、レーニングという時間はなくなった、実は以前から手袋となじむため、鍛錬の時には必ず嵌めていた、その為効果が十倍以上だったらしい、半年鍛錬すれば、普通の人の五年分以上の効果が、上がっていたという事になる、それは知らなかったが、あるジムで体験なんとか、という催しがあった時、行ってみて分かった、凄く得した気分になったものだ、近頃は佳代子といる時間が又増えた、だいぶ前から佳代子も、一緒にトレーニングをしていた、基本的な体力が付くように、始めて貰ったが、意外に熱心に練習していた、その為、今では普通の男では、佳代子に太刀打ちできないほど、強くなってしまったのだが、それが災いする事になるとは思いも寄らなかった
佳代子が事件に巻き込まれる、体質というか運をもって居たのか、佳代子の家に空き巣が入ったのだ、おばさんは出かけていたが、それを隣の事務所から、家に物を取りに戻ったおじさんが、見つけて騒ぎになった、警察に電話しようとして、空き巣とにらみ合っていた、そこに佳代子が帰ってきた、なまじ腕に覚えがあったおかげで、空き巣の男を捕まえようとして、男の隠し持っていた包丁で刺されてしまったのだ、、男は刺してしまったことに、驚いて腰をぬかした所を腰おじさんが捕まえたが、佳代子は病院に運ばれ、危篤状態だと電話が来た、急いで病院に行った時には、面会謝絶、廊下でおじさんとおばさんが、青い顔をして座っていた
「今夜が峠だそうだ、今夜持てば助かるが、覚悟はしていてくれと言われた」
「そんな」
絶句した、佳代子が死ぬなんて、佳代子がいない世界、考えられない、耐えられない、どうしよう、角会いたい顔が見たい、さりげなくトイレに行く振りをして、廊下の角に入り白い手袋を両手に嵌める、おじさんおばさんの前を通って病室の中に入る、中は意外に明るかった。佳代子の体は何本もの細いホースにつながって、ベットに横たわっていた、看護士が傍に付いて計器を見張っている、俺の存在は全く感じていないようだ、ベッドに近づくと佳代子の手を、白い手袋をしたまま握った、手袋を取れば姿が現れてしまうから仕方ない、そして祈った、こんな時ばかりだけで神様には悪いと思うが、心の底からお願いした
「佳代子の体を治してください」
命を懸けても良いくらいの気持ちで祈った
「慎也、どうしたの」
「へっ」
目を開けると佳代子が俺を見ている、危篤で息も絶え絶えのはずだが、看護士が
「えっ、、あっ、私おかしくなってる」
そう言う看護士の方を見る、そのすきに手を放す
「あっ、戻った、錯覚だったのかしら」
看護士が呟いている
「慎也、あれ、いない、慎也何処」
「気が付きましたか」
佳代子は起き上がろうとしている、手を離したら見えなくなったようだ、見られるとは、いや、見えるとは、危なかった、でもよかった、佳代子は助かったのだ、神様って本当に居るのだ、ありがとう、ありがとうございます、涙が出て来た、そして泣けて来た
「うぇーん」
我慢できずに声を上げて泣いてしまった、異次元のお陰で誰にも聞こえないだろうが、思い切り泣いた後涙を拭いて、外に出て手袋を脱ぎ、今トイレから帰ったように、おじさんおばさんのところに戻った、その時病室のドアが開いて
「お嬢さん、気が付かれました」
看護士はそう言うと、どこかに走って行ってしまった、心ここにあらずという感じだった、おじさんおばさんと一緒に、急いで病室に入る、佳代子が俺を見るなり
「慎也、今ここにいたよね」
「何言っているんだ、面会謝絶で入れなかったのに、大けがして朦朧としていたから、幻でも見たんだろう」
「又惚けて、はっきり見たんだから」
「また始まった、お前、事件が起こる度にそう言う事を言うなよな」
「お前たち、さっきから何の話をしているんだ」
「俺が、さっきまで病室の中にいたって言うんですよ」
「そんなはずないだろう、先程まで面会謝絶で、私たちでも入れなかったんだから」
「ええー、そうなの」
疑惑の眼で俺をジーと見ていたが
「まあいいや、何れきっと白状させてやるから」
そう呟いた後
「それで、私どうしてここにいるの」
そう言った
「何を言ってるんだ、お前、男に刺されて、死にそうになったんだぞ」
「ええー、何処も何ともないわよ、ええー、痛い、何よこの管は」
「馬鹿、そのままにしておけ、直ぐに先生が来るから」
その時、先程の看護師と石が入って来た、起き上がっている佳代子を見て
「ええー、そんな馬鹿な」
そう叫んだ、それを聞いて、おじさんが
「ああーあ、そうだよ、そんな馬鹿な、余りにケロッとしているんで、忘れていた」
急に叫ぶように言った
「死にそうなお前に付き添って、此処まで運んだんだぞ」
「ええー、嘘お」
その時正気を取り戻したらしい医師が
「すみません、診察するので、病室から出て行ってただけますか」
そう言われたのでみんなで外に出る、その時、また病室の中から叫び声が聞こえた
「そんな馬鹿な、どうしてだ、どうなっているんだ、信じられない」
そう叫んでいる
「君も見ているよね、確かに私が治療したよね、そうだよね、だったらこれは、何処にも傷一つない、私は夢を見ているのか」
「一瞬だけど消えたような気がしたんです、その後急にこうなりました」
看護士が言っている
「そうなのか、だが気のせいだろう、いや、そうとも言えないか、こんな事が起きるなんて」
騒いでいる、先生が壊れちゃいそうだ、後で考えると、白い手袋のまま佳代子の手を握って、元気な佳代子を思い浮かべながら、治してと祈ったので、異次元操作されて、元気な時の佳代子になってしまったという事か、理由なんかどうでもいい、佳代子が元気になれば、何がおきてもかまうもんか
その後、病院は大騒ぎだったらしいが、精密検査だCTだと言われたが、佳代子は強引にその夜退院してしまった、帰りの車の中で
「あの時絶対、慎也はいたから、必ず白状させてやるから」
そう言って睨むのだ、あんなことが起きるとは思わないから、俺だって必死だ
ったし、でも失敗は失敗だ完全に見られたのだから、折を見て佳代子には教えた方が良いかな、佳代子が考えすぎておかしくなったら困る
「分かった、そのうち説明するよ、だからあまり考えないで、ゆっくり休め、大怪我したのは本当なんだから」
「本当だね、約束だよ、分かった、絶対だからね」
「約束するよ」
その日は大人しく家に帰って行った、家に帰ると親父が起きていて
「佳代子ちゃん、容体はどうだ」
そう聞かれ
「うん、もう退院した」
「えっ、どういうことだ、重傷だったときいたが」
「そうだけど、治っちゃったらしい」
「治ったって、いくら名医でも、それはあり得ないだろう」
「どうしてかわからないけど、今家まで行って帰って来たから」
「分からん、どうなっているんだか、でもよかったな、良くなって、お前も早く寝ろよ、お休み」
親父はそう言って、何かつぶやきながら寝室に行ってしまった、俺もベッドに潜り込むと、安心したからか、朝までぐっすり寝入ってしまった
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