王位奪回
マンションに戻り、康太に
「国に戻りたいか」
そう聞いてみる、四十過ぎのおっさんに生意気な口の利き方だが、世話になっているうえに、敬語を使われたら気が引けるから、そうしてくれと言うので仕方なく、そうしている
「戻りたいけど、戻ったら殺されるし、だけど父たちが心配だ」
「そうか、では、何とかするか」
そう言って佳代子の顔を見る
「慎也がやるなら、付き合うよ」
「よし、分かった、康太じゃない、もう良いだろうソイハイに戻っても、ソイハイ、国に帰るぞ」
「えっ、でも、殺される」
「それをなんとかしに行くんだ」
他国の事に首を突っ込む気はなかった、ただ守ってやればいいと、だが執拗な暗殺者たち、ソイハイと知り合ったのも何かの縁、国を相手何て会いそれた事だが、ソイハイは元皇太子、こうなったら元の皇太子に戻せないか、ダメもとでやってみようと思い立った、信じられないような力を駆使して、ソイハイの父を救い出し、叔父を倒せないか
「とにかく支度してくれ」
支度と言っても、ほとんど何も持っていない
「ソイハイ、秘密は守れるか」
「はい、守れます」
「絶対だな」
「絶対です」
「分かった、佳代子行くぞ、ソイハイ国で今行っても安全な所はあるか」
暫く考えていたが
「ある、森の中なら誰もいない、だがそこに行くまでが、空港や港には近づけない」
「良いから、その森を思い浮かべろ」
ソイハイの記憶を呼んでテレポートできるはずだ、心の中で
「テレポート」
一瞬、めまいのような感じがした、そして、マンションの部屋から、景色が森の中に代わる
「なっ、なんという、これは、どういう事か、私は夢を見ているのか」
「ここからは、言葉遣いに気をつけなければ、皇太子さまですからね」
「別に今まで通り」
「そうは行かない、あなたの権威を利用しなければ、所で、此処は間違いなく、あなたの故郷ですか」
「間違いない」
そう言って指さす先の気の上に、小屋が作られていた
「あれは私が子供のころ作ってもらった小屋です」
「なるほど、じゃあ、間違いないですね、まだ使えますかねぇ」
「使えると思います、皇太子のゆかりの小屋と言う事で、大切に保存されている筈です」
「では、暫くあそこで待っていてください、城はこの近くですか」
「ええ、此処は城の庭のようなものです」
小屋に行く梯子がかかっていた
「佳代子、ソイハイさんを頼む、俺はちょっと城に行ってくる」
両手に白い手袋を嵌めて、森を出る西洋風の城が見えた、城の中にテレポートする、透明人間のまま情報を集める、地下への階段を発見、ろうと言うのは恐らく地下にある、クーデターから二か月が過ぎている、元王様はどうしているのだろう、階段を降りる、やはり鉄格子の牢屋があった,手前から確認していく、元王様派の人たちだろう、十ほどある部屋が五人ほどずつに満員だ、そして、一番奥の部屋に一人老人が座っていた、こんな場所にいるのに、なんとなく威厳がある、傍に寄って
「ソイハイのお父さんですか」
ビクッ、としてあたりを見回す
「日本語がわかりますか」
「分かる」
不思議そうな顔をしながらも答えた、元王様に触れるとテレポートする、気の上の小屋の中、佳代子とソイハイがいた、目の前で姿を現す
「父上」
ソイハイが抱き付いた
「これは、私は夢を見ているのか、ソイハイ、ソイハイだな」
「父上、これは夢ではありません、こちらの竜崎さんの力です」
「それにしても、こんなに簡単に父を助けてくれるとは」
元王様も皇太子時代、日本に留学していたので、日本語は堪能だった
「状況はどんな風なのです」
「軍の一部が奴に協力したが、全員ではない、たまたま軍のトップが奴の友達だったので、今回やられてしまった、貴族たちは軍が怖くて従っているだけだ、骨のある貴族や政府高官は、あの牢屋に捕らえられている、今の政府は能力のないものの集まりじゃ」
「そう言う事ですか、ではソイハイの叔父と、軍のトップがいなくなれば、元に戻せますか」
「戻せるとも、大体今の政府はまともに機能していない」
「今捕らえられていなくて、信頼のおける人はいますか」
「私の妻はあいつの姉なので、幽閉されているだけです、そして、軍のナンバーツー、参謀本部長は信頼できる、私の命を保証する代わりに、現役でいるような男だ」
「分かりました、その二人を連れてきます」
俺にとって二人を連れてくることなど、簡単な事だった、二人とも目隠しをしてもらって、テレポートしたが、誤魔化すのに大変な苦労をした、もう一人捕らえられた貴族の代表にも来てもらった、こちらも不思議な出来事に、理由を知りたがったが、大掛かりな奇術と言う事で納得してもらった
機の上の小屋は政府奪回の本部と化した
「後は悪の二人が消えれば、何とかなりますか」
「簡単に言いますが、それが大変なのですよ」
王様が言うとソイハイが
「竜崎さんなら、何とかなるんでしょう」
そう聞いてきた
「何とかしようと、みんなを集めたんだ、今から消してくるから、後の事を考えておいてくれ」
一国の政変をこんなに簡単に、行っては拙いだろうが、もう面倒なので最短な方法をとる、紙に逆らうことかもしれないが、悪の二人には文字通り消えてもらう
悪の王様の執務室に行くと、都合の良い事に二人がそろっていた
「元王が消えたって本当か」
「ああ、どうやって脱獄したか、忽然と消えたそうだ」
「消えたそうだぁ、何をのんきなことを言っているんだ」
「なあに、何にも出来ないさ、軍も政府もこっちが押さえているんだ」
「それは表面上だけだ、中身は昔のままなんだぞ、心から俺たちに従っていると思っているのか、奴が無事で俺たちが裏切り者だと知ったら、俺もお前もお終いだ」
「そう、お終いだよ」
消そうと思ったが、この二人は罰を受けるべきだと考え直した、二人を四次元倉庫に閉じ込める
木の上の本部に戻る
「二人を消してきたけど、後は大丈夫だね」
「私が軍に戻って命令を出す、みんなは少しここで待機していてくれ」
参謀本部長が戻って行った、もともと彼は減益だから、堂々と帰って行った、三時間ほどすると彼が迎えに来た、それからは王様の基国が動き出すのに、時間はかからなかった、元に戻っただけだが、悪い癌が取り除かれた国は、見違えるように未来が明るく感じた
場内の謁見の間
「竜崎さんのお陰です」
ソイハイがそう言って近寄ってくる
貴族、政府高官勢ぞろい、国を挙げて感謝されたが、俺はそう言う事は苦手だ
「じゃあ、俺は帰るから」
「待ってください」
[あっ、忘れてた、悪二人処分するんでしょう、どうぞ」
悪の二人が拘束したままの姿で現れる、場内は騒然とする、その間に
「佳代子、帰るぞ」
テレポートしてマンションに戻った、部屋の中に入ると途端俺の意識は遠のいた、エネルギーの使い過ぎだ、すべての異能の基は俺の体力だと言う事を、忘れていた、やはり余計な事に出しゃばりすぎたようだ
白い世界に来ていた
「暫く能力は使えなくなった、しばらくお休みしなさい」
おじいさんがそう言って消えていった、暫く普通の人間として暮らせるのか、なぜか新鮮な気持ちになった、目が覚めてポケットを探ると、白い手袋が灰色になっている、これが白くならなければ能力はなしと言う事らしい、ゆっくりと休ませてもらおう
「慎也どうしたの、ねえ」
遠くで佳代子の声が聞こえる、お休みなさい、また何時か会いましょう
最後までお読みいただきありがとうございます




