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 1白い手袋  作者: ベン マウント
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又も出た虎の威を借る狐

大学もあとわずかで卒業だ、佳代子は後一年、就職の心配はしないでいいし、卒業証書を待つだけの、俺が羨ましいらしい

「卒業したら、今よりもっと自由になれるね」

「まあ、そうなるな」

「良いなぁ、私中退しちゃおうかな」

「バカ、理由もなく何を言ってるんだ」

「だって、卒業したって、しなくたって慎也と結婚して、一生終る事は決まってるでしょう」

軽く言ってくれるが、俺は嬉しさで思わず、うっ、となるがそこは堪えて

「そうだけど、卒業はしてください」

お願いになってしまった

「しょうがないな、慎也が言うなら、もう一年頑張るか」

威張って言う事か、まったく平和な事だ、そんな会話をしていると

「竜崎慎也って、あんたか」

「ああ、そうだけど、何か」

「僕のブレーンにならない」

「ならない」

「即答だな」

「何で俺がお前の、ブレーンにならなきゃいけないんだ」

「僕の父は大企業の重役だ、いろいろとコネがあるから、将来得になる」

「なんで俺に」

「少し腕が立つようだから、ボディガードかな」

「お断りだね、人のコネで生きて行きたくないよ」

「そう、せっかく誘ってあげたのに、後で後悔するよ」

そう言ってあっさりと去って行った

「何なんだあいつ、親が重役、確か前に同じ様な奴がいたな、可哀想にあいつもろくな人生にならないな」

そんな話をしていると

「おい、お前が竜崎か、生意気に北条さんの誘いを断ったんだってな」

「それがどうかしたか」

「本当に生意気なんだな、お前」

「ああ、まだ干からびてはいない、生だよ」

イライラしてきたので、からかってやる

「何だとぅ、貴様、俺をバカにしているのか」

「バカにされてもしょうがないだろう、自分のやっていることを良く考えてみろ、ごますり腰ぎんちゃくっていうんだよ、お前みたいなやつの事」

「畜生、もうー、頭にきた、貴様ちょっと来い」

「嫌だなぁ、腰ぎんちゃくと一緒に行くなんて」

「てめえ」

その時

「竜崎、なんか揉め事か」

「おお、如月か、こいつらに絡まれて困ってるんだ」

「そうなんだ、おい、お前らたしか空手部だよな、まだこんなことをしているのか」

「き、き、如月さんのお友達ですか」

「こいつは親友だが、俺の師匠でもある、お前ら部員全部でかかっても、片手でいなされるぞ」

「ええー。如月さんの師匠」

「ああ、そうだ、俺の百倍以上強いぞ」

「失礼しました、勘弁してください」

「煩くしなきゃ良いよ、早く消えな」

「はい、すみませんでした」

脱兎のごとくとは此の事だろう、あっという間に見えなくなった

「如月、空手部に何かしたのか」

「ああ、余りに粋がっているので、からかってやったら、道場に来いという話になってな、主将以下部員全員を叩きのめしてやった」

「それでか、脱兎のごとく逃げていった」

ハハハハハっ、佳代子も含めて笑った後

「北条って知ってるか」

「ああ、あのバカか、知ってるよ、親父が大企業の重役とかで、何時も取り巻きを連れて歩いている奴だ」

「俺に取り巻きになれってさ」

「あれは、本物の馬鹿だわ、気持ち悪い」

加代子がまじめな顔で言った

「あいつ、バカじゃねえの、竜崎が学長から特別な何かを与えられている、そんな噂を聞いたからだろう」

「ああ、その事か、佳代子も一緒だぞ」

「分かってるよ、お前らはすべてペアだからな」

「まあ、あんな馬鹿は放っておいて、飯でも食いに行こうぜ」

「由利子も呼んで良いか」

「ああ、お前もペアが良いんだろう」

「勿論」


大日重工業本社から定期点検の依頼だ、専門業者が徹底的に調べた後、俺がチェックしないと、会長が認めないのだそうだ、今日も白い手袋左の力を借りて、感覚を最大限に鋭敏化して、本社内を歩いている、巧妙に隠された盗聴器を、二か所で発見している

「驚きました、業者があれだけ徹底的に調べたのに」

「セキュリティにも、問題がありますね、こう簡単にセットされていると、社内の人間の可能性もありますよ」

「頭の痛い事です」

今日も案内役で重役の一人がついている、前回もついてくれた人だが、名前は忘れた

「終わりましたら、会長がお会いしたいと申しております」

またかよ、悪い人ではないが、偉い人は肩が凝って敵わない

「あのー、できれば早く帰りたいのですが」

「そこをなんとか、後で私たちが大変なので、お願いします」

両手を合わせて頼まれてしまう

「仕方ありませんね、分かりました」

そんな話をしながら歩いていると、部屋から出てきた男が

「あれ、竜崎君、なんでこんな所に、ここは君の来るところではないのでは」

「ああ、お前か、頼まれたんでな、入社するわけじゃないが、ちょっと」

「だったら、目障りだ、用事を済ませて、さっさと帰ってくれないか」

「ああ、そうするよ」

同行の重役さんに

「この階で終わりましたし、此奴が言うので帰らせてもらっても良いですか」

「そんな、ちょっと待ってください」

そういって俺の前に来ると、北条に向かって

「君はなんだね、君こそ見かけないが、竜崎さんに失礼な口をきいて、謝りたまえ」

「僕は、北条の息子です、何でこんな奴に、僕が謝らなければいけないんですか」

「常務の息子と言う事ですか」

「そうです」

「息子が、どうして偉そうに、竜崎さんに出て行けと言うんだね」

「こいつは、此処の入社を断ったやつですよ」

「だからどうなんです、私は専務の佐伯だが、あんたのお陰で父親はもうお終いだ、会長にお役御免にされるか、地方に飛ばされる」

「どういうことです、僕は卒業したら、此処に入社するんですよ」

「それも、もう取り消しでしょう、あんたみたいな人間は、わが社ではいらない、竜崎さん、行きましょう」

北条はぽかんとした顔で、立ち尽くしている、専務の佐伯さんか、自己紹介してくれたはずだが、覚えていなかった、失礼な事をしてしまった

「会長の所に行く前に、一息入れましょうか」

「良いですね」

歩きながら

「こんな大企業の専務さんが、俺の案内何て恐れ入りますね」

「とんでもない、わが社の機密保持のための、重要な役目です、やたらな人間には任せられません、今回だって二か所も、この後調査しなければなりません竜崎さんだから見つけられたんです、また機密が守られました、ありがとうございます」

「いえいえ、そんな大げさですよ」

「竜崎さんは、事の重要性をご存じないようですが、大変な事なのですよ」

「そうなんですか」

喫茶室に入ると、さすが専務だ、責任者らしき人が急いでやって来た

「竜崎さんは何を」

「お任せします」

「じゃあ、私のいつものを二人前」

「かしこまりました」

マネージャーが行ってしまうと

「先ほどの、北条の息子の件、お詫びします、それと、失礼ですが、彼とはどんな関係なのです」

「ええ、ただの大学の同年生です、それも、ついこの間知ったばかりですが」

「そうなのですか」

「父親がこちらの重役と言う事が、相当に自慢らしくて、俺に子分に慣れみたいな事を言ってきたんです、断りましたが、断られたのが気に入らないようですよ」

「はあー、そんな馬鹿が我が社の社員になるなんて」

「何時だったか、会長が社員にならないかと言うのを、断ったことがあるじゃないですか」

「ええ、最初盗聴を調べていただいた時ですよね」

「俺様がこれから入る会社を、断るなんて許せん、だそうです」

「あーも~、最低な人間ですね」

出てきたコーヒーとチーズケーキをのセットを、味わいながら話していると

「専務、此処でしたか」

「ああ、北条君、なにか」

「ええ、息子が何か失礼な事を、しませんでしたか」

後ろに息子もついて来ていた

「ああ、竜崎さんに、すぐに帰れと言いましたが」

「なっ、なんと言う事を」

「会長がこの後、どうしても話したいと言うので、帰ってもらっては困ると話していた処です」

「誠一、謝りなさい、竜崎さんに」

「何なんです、こいつがそんなに大事なんですか、こんなやつより僕の方が」

バシン、と音がした、父親が誠一にビンタしたのだ

「お前ごときが、千人いても竜崎さんには及ばないよ、なぜ素直に謝れない、もういいから帰りなさい、お前の此処への入社は取り消しだ、早く帰れ」

幸い喫茶室には他に誰もいなかった、黙って見ていたが

「まあ、そのくらいで良いでしょう」

そういうと、佐伯さんが

「北条君も息子と一緒に帰りたまえ、但し、この件は会長に伝えておくから、覚悟だけはしておいてください」

「分かりました、後はよろしくお願いします」

肩を落として帰ろうとする、北条親子に

「ちょっと待ってください、佐伯さんもそんなに大袈裟にしないで」

「ですが、何千億もの損害を防いでくれた、竜崎さんを捕まえて、僕の方が仕事ができる,ような発言、許せません、侮辱も甚だしい、それなりの処置は必要です」

「それでは、俺の目覚めが悪くてしょうがない、ここは、親の責任で分からせれば、それで良いじゃないですか、頼みますよ」

「そうですか、当の竜崎さんがそういうのなら、仕方ありません、そうしますが」

北条さんが土下座を始めようとしたので

「北条さん、止めてください、それよりお子さんに常識を教えてください、甘やかしすぎですよ、親の責任でもあるのです、息子のためにもちゃんとしてくれれば、それで良いので」

これには、佐伯さんも苦笑いしながら

「北条君、どっちが大人かわからないな」

「本当です、面目ありません、よく言って聞かせます、しっかり躾ます、配慮していただき、ありがとうございます、お言葉に甘えて失礼します」

バカ息子の腕を取って去って行った

「竜崎さんは本当に大学生ですか、私よりずっと大人ですね」

「佐伯さんは、言う事がいちいちオーバーです」

「嫌、そんな事はないですよ、本当にそう思っています」

「それはどうも、会長のご機嫌伺いに行きますか」

「そうしますか」

お読みいただき有難うございます

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