夜襲
親分が意外に素直に、依頼主の情報を教えてくれたので、その情報を元に塚田さんと打ち合わせ中だ
「情報から関係各所に問い合わせ調べたら、確証はありませんがC国の政府絡みの感じですね」
「そうまでして、欲しい技術なのですか」
「そのようです、世界中の国が欲しがっていますが、実行に移したのがあの国と言う事でしょう」
「橋田さんのところは、そんなに凄いんだ」
「ええ、他にも数々の特殊技術を持っているのですが、戦争に利用されるのが嫌で死蔵してしまっているんです、だから、あの会社を手に入れれば転売するだけでも、兆単位で売れるという話です」
「恐ろしい程の価値があるのですね、それは狙われるわけです」
「ええ、橋田さんが営利を目的に、それらを手放したら大変な事になります、それで国も陰で保護しているんですが」
「知らなかった、そんな優良企業なんだ」
「戦前から続く隠れた財閥ですから」
「隠れたとは」
「決して巨大化しないよう、地道に地域に根付く事だけに、専念している企業なのです」
「そんな企業があるんだとはしりませんでした、儲けばかりに走るのが企業だと思っていましたが」
「中にはあるんですね、そんな企業が、ああ、それと、話は違いますが、私達、部署が内閣官房から外れましたので、直接関係ないでしょうが、頭に入れておいてください」
「また急な話ですね、どうしてですか」
「私たちの動きの背後に政府が、という事がはっきりし過ぎているのは、いろいろと支障をきたすという事でしょう」
「縛りがなくなって良かったですね」
「それが、良かったかどうか分かりません、極秘ですが首相直属と言う事になりましたから」
「余計に国がバックと言う事では」
「ですから、直属と言うことは、超極秘事項になっているのです、組織的には公安の外部協力者と言う事になっています」
「まあ、何れにしろ俺には関係なしと言う事にしておいてください、思想信条は他人に左右されたくないし」
「ええ、それは勿論そうしてください、ただ、もし外国が竜崎さんを取り込もうとしたとき、私たちが協力できる口実だけは、作っておかないとまずいので」
「ありがとうございます、気を使っていただいて感謝します」
素直に頭を下げる
「そんな、とんでもないです、こっちが勝手にやってる事ですから」
「それにしてもです、気を使ってもらって」
「いえ、その話はそう言う事でして、そういう訳で、私たちが関わっても国が関与と、言われなくて済みます、動きやすくはなった事は事実です、公安の依頼と言う名目にはなりますが、各組織の協力体制は変わりません」
「分かりました、それで、橋田さんの所ですが、KSKを二班ほど派遣できませんか」
現在は俺の弟子三十人の青年たち、彼らの事をKSKと呼んでいる、名目上は塚田さんの配下と言う事にして、特別指導員チームKSKだ、彼らがついていれば、大概の相手は大丈夫だろう
「私もそうした方が、安全だと思っていました、分かりました、早速手配します」
「お願いします、俺は佳代子と今から大阪の本部に出発しますので」
「ああ、これホテル手配しておきました」
そう言って宿泊券らしいものを渡された、現在は佳代子もこのマンションに住んでいる、もちろん寝室は別だ、お互いの両親公認でそうしてもらった、緊急時、佳代子がいないと何かと不都合なのだ、それでこうなった、食事の用意も佳代子がしてくれる、そう言う事だから、二人が一緒に幾日もの旅に出ても、何の問題もない、俺だって男だから、欲求がないとは言わないが、節度は今の処保っている、俺には忍耐力が意外とあるのだ
塚田さんが出て行き、佳代子と二人だけになった処で、和子の手を取ると
「行くか」
「うん」
テレポートする、一瞬めまいのような感覚の後、目的の場所の近くに透明のまま浮遊していた、最初のころはテレポートすると、転移場所に突然移動してしまったが、今は目的地の近くで浮遊し、到達地点を選べるようになった、人気のないビルの陰、コイン駐車場の隅に降り立つ、通りに出ると目的のビルの近くを歩いて見る、大いに大阪の雰囲気を味わう事が出来る、あちこちで関西弁が飛び交っている、おばちゃんたちの会話、店の呼び込み誠に賑やかだ、ぶらりぶらりと目的のビルの前を歩く、あちこちに、目立たないようしているつもりだろうが、目立っている見張りの男たちが立っている、どういうセンスをしているのか、一目でヤクザと分かる連中ばかりだ、だがこれだけ警戒していると言う事は。中に何かがあるに違いない
「中の様子を見ようか」
話していると
「おい、兄ちゃん、あのビルに何か用か、さっきから気にしているようだが」
拙い、気づかれるとはドジだな俺は、やはりこう言う事は素人と言う事だ、顔を覚えられると何かと拙いではないか
「いえ、喫茶店を探しているんですが、分からなくて」
「ここが喫茶店に見えるか、悪いな、ちょっと来てくれ」
優しく言っているが、威嚇の雰囲気を充分に出している、ここで乱闘は避けたい、人目がありすぎる、佳代子に
「怖そうにしてくれ、中に入るまででいいから」
「分かった」
二人でいかにも怖そうな態度を見せて、男の後に従ってついていく、ドアを開け中に入る、ロビーのようになった部屋があり、壁際で椅子に座っていた男が声をかけてきた
「どうした、その二人はなんだ」
「へえッ、此処を伺っているように見えたんで、怪しいから連れてきました」
「そうか、どれ」
男は立ち上がり近寄ってくると
「兄さん達、ここに何か用事でもあったのかな」
「いえ、ただ何となく見ていたら、連れてこられて」
おどおどしたふりをする
「名前は、それと何処から来たんだ」
名乗っても、証明するものと言われるだろうから、免許証を出せばいい、名乗るしかないか、別に問題は無いだろう、俺の名は有名でもないし、奴らは知らないはずだ
「東京から来ました、竜崎慎也と言いますが」
「それを証明するものは」
免許証を渡す、男はニヤリとして
「そっちから来てくれるとはな、間違いなさそうだ,お前さん帰すわけにはいかなくなったよ」
「えっ、なんで」
「しらばっくれても駄目だ、お前さん、いろんな事件に関わっているだろうが、そんな奴が何となく此処にいるわけないだろう」
「いや、だって、ここに何かあるの」
「しらばっくれても駄目だ、お前さんは知らないのか、裏社会じゃお前さんの名は有名だぞ、しかし、こんな若いガキだとは、おい、どこかに閉じ込めておけ、後で組長と若頭に相談だ」
若い衆が五人で俺と佳代子を取り囲む、そして、物置のような部屋に閉じ込められた
「拙ったな」
呟くと
「面白いじゃない、中を見学しようよ」
まあ、怖がる必要はないけど、この状況で佳代子の楽しそうな顔はどうかと思う
「もっと不安そうな顔をしてなきゃ、おかしいだろう」
「あいつらが来たらそうするね」
学芸会じゃないんだから、緊張感に欠ける佳代子の態度に、思わず苦笑してしまう、両手袋を両手に念じる、二階の様子を見て回る、若い衆がたむろする部屋、食堂のような部屋、三階に行くと組長の部屋、応接、若い衆の詰める部屋、四階には十人の外人がいた、組長らしき奴と若頭らしき奴と打ち合わせをしていた、いやに重い雰囲気だ、だが、こちらには都合よく、丁度タイミングが良かったと言っていいだろう、組長らしき奴が
「今夜、出発して新潟の橋田邸を襲い、機密資料を奪って、ボートで沖に出れば潜水艦が迎えに来る、そういう手はずになっている」
「先ほどそれは聞いたが、その手順で間違いないな」
「間違いない、大丈夫だ心配するな、念入りに準備してある」
外人の代表が念を押している、潜水艦とは大袈裟な、日本の防衛も馬鹿にされたものだ
「先に行っている二十人は、無事についた様かな」
組長らしき男が、若頭らしき男に聞いている
「へい、先ほど連絡がありました、無事アジトについたようです」
「向こうの地元の応援を入れると、五十人、今度こそは失敗しないだろう」
話がだんだん大きくなってきた、五十人とは、そこまでする価値があると言う事か、のんびりしていられなくなった
「塚田さんたちと打ち合わせなければ、俺たちだけでは手に負えそうもない、戻るぞ」
朝方出たばかりで、今戻ると時間的に不審がられるが、そんな事は言っていられない、原発の時頂いて置いた睡眠ガスを、四次元ポケットから出すと、ビル中に撒いて置き土産にしてやった、そのままマンションに帰り塚田さんの事務所を訪ねる、いたのは白下さんだけだったが、情報を伝えると
「えらく大掛かりになってきましたね、海上自衛隊も出動ですね」
「対処できるのは、それしかないでしょう」
塚田、松田両氏にも連絡する、余りに時間がない余りにので、あわただしい時が過ぎて行く、KSKも全員集合してもらうことになった、警察の格闘技指導員として、全国に散らばっていたが、警察や自衛隊のヘリで送られてきた、かれらを到着した順番で別室に呼んで、索敵の神経を鋭敏にする術を施す、白い手袋の左を作用させて、脳に刺激を与えるのだ、術とは言えないかもしれないが、気配や危険に鋭敏になるはず、なぜかそう思いついたのだ、怪我をしたり、ましてや死なれたら困るから、思いついたのだが、後は俺が全体に気を配るしかない、勿論佳代子も俺を補助してくれる
塚田さんが帰ってきた
「竜崎さん、相変わらず凄いですね、どうやったらそんな凄い情報を、と思いますが聞きませんから、心配しないでください」
「でも、ここまでして欲しがる秘密って、何でしょうね、それこそ教えてもらえないでしょうが」
「ええ、私も詳しくは、ただ、持ち運びできる原子炉、と言うような事を聞いた事があります」
「はっ、移動できる原子炉」
「それが、理論的な資料か、試作があるのかわかりませんが、それを欲しいようです」
「そんなに凄いものなのですか」
「例えば、自動車に搭載すれば、廃車になるまで燃料補給が、必要なくなるわけです」
「でも、危険ですよね」
「その辺も対処されているのでしょう、詳しくは分かりませんが」
「何れにしろ守らなければ、そんな大発明を。失敗すれば国家の恥になりますね」
「政府も全力で対応するそうです」
「それはそうでしょうね」
一応防御態勢は整ったようだ
「ところで、気になる事を聞いたんですが」
「何でしょう」
「俺の名前は裏社会では、有名だという話聞きましたが、知ってます」
「ええー、竜崎さんの名前が有名だとは、初めて聞きました」
聞いた時の状況を話すと
「その男が知っていたとしたら、半島の話のようですね、これは大問題です」
「スパイダーマンが、顔を隠す意味が分かったような気がしますよ」
「これからは、マスクでもするんですか」
「ええ、今はシリコンとか出、結構リアルな物が出来るらしいじゃないですか」
「そう言えばそうですね」
「マスクはともかく、これからは気を付けなくては」
「そうですね、知らなかった,どこから漏れたのか、裏社会は手強いですね、竜崎さんの事はデーターにした事はないにですよ、私たち三人の記憶の中だけのはずなんですが」
「まあ、以後気を付けますよ」
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