ヤクザの逆襲
翌日、三十人そろってやってきた、全員トレーナー着用だどこかの修学旅行の宿のようだ、青年たち三十人を昼間見ると、学校等以外ではちょっと壮観に見える
「よろしくお願いします」
全員そろって挨拶する、坂崎がリーダーのようだ
「よろしく。じゃあ、体を慣らす意味で、階段を上るよ、ついてきて」
最上階まで一気に駆け上がる、それなりに運動はしているようで、全員が最後までついてきた、一部相当に無理をしてついてきた物もいるが、それだけに必死さが伝わってくる、ヤクザの食い物にされて、藁にも縋る思いなのだろう
道場に案内する、三十人が稽古しても充分に余裕がある、道場を見ると
「おおー」
完成が上がる
「ここが稽古場だ、一応マスターするまではここに通うこと、いつ来てもいいようにしておく、頑張ろう」
、道場の規模を見て、泣き出すものが出てきた、よほど嬉しいのだろう、助け船が本物だったと安心した事もあるかも知れない
「師匠、ありがとうございます」
坂崎達三人も泣いている、しばらくして興奮が収まると坂崎がそう言った
「それから、俺は竜崎慎也、間違っても師匠と呼ばないように、どこで教わったかバレてしまうからね」
「はい」
一斉に返事をした
「じゃあ、みんなの体力を知りたいので、技を一つ教えながら組み手を行う」
最初から全員に技を一つ植え付けた、教えるというより脳に植え付ける、と言った方が合っていると思う、一度白い手袋で教えると脳が覚えてしまう、つまり脳に記憶の種を植え付けるのだ、後の育ちは、本人の努力次第なのだから、一通り三十人と組み手が終わる、ざわついている
「ええー、もう技を一つ覚えたような気がする」
「みんな、聞いてほしい、これで技を一つ教えた、あとはこれを反復練習して、自分のものにするように、最初は体がついていけず筋肉痛になるから、徐々に鳴らしていくように、では自由に稽古してくれ」
その後二か月間というもの、全員が休まず通ってきた、二週が過ぎたころからは一日何種類もの技の種を植え付けた、そして二か月で全員に技をマスターさせた、後は修行のみだ
幸い唐島からのちょっかいはなかったらしい
半年が過ぎた、道場では如月が中心で稽古が行われている、百合子がそれを補助し、佳代子は別格なので、俺の彼女というより、彼女のあまりの強さに、教えることが難しくは、唯々みなに一目置かれている
「あんなかわいい人が、俺たち十人がかかっても軽くあしらわれるなんて、ちょっと想像できないよな」
そんな会話を聞いて
あんなかわいい人が、なんて、もっと言ってと言いたい心境だが、顔に出さないようにするのに苦労する、顔を引き締めて
「みんな、集まってくれ」
俺流には気合も掛け声もない、みんな無言でやっているので声は届く、すぐに全員が集合した
「これで、一応全員卒業だ、ここへ通うものは通ってもいいが、ほかで稽古するものは自由だ、ただしこの場所と、俺に教わったということは、秘密厳守だ、俺からは以上だ」
「ありがとうございました」
全員が声を揃えていった
「はい、解散」
坂崎だけが残り、恐る恐るという感じで聞いてきた
「竜崎さん、今更ですけど、俺たちのコーチ料は」
「秘密を厳守ということで、ただでいいよ、俺も三十人三十色の技の研究ができたし」
「そんなんで、いいんですか」
「じゃあ、もらうとして、お前だったらいくらの値をつける」
「そういわれても値段なんて、つけようがないです、何十万何百万払っても、こんな技を短期間に身に着けることは不可能です、いや、一生かかっても無理でしょう」
「だろう、だから秘密を厳守すればいい、それとむやみに技を使うな、どうしても目立つからな、みんなにも徹底しておいてくれ」
坂崎は深く頭を下げ、仲間のもとに帰って行った、それを見送ってから、部屋に帰る、廊下を歩きながら
「あんなかわいい子が待ってる部屋か、いいね」
部屋に入ると
「ご飯作っておいたよ」
可愛い子が言う
「何にやにやしてるの」
「いや、別に」
「そう」
「全員に卒業だと言ってきたよ」
「そう、よかったわね」
なんだか彼女というより、年上女房の感じになってきた
「これ以上教えると、全員が化け物になってしまうからな」
「そういえばそうね、ちょっと目立ちすぎちゃうかも」
とにかく若者たちが間違った道に、進まないで済んだことにほっとしている、同じ年か年上もいるのに、上から目線で彼らを見ていっる俺は、本当に年寄り臭いとおもうが仕方ない、これも神様がくれた試練のうちだろう
近頃、この地区は嫌に静かになった、暴走族の爆音が聞こえなくなったのだ、少なくなったのではない皆無なのだ、坂崎達だけでなく、いくつものグループがいたはずなのに、どうしたのだろう
坂崎達は相変わらず通ってきている、前ほど長い時間はいないが、顔を出すのを務めとしているようだ
俺に稽古をつけてもらう、それがアルバイト料をもらう条件なので、如月は時間が許す限り俺たちと一緒だ,勿論由利子さんもおなじだ
「竜崎、知ってるか」
「何を」
「坂崎達の事」
「いやぁ、何も」
「あいつら、この辺から暴走族を締め出しているらしいぜ、それと夜の巡回をして、警察に感謝されているんだって、それとさ、唐島たちをここから追い払ってしまったらしい」
坂崎達をヤクザにしたら、唐島の組より大きい組になる、しかも全員ヤクザ五、六人をあいてできるのだ、単純に計算して少なくも百五十人を相手にできる、喧嘩したら勝つに決まっている、それは追い出されて当然の結果だ
「あいつら、毎日来ているが何も言わないぞ」
「まあ、良い事してるんだから、黙ってればいいさ」
「まあな、本当はみな気のいい青年たちだもんな、話したら聞いてやるよ」
そんな話をしているとき、電話が入った松沢さんからだ
「坂崎君が拳銃で撃たれた、どうも話から撃ったのは、唐島というヤクザらしいです」
「坂崎のけがは」
「危篤状態らしいです」
「病院は」
場所を聞いて
「行ってくる」
マンションを飛び出した、物陰に入り白い手袋を両手にはめる、病院にテレポートする
ベッドに坂崎が寝ている、いろんな医療器具につながっている、何時かの佳代子の事を思い出す、いまの佳代子なら、拳銃の弾など避けちゃうけどね、大騒ぎになったが、今回もかまわない、坂崎を死なせるわけにはいかない、坂崎の手を握り次元を戻す
「え、竜崎さん」
「声を出すな、俺がいたことは忘れろ」
そう言って手を放す、俺が見えなくなった途端起き上がると
「俺はどうしてここにいるんだ」
呟いている、撃たれる寸前に戻したのだ、その直後から現在までの記憶はない、撃たれたことも記憶には存在しない、本人は戸惑っている、看護師が入ってきた、おおさわぎのはじまりだ、ちなみに佳代子の入院した病院と同じだった、またあの騒ぎをさせてもい仕訳けないが、これも運命と思ってください
「キャー、何してるんですか、寝てなくては」
「どうして、この点滴の針痛いから外して、どこも痛い悪くないから」
「そんな、あんな重傷だったのに、針は外しますから寝ててください」
看護士が駆け足で去っていく、それを見て、この後の騒ぎは一回体験しているので部屋に戻る事にする
「どうだった」
キッチンから出てきた佳代子が聞くので
「大丈夫だった、もう何ともないよ」
ニヤリとして
「また、やったわね、私の時と同じ事」
「仕方ないだろう」
「もちろんいいわよ」
リビングでテレビを見ていた如月が、俺が入っていくと
「どうだった」
やはりきかれた
「うん、もう大丈夫だ、心配ない」
「そうか良かった」
「まったくだ、それで唐島はどうなった」
「逃亡中だとさ、怖いね、次はお前を狙うんじゃないか」
「そうだと良いが、他の連中が狙われていないか、岩田とか田口が」
「それはあるな」
「取り敢えず近くの様子を見てくる、奴がこの近くにいなければ、岩田と田口が危ない、その時は頼むぞ」
そう言ってから、再び部屋を飛び出す、しかし、近くを見て回る必要はなかった、マンションを出て物陰に入ったところで、マンションの脇の植え込みの中から、唐島が出てきたのだ、見張っていたようだ、後をつける気らしい、こちらの望む処だ、人気のない方に誘う、尾行しているからなのか、ヤクザ歩きをやめて肩ををすぼめ、内また歩きでついてくる、考えは間違っていないが、極端すぎて笑えてくる、角を曲がってすぐに物陰に隠れる、慌てた唐島が前を通り過ぎたところで後ろから
「俺に何か用か」
声をかける、ぎょっとして飛び上がった、そして懐に手を入れる、その手を抑え腕を逆手に取り、懐から拳銃を奪う
「俺に用かと聞いている」
「うるせえ、貴様は許せねえ、坂崎達に妙な技を教えて、俺たちの邪魔をして」
「それから、どうした」
「うー、それに、とにかく許せねえ」
「で、お前ひとりで、邪魔者は消す役か」
「俺だけじゃねえ、ざまあみろ、今頃主だった奴らには別の人間が行ってらぁ」
すぐに佳代子に電話する
「如月と手分けして岩田と田口に連絡を取って、彼らのところに行ってくれ」
「わかった」
唐島一人の行動ではない、組を挙げてなのか
「全部吐いてもらおうか」
「誰が、喋るか」
「ふーん、じゃあ、こうなってもいいんだな」
近くにあった、太めの小枝を持つと、親指と人差し指で挟んでブツッとつぶして見せる
「ヒっ」
唐島が悲鳴にならない悲鳴を上げる
「まずは、腕から行くか」
そう言って腕をつかむ
「やめろ、バカ、よせ」
「それでは始めますか」
少しずつ腕を掴む指の力を増していく
「やめろ、痛い、分かった話す」
思ったより簡単に吐いた、歯が立たない相手にあきらめて、組が事務所を移したもだが、その事を不審に思った、上部団体が調査したらしい、元暴走族に追い出されるとは、組織の名折れだ、他の組織に顔が立たない、この件の指導者と幹部に仕置きをしなければ、組員全員消してしまうと言われ、だったら憎い相手の命を奪う方が、話が早いという事になったらしい
「わかった、じゃあ、じゃあ、お前も仕方なくだったんだな」
「そうだよ、坂上たちがいつの間にか、全員俺より強くなっていたんだ、あきらめるしかないだろう」
「そうk、分かった、上部団体には潰れてもらうわ、よく教えてくれた、お前が罪を償って出てくるころには、上部団体はなくなっているから、安心しろ」
「お前、何を言っているんだ、山端組は全国組織で傘下まで含めると、何万だぞ」
「そんなもの関係ないよ、上から潰して行けばいい、何時か潰れるよ」
「恐ろしいことを言うな、おまえ」
「まあ、お前は罪を償え、坂崎はピンピンしているから、罪は軽くなるだろう」
「ピンピンて、そんなはずは、いったいお前たち」
「じゃあ警察を呼ぶぞ」
聞くこともなくなったので、警察を呼んだ
「俺たちが手を出してはいけない人たちだったんだ」
唐島が呟いていた
しばらくして警官が来て、そして、こういう事の処理はトリオに任せるため、城下さんが飛んできた
「お後はお願いします」
「わかりました」
マンションに戻り、塚田さんたちの事務所に顔を出す
「塚田さん、相談があるのですが」
事の経過を説明する
「ことが大きいですね、できますか、日本の警察機構が全力を挙げても,出来ない事ですよ」
「やってみるしかないでしょう、民間だからできることもある、情報だけ欲しいのです」
「山端組がなくなれば、また次の組織ができるだけですがね」
「今回の問題にけじめがつけば良いんです」
「そうですか、わかりました、できる限りの事はこちらも、バックアップさせてもらいます」
「ありがとうございます」
話していると電話が来た、如月からだ
「俺だ、二人で乗り込んできたよ、田口と一人ずつ捕まえた、警察呼べばいいんだよな」
「ああそうだ、後は塚田さんの名前を出して、帰ってきてくれ、ご苦労さん」
計ったように続いて佳代子
「二人捕まえたわ、岩田君一人で間に合った、私は必要なかったみたい」
「そんなことはないよ、佳代子が行っていると言うだけで、俺が安心だ、警察を呼んで連れて行ってもらえ、後は塚田さんに連絡しろと言っておいて」
「わかった」
こうなるとヤクザが哀れに思えてくる、子供か大人かわからない集団に、手玉に取られて可哀想なくらいだ、生まれた時から悪い奴なんていない、人生、運や友達、最も大きいのが誰の子として生まれたかだ、これがいろいろに絡み合って仕上がった布が、絹のような肌触りか、麻袋のようなものになるか、違ってくる、本人にはどうしようもないものかもしれない、だからと言って人の命をないがしろにする輩を、放ってはおけない、それ相応の報いは受けてもらおう




