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 1白い手袋  作者: ベン マウント
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暴走族哀れ

翌日の報道は凄まじかった、一日中原発が映されていた、解決方法について、いろいろ憶測された報道が面白かった、政府としては、あくまでも機動隊と自衛隊の混合部隊が、制圧したという事で押し通した、犯人たちが眠っていたと一部報道されたが、あり得ないという事で、大きく取り上げられる事はなかった、緘口令と言うものが、こんなに完全に徹底されるとは驚きだった、延べ千人以上が現場の状態を見ているはずなのに、情報が洩れる事はなかったのだ、一部漏れたなと思ったのだが、憶測に過ぎないと言う形で終わっている、隠そうと思えば隠し通せるという、政治と言うものの怖さを少し感じた


最近は如月と時間があれば、毎日のように稽古している、佳代子と、由利子さんまで一緒にだ、稽古する事が如月と由利子さんの、バイトの時間なのだ、二人とも不思議に思っているようだが、塚田さんの所のアルバイトでやる事は、俺の指導で格闘技を身に付ける事だそうだ、勿論俺には指導料が支払われる、時間は俺の都合で行って良いという事になっている、訳が分からず始めた二人だったが、今は夢中だし楽しそうだ、俺が教えるのは、柔道でも空手でもない俺流で名前がない、最初の頃俺自身が子供のころ習った、合気道が基本だったが、思うままに佳代子と一緒に、ネットでいろんな武道を検索し、いろんな格闘術を自己流で稽古するうち、いろんな格闘技がごっちゃになってしまった、要するに状況に合わせて臨機応変に、良いところを取り込んでの、技と言えるかわからないものだ技が、ちなみにこれは人に知られたら、大騒ぎになるからいえないが、佳代子はプロレスの世界チャンピオンより強い、チャンピオン五人くらいを同時に相手に出来ると思う、何しろ俺と何年も稽古しているから、一般に比べたら強さは半端じゃない

俺が右手袋を嵌めて教えると、教える人の脳に運動神経に直接作用するようだ、だからすぐに業をマスターできる、普通の武道の稽古の何十倍も早く、技が身に付ていく、ただ、体力、筋力だけは本人が鍛えなければ、即席の方法はない、だから如月達は最初のころ、技は覚えても体がついて行けず、筋肉痛などで苦しんでいたが、体力筋力が整ってくると、面白いように技を覚え、使えるようになり、楽しくてしょうがないらしい、暇さえあれば稽古に来る、塚田さんたちの事務所が、最上階のフロアーを借り切っているので、フロアーの半分近くを改修して、道場にしてくれてある、高級マンションいくら暴れても、下の階に迷惑は及ばない、ふたりはそこで稽古している、今ではプロレスラーの三人位なら軽く相手ができるだろう、恐ろしい進歩だ、最近は塚田さんたちトリオにも教えている、健康にも良いそうで、三人とも運動か何かで体は鍛えられていた、三人も暇があれば稽古をしている、だがこの事は俺たち七人だけの秘密だ、外部に漏れたら、また騒ぎになるから、何しろ俺が教えるのは一回で良い、体が覚えてしまうらしい、後はそれに合わせて体を何回動かすか、それによって多少の個人差はでる、三人も最初技を覚えたからと、いくつもを練習し筋肉痛で苦しんでいた

珍しく全員が稽古で顔を合わせたので、一緒に外食に行こうという事になった、時間は八時を回っている、わきを暴走族が爆音を立てて通り過ぎ、赤信号で止まってもまだ爆音を立てている

「うるさいなあ、馬鹿どもが」

白下さんがぼやき、松沢さんが

「全く、なんとかならないものですかねえ」

相槌を打っている、いつぞや、白下と知り合った時もこんな場面だった

「白下さん、思い出しますね、あの時も、こういう馬鹿たちがいて」

「そうですね、考えてみたら、あの時私が声を掛けて」

そんな話をしながら、近くの公園のわきを通り抜けようとしたとき

「おい、気に入らないような顔していたが、何か文句があるか」

以前あった事の通りに、事が展開していく、白下さんと顔を見合わせ笑ってしまった

「何がおかしい、てめえ達、俺たちを馬鹿にしているのか」

三人の男のうちの一人が、脅しをかけてくる、如月が

「少なくも利口じゃないよ、お前らは」

「何い、ちょっとこっちに来い」

公園に入って行く男たちの後を、全員で付いていく

「てめえら、でかい面して、きっちりけじめをつけてやる」

広場になったところに、三十人程の若者が待っていた

「それで、どうするんだ」

如月が言うと

「謝れよ、謝ったら許してやる」

「何を謝るんだ、馬鹿に馬鹿と言っただけじゃないか」

「何ぉ、痛い目にあいたいか」

「痛いのは嫌だね、それよりお前らは痛いの大丈夫か」

「くっそー、貴様ら」

七人が全員怖がってもいない、それが不気味なのだろう、仕掛けては来ない

「殴り合いは止めた方が良いぞ、痛い目を見るのはお前らだからな」

リーダー格らしい男が

「七人で、三十人にかなうのか」

「やってみればいいだろう、俺たちは全員ではやらんよ、お前ら程度女性二人だけで十分だ」

俺がそう言うと、佳代子と由利子さんが前に出る

「いらっしゃい、手加減はしないわよ」

佳代子が来い来いと手招きする

「くっそう、馬鹿にしやがって」

それでも女と思って加減しているのか、一人ずつが掛かって来たが、一瞬で終わった、男二人は地面に転がっていた、残った男たちは唖然としている

「どうする、数が居れば勝てると思っているようだが、俺たち男はもっと強いぞ」

「分かった、分かったよ、このくらいで止めておく」

「お前たちを叩きのめしたくて、我慢しているんだが」

「悪かった、勘弁してくれ」

「分かれば良いんだ、今後あんな騒ぎをしたら、こっちから行くぞ」

「分かりました、もうしません」

ぞろぞろと去って行った、修羅場の場数は踏んでいないようだ

「腕試しが出来ると思ったが、これで良いんだよね」

塚田さんが言う

「ええー、塚田さん、そんなに自信付いたの」

「まあ、一般人なら負けないでしょう、竜崎さんと行動すれば、いつ危ない目に合うか分からない、これからも稽古お願いしますよ」

「ええ、まあ、良いですけど」

意気込みの凄さに驚いてしまう

「由利子さん、大丈夫でした」

俺が訊ねると

「ええ、大丈夫です、私って強いんですね」

「そうだよ、多少武道の心得がある一般人男性では、歯が立たないくらい強いんだよ」

「そうなんだ」

そう言ってにやにやしている、塚田さんが

「本当、凄いですね、私たちも頑張らなくては」


食事を済ませて、マンションに戻るとホールに、先程の暴走族のリーダー格らしい三人の男が待っていた、俺たちの前に来て突然土下座して

「弟子にしてください、どなたが先生かわかりませんが、弟子にしてください」

塚田さんが俺の顔をみる、こういう事は塚田さんに投げてしまえば安全だ

「俺たちのリーダーはこの人だ」

塚田さんを指さす

「ちょっと、竜崎さん」

「面倒事は塚田さんに任せます」

そう言って手を合わせると

「まったく、しょうがないですね」

そう言って若者たちに向かうと

「突然そんな事を言われても、うちは武芸を教える会社じゃないから、無理ですよ」

「いや、そんな事はないでしょう、三十人に囲まれて、七人全員誰一人、恐れている人がいなかった、こんな事はある得ません」

土下座したまま見上げて言う

「とにかく立ちたまえ」

若者たちを立たせると、ホールの端にあるテーブルに三人を連れて行く、塚田さんと俺で話を聞く事にして、他の五人は部屋に戻った

「武道を習って強くなって、どうするの」

塚田さんにそう言われて、事の事情を話し始めた、三人だけでなく、三十人いた全員が、あるヤクザに目を付けられ、縁を切れないという、そのヤクザは空手の高段者で、逆らったら半殺しの目にあわされるのだ、三十人のうち一人が抜けようとしても、連帯責任で全員が仕置きされるという、上納金と称して、毎月金を納めるため、今回俺たちにしたような事も、やらなければならない、益々警察には言えない状態になって行く、だから、そのヤクザに対抗できるようになれば抜けられる、そんな内容だった

「分かりました」

そう言って俺の顔を見る、俺が

「どうしたもんでしょう」

聞くと

「竜崎さんなら黙っていられませんよね」

「ええ、まあ、それは」

「弟子云々の前に、懲らしめますか」

塚田さんと顔を見合わせ、そんな事を言っていると

「おい、坂崎、こんなところで何してる」

いかにもヤクザ風の男が入って来た、向こうからやって来たのだ

「いけねえ、まずい、見張られていたか」

そう呟いた後

「ちょっとした知り合いですよ」

「堅気に迷惑かけるんじゃねえぞ、若いものが何か迷惑かけてませんか」

偉そうにそんなこと言う男に腹が立った

「迷惑なのはあんたが来た事だ、此処はヤクザお断り。出て行ったくれ」

男の顔色が変わった

「何だとう、てめえ、俺を誰だと思ってる」

「それ以上言うと逮捕されるぞ、ヤクザと名乗った時点で逮捕だからな」

「うるせえ、生意気なガキが、痛い目を見せてやる」

「塚田さん、腕試ししてみます」

「そうですね」

言って前に出る

「年寄りが相手で申し訳ないが、いらっしゃい」

手招きする

「くっそう、馬鹿にしやがって」

とびかかって来た、空手の高段者だけあって、流石の動きだ、だが塚田さんも得ていない、正拳好き、蹴り、掴んでくるのも躱し、年の割に見事な動きだ

「ほら、頑張れ、当たらないぞ」

塚田さんは余裕だ

「くっそう、ちょろちょろと」

躱しざまに腹に一発、ヤクザは腹を押さえて蹲ってしまった

「どうした、もうおわりかな」

「くっそう」

恨みがましい目を向けた途端、出口に向かって逃げ出した

「待て、まだこっちが話すことがある」

俺が襟首を捕まえて引き戻す

「良く聞けよ、今後、彼ら三十人の内一人でも、お前らに何かされたら、お前の組をぶっ潰すからな、分かったか、来てくれて助かったよ、こっちから話に行こうと思っていたからな」

返事をしない、簡単に返事をしないとは思っていたが

「教えておくが、お前の相手をした人は、うちで一番弱い人なんだ、返事をしないのなら、これから俺たち全員で、お前の組を潰しに行こうか」

「分かった、一切手は出さない、それで良いだろう」

「分かれば帰っていい」

男はそれでも肩を怒らし、精一杯の虚勢を張って帰って行った

「ありがとうございました」

三人が深く頭を下げている、そして、恐る恐る

「あのー、この人が一番弱いって、本当ですか」

塚田さんが苦笑いして

「本当の話です、私が七人の中では残念ながら、一番弱いのです」

「凄い、唐島の奴を手玉に取る人が、一番弱いなんて、すげえ」

興奮している

「塚田さん、どうしたらいいと思います」

「口外しないようにして、教えるしかないんでは、彼らもいつ仕返しされるか、おどおどして暮らすのは、可哀そうでしょう」

「分かりました、道場は使っていですよね」

「他ではできないでしょう、秘密がばれます」

三人に

「分かった、全員弟子にしてやろう、教わった事、何処で教わったか、絶対に秘密にする、そう全員が約束するならの話だけどね」

「そんな事、絶対守ります、あいつらと縁を切れるのに、そんな約束で良いなんて、死んでも守ります」

「おいおい、死んだら困るよ、それじゃあ、明日全員連れて此処に来なさい」

「分かりました、ありがとうございます」

嬉しそうに帰って行った

お読みいただきましてありがとうございました

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