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 1白い手袋  作者: ベン マウント
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出会い

一日中クリスマスソングが聞こえる、これが一か月以上続いている、今日がその最後の日だ、つまり、クリスマス、街は賑わっている、何が楽しいのか、子供のころは楽しいと思った事が、大人になると感じない、いや、まだ十八の俺は大人なのか、最近選挙権とかいう物の、対象になったらしいが、そんなことを考えながら、バイト先のスーパーから、家に向かって歩いていた、道脇に蹲る老人が目に入った、通行人は目をやる人はいるが、知らん顔して通り過ぎていく、ホームレスには見えないが、服装が変わっている、お遍路さんのような感じだ、此処は四国じゃないし、変なおじさんだが気になった

「どうしたの、どこか具合悪いの、救急車呼ぼうか」

声をかけてみる

「ああ、ありがとう、大丈夫、親切な子だね」

やっぱり俺はまだ子供のうちなんだ、そんな事を思いながら、俺も屈んで老人の様子を見る、よく見ると俺でもわかるほど品のいい顔をしている、この世の者ではないような、神々しい感じがした、ジッと顔に見入ってしまった。そうしている間も、傍を通行人が何人も通り過ぎていく、この人たちは俺や老人が目に入らないのか、一瞥すらしないで通り過ぎていく、老人の口が動いた、天の声のように心地良い声だ

「心配をかけたね、こんなもので悪いが、心配してくれたお礼だ」

そう言って、懐から白い手袋出すと、俺にいぇ渡してくれた、何の変哲もないただの手袋だ、タクシーの運転手が良く使っている気がする、訳が分からないが

「ありがとう」

そう言って受け取った、どう見ても百斤で売っていそうな、ただの白い手袋だが、いらないとは言えなかった、有り難く頂く事にしよう、手袋から老人に目を戻す

「あれっ」

老人が消えていた、いないのだ、辺りを見回してもどこにもいない、どういう事なのか、俺は先程まで亡霊と話していたのか、でも、手には手袋がある

「わー」

思わず小さく声が出た、悲鳴ともいう、何だか手袋が怖いものに見えた、捨ててしまおうかとも思っただ、何故かそれはいけない事のような気がして、何、この優柔不断な俺、何となく気恥ずかしくなり、立ち上がると

「よしっ」

気合を入れて、家に向かって歩きだす、こんなに大勢通行人がいたのに、あの老人に気が付いたのは俺だけだったのか、改めて手袋を眺める、どう見てもただの手袋、普段から親父が良く言う

「人の好意は無駄にするな」

深く意味は分からないが、おじいさんが好意でくれたんだ

「ありがたく貰っておこう」

尻ポケットにしまった、だが思い返してみても変だった、確かに老人はいた、口もきいた、でも一瞬でいなくなった、そして、手袋をくれた、なんだったんだろう

「まあいいや、気にしない、気にしない」

俺は生来細かい事は気にしない性格だ、家路をを急ぐ事にする、両親がケーキくらいは用意してあるだろう、さえない青春を送る俺だが、ごく普通で平和に暮らせている親に感謝だ、そんな事を思いながら、老人の事は忘れ去る事にして、足を速める、その時

「止めてー、助けてー」

かすかだが悲鳴が聞こえたような気がする、家に帰る通りは工場街を通る、今は正月休みでどの工場にも人はない、そんな場所のしかも廃工場の裏から聞こえた、工場の裏手に回り、そっと忍び寄り覗くと、三人の男たちが一人の女性を抱きかかえていた、乱暴しようというのだろう、助けなければ、当たりを見回し何か得物を探す、都合よく近くに一メートルほどの、鉄パイプが転がっている、十二月の暮寒さが身に染みる、鉄パイプがいかにも冷たそうに見えた、

「そうだ、丁度いい」

先程貰った手袋をはめた、鉄パイプを持つと

「止めろ、お前ら」

大声で突っ込んでいった、男たちは知らん顔で俺の事は無視だ

「おとなしくしろ」

「痛い目にあいたいか」

脅している

「やめろ」

言ってもまだ無視だ、男たちの一人の頭を、鉄パイプでかるく殴打する

「いてえ~]

男は頭を押さえて倒れた

「どうした、お前、大丈夫か」

まだ俺の事が見えないのか、かまわず他の男たちの頭も軽く殴打する

「痛い、なんだ、誰かいるのか、畜生、出てこい」

もう一度ずつ、今度は尻を殴ってやる、俺が見えていないらしい、大変な現象が起きているのだが、この時は夢中で気が付かなかった

「おい、何かいる、やばいぞ、逃げろ」

男たちは逃げて行ってしまった、女性だけになったところで、我に返る、夢中でやっていたが、奴等、俺が見えなかったのか、俺は透明人間か、どうなっているんだ

「まあいいか、兎に角助ける事が出来た」

ほっとして鉄パイプを地面に置くと、手袋を取り

「大丈夫ですか」

声を掛けると

「ひっ」

飛び上がって驚いている

「えっ、誰、貴方が助けてくれたんですか」

「ええ、まあ、一応そうなるかな、奴らを追い払ったから」

「どこから来たの」

「さっきからここで、奴らを鉄パイプで叩いていたけど」

「ええー、誰もいなかったのに、あいつらが悲鳴を上げて、逃げて行ったんだけど」

「おかしいな、俺、透明人間じゃないよ、見えてるよね」

「ええ、見えてる」

「奴等に変な事されそうで、貴方が可笑しくなっていたんじゃないの」

『そうかなあ、まあ良いか、助かったんだ、それより、ありがとうございました、助けていただいて、私、高階佳代子と言います、十七歳、あなたは」

「俺、竜崎慎也、十八」

「三年生、卒業ね」

「うん、まあ、でも良かったね無事で、家は近くなの、送ろうか」

「ええ、そうしてもらえると、助かるけど、良いの」

「家に帰っても、どうせ両親だけだし、いいよ」

「ねえ、だったら、これから街に出ない、私も家に帰っても親たちだけで、つまんないし」

咄嗟に考える、初対面だけど可愛いから、付き合ちゃうか、バイト料貰ったばかりだし

「良いよ、俺で良かったら付き合う」

改めて佳代子を見ると、凄くかわいい、俺のタイプ、サンタさん、クリスマスのプレゼントにしては、出来過ぎじゃん

自然な感じで腕を組んで来る佳代子に

「どこに行こう」

聞くと

「夕食は済んだの」

と聞かれ

「まだ」

とこたえると

「じゃあ、まず食事しましょう」

佳代子に引っ張られてファミレスに入った、流石にクリスマスイブ、混んではいたが、なんとか席は取れた向かい合って席に座る、コールボタンを押したとき、急に尿意をも要してきた

「ちょっと、トイレ」

「何にするの」

と聞かれ

「俺、好き嫌いないから、同じもので良いよ」

そう言いおいてトイレに駆け込む、すっきりしたあと手を洗い、ハンカチを出そうとして、手袋を引き出してしまった、そして、何か違い気がした変なのだ、地面に転がるあの泥だらけの、鉄パイプを握ったのに、汚れが見当たらない、新品のように真っ白だ、泥だらけになっているはずなのに、あの時俺の姿が見えなかったと言うのはと言う本当なのか、という事はこの手袋をしていたからか、どういうことだ訳が分からない

「きゃー」

「逃げろ」

「静かにしろ」

バーン、悲鳴と銃声、また事件かよ、何故か慌てる気にならなかった

「おいおい、今夜はどんな日だ」

この手袋の起した事を確かめてみよう、迷わず手袋をはめると店内に戻る。男が拳銃をテーブルの客に向けていた、ずかずかと男に近寄る、そっとではない、堂々と近づいて行ったが、男は俺の存在を意識していない、目の前で手を振ってみる、無反応、これで予想は確定した、俺の姿、いや、存在が分からないのだ、暴発してけが人が出てはまずいので、男の指が引き金から外れるのを待つ、なかなか外さない、こうなればしょうがない、拳銃の筒先を下に向けるようにして、男の拳銃をもぎ取る、突然の事に男は動転している、拳銃を床に投げる、男が落としたように見えただろう、延髄に手刀をくらわす、男が倒れた、見ていた男たちが寄ってたかって、男を取り押さえた、それを確認してトイレに戻り、幸い誰もいなかったので、手袋を外してテーブルに戻る、佳代子が、ニヤリとしながら

「またやったわね」

そう言った

「なにを」

「惚けちゃって、分かってるんだから」

「さあ、何の事かわからない事が、騒がしいけど、何かあったの」

とぼけ通すしかない

「まあ、良いわ、あり得ない話だもんね、やっぱりさっき見えなかった、私が可笑しかったからじゃないんだ、人に話しても信じてもらえないだろうし」

「すみません、遅くなりました、大変お待たせ致しました」

そんな時料理が来た

「何だか知らないが、早く食べようぜ」

「白状しないのね」

「だから、何の話なの」

「分かった、もう良いや」

食事が終わり、ゲームセンター、適当な店をぶらついた、可愛い彼女とクリスマス、思ってもいない楽しいクリスマスになった、不思議な白い手袋の事等、忘れるくらい楽しい、やっぱり俺はまだ子供なんだ、あらためて実感した夜でもあった、佳代子を家まで送り家に帰った、両親はすでに寝ていたので、風呂に入りベットに入る、静かな部屋の中で寝ていると、今夜の事が今頃になってよみがえり、興奮して眠れなくなった、俺は凄い力を手に入れてしまった、あの老人は誰だったんだろう、何故俺だったんだろう、分からない事ばかりだ、考えても答えが出るわけがない、そんなことを繰り返し考えているうちに、いつの間にか眠っていた、夢を見た、あの老人が出て来た

「青の手袋の力、分かったかな、まだまだごく一部だが、使えたようじゃな、必要に応じて覚えていくと良い、お前のお守りだから、上手に使いなさい」

目が覚めてもはっきり覚えていた、何なのだろう考えるのは止めた

翌朝の朝刊は、ファミレスの事件が一面に出ていた、奇跡のような出来事を、大勢の人が見ていたのだ、その後犯人は病院に送られ、精密検査を受けたが、何処にも異常はなかったそうだ、首の後ろに殴打された跡があったが、本人はいつつけられたか、覚えがないとかいてあった、大勢に取り押さえられた時だろうという事になったらしい、その朝佳代子から電話があった

「どんな気持ち、私だけはしっているんだから」

「だから、言っている意味が分からない、お前の方こそ頭大丈夫か」

「あくまでとぼけるんだ、人には言わないから、私にだけは白状した方が、気が楽になるわよ、その気になったら、いつでも聞いてあげるから」

そう言って電話は切れた

お読みいただきありがとうございました

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