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トーストハプニング  作者: 谷村碧理
apple 落し物から始まる異能バトル⁈
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魅せかけの立者(裏

 

 活明高校特別教室棟。そこには様々は教室が並んでいるが、その多くは部室として使われている。それは授業が終わった直後、まだ誰もいない静かな廊下での出来事だった。一人の少年が無言で歩いていた。少年が履いている上靴からは規則正しいリズムが生み出されていた。


 そしてしばらくするとそのリズムは止まった。廊下は再び静かになった。少年の前のドア。目の前の部屋こそ目的地、第II理科室だ。少年は、


「さすがにまだ来てなさそうですね。できればこの報告は早めに終わらせたいのですけど」


 と小さく呟いた。それから今度は誰かに話しかけるような大きさの声で、


「それでどうしてぼくを付けているのですか? さっきからずっと気になっていたんですけど」


 と言った。しかし廊下には他の生徒の姿は見当たらず。その声に反応する者はなかった。少年はもう一度誰もいない場所で喋る。


「ぼくの()()()()()()()にいるのは分かってますよ。それと授業が終わってから二分後から後ろにいるのも気付いています。そのまま黙ってやり過ごそうとしても……」


 少年が後ろを向き、何もない空間に足を勢いよく振った。


「……無駄ですよ」


 すると「イッタ……」という声とともに少年が言った通り一メートル先に少女が現れた。


「一体何してくれてるの? 先輩なんだけど私」


「新手のストーカーだと思いました」


 相手の文句を流しつつ少年は言った。


「それで用件はなんですか? 今そんなに時間がないんですよ。出来れば明日にしてほしいのですが、すぐに済むなら今でも構いませんけど」


 少女は先程蹴られた箇所をさすりながら答えた。


「君の方の用事は大丈夫なの?」


「全然。ここに来たのはついでですし、今日の本当の用事はこれからですよ」


 少しの間があった後、少女が言った。


「それじゃあ今言う。君が今日の二時間目が終わった後に話していた女の子がいたでしょ? その女の子について教えて……」


「その人はぼくの中学校の時からの同級生です。それがどうかしましたか?」


「そっちじゃない。もう一人の方。落し物を探してるっていう……」


「同じクラスの人です。今日初めて喋りました。でもどうしてそんな事を知っているのですか? 学年違いますよね?」


 少年は少女が言い切る前に答えた。そして少女は少し間を置いてからこう言った。


「それは風の噂で聞いたの」


「知ってますか? 『風の噂』って言うのは元は『風の便り』っていう言葉みたいですよ」


 あっさりと突っ込まれた。少女はさっきのセリフを無かった事にして次の言葉を続けた。


「私も協力してあげる。ほら、三人揃えば…………もんじゃの知恵っていうしね」


「言いませんよ。どんな知恵ですか、それ」


 少女は一瞬顔を強張らせてからさっきのことは無かった事にした。


「それでさ、お願いがあるのだけど……私に協力してくれない?」


「結構です」


「もちろんそっちの方も手伝ってあげる。ウワァンウワァンの関係」


「それでもお断りです。それと、どうして犬になるんですか? 」


 少女は鞄を置き少年にゆっくりと近づいていく。


「こういう時は甘えてもいいの。せっかく協力してあげるって言ってるんだから」


 そして少年まであと数十メートルのところでその姿は消えた。


「……それとも、私に関わると何か行けない事でもあるの?」


 この言葉が発せらせたとき、少女は少年の真後ろにいた。少年はそのままの向きでため息をついた。


「……全然すぐに終わらないじゃないですが」


 そして少女は言う。


「君がさっさと頷かないからだよ。すぐにオッケーしてくれたらこんな事にはならなかったけどね」



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「……そうですか、わかりました」


「帰り気をつけてね」


「ありがとうございます。失礼しました」


 わたしはできる限り音を立てないようにドアを閉める。それでもガラガラと音は鳴る。最後にトンと音がしてドアが全部閉まると、わたしは思わず深呼吸見たいに大きなため息をついた。そして少し遅れて、


「ドキドキした……」


 とつぶやいた。


 わたしは放課後さっそく職員室に行った。落し物が届いているか確認するためだ。でも行ったはいいものの、ドアの前に立った瞬間、心臓の音が速く、大きくなった。一歩下がって深呼吸をして一歩出てドキドキしてまた一歩下がって……を多分三十回はしたかな。それでやっとドアをノックした。(ドアをノックする前、だれも通らなくて本当に良かった)


 そんな困難を乗り越えた結果、職員室にはなかったということがわかった。ちなみにペンダントのことは言わずに写真がはってあるメモ帳(でも書くことがないから日記を書いている)のことだけを聞いた。



 まだチャンスがある。そう思いながらわたしはろう下を早足で移動した。走ったら怒られるかもしれないし。


 そう意気込んで校門前に行ったはいいものの、下校している人は数人しかいなかった。そしてわたしはあるものを見つけてしまった。これはスルーした方がいいのかな? と一瞬思ってしまったけど、それはそれで可愛そうな気がしたからわたしはそっと近づいた。

 そして下校する人が途切れたタイミングで一気にそばまで行った。そして声をかけた。


「…………何してるの?」


「何って? 張り込みに決まってるでしょ!」


 そこにいたのはアンパンと牛乳を持っているミソイチちゃんだった。昼休みが始まってすぐにダッシュしてどこかに行っていたのはそのためだったみたい。



「その……わざわざ付き合わせちゃってごめん」


 それから数分。何人かの生徒が校門を通るぐらいで朝会った人も聖くんもくる気配がない。わたしの口から不意に言葉が漏れた。もしかしたらミソイチちゃんも何かやりたいことがあったと思うのに。


「全然大丈夫だって! だってアタシ達のコースって部活出来ないから結局ヒマじゃん。あとその落し物とかも気になるし」


 ミソイチちゃんはそう言ってくれた。けれどわたしにはその言葉が嘘なのか本当なのかが分からなかった。


「それにさ、こうして張り込みとかしてみたかったんだよね〜。これ逃したら二度と出来ないよ。こんな事」


 そう言いながらミソイチちゃんはアンパンのふくろを開けた。


「でもさ、こんな事が出来る時間って一瞬だよ。今しか出来ない事は絶対に今しとかなきゃダメでしょ。……はい、一口」


 何気ない一言だったけど、わたしはその言葉ともらったアンパンの味が強く印象に残った。


前半はシリアスなバトルシーン……にはなりませんでした。後半はちょっとしたワンシーン。それにしてももんじゃの知恵ってどんな知恵なんだろう……

次回の裏は張り込みの続きです。

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