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トーストハプニング  作者: 谷村碧理
apple 落し物から始まる異能バトル⁈
8/28

見せかけの建物(表

 

 そんな訳で放課後。僕は図書室へと向かった。だけど重大な問題があった。入り口がどこにあるかが分からないのだ。


 目の前の壁はガラス張りになっていて、その向こう側には本棚の迷路が広がっていた。しかしドアらしきものがどこにも存在しない。確か校舎の案内の時も先生がここで図書室の説明をしていた気がする。


 ちなみに中には人がいない。階段も見えない。それどころか少し薄暗い。図書室ではなく書庫と言った方がしっくりくる。このガラスの先には本当に相談役の先輩がいるのだろうか?


 そう考えながらウロウロすること十分強。結果、見つからなかった。まさか図書室の入り口でここまで苦労するとは思わなかった。もうそろそろ諦めようとした時、


「大丈夫? もしかして新入生かい?」


 と誰かに声をかけられた。もしかしてウロウロしていたのを見られていたかもしれない。それが恥ずかしくて僕は焦って言い訳を考えた。「えーっと、えーっと」と何度も言いながら慌てふためいているのを察したのか、


「もしかして図書室の入口を探しているのかい?」


 と聞いてきた。僕は頷いた。けれどどうして分かったのだろう? ふと疑問に思った。


「結構いるんだよ、図書室の入口が分からなくてウロウロしている一年生。何てったってこの学校の春の代名詞の一つと言われてるぐらいだからね。あと去年ボクもそうだったから」


 過去のことを思い出しながらその人は小さく笑った。ということは二年生なのか。


「ついてきて、こっちこっち」


 その人は僕に向かって手招きをした。僕は思わず聞いてしまった。


「いいんですか?」


「うん。ボクもこれから行くところだから、せっかくだし一緒に行こ!」


 もしかてこの人も例の先輩のところに相談に行くのだろうか。そんなことを考えながら先輩の後を追ってろう下を歩く。もう部活に行ってるのか教室の中に残って喋ってたらするのか、この辺りには人がいない。


 気がつけばそこは階段だった。全くもって見当違いの場所だった。先輩が登っていくのを見て僕もそれに続く。


「そういえば」


 先輩が突然口を開く。


「もしかしてキミ、宮津先輩に相談に行くために図書室を探してたの?」


「名前は分かりませんが、ちょっとした相談に乗ってくれる三年生の先輩がいるって聞いたんですけど……」


「そうそう、それが宮津先輩だよ。しっかりと話を聞いていろんな視点から的確なアドバイスを出してくれるから密かに人気なんだ。ここだけの話。最近ファンクラブが出来たみたい。顔もまあまあ美人だからね。ちなみに会員数は男女合わせて約五十人ちょっと。そっかぁ〜、もう一年生にもその話が回っていたのかぁ〜」


「先輩も相談してもらったことがあるんですか?」


 思い切って聞いてみた。


「もちろん、実際そばで見ているけどかなりすごいんだよ」


「いつも見ている……」


 僕は先輩の言葉の一部を呟いた。そしたら、


「あぁ別にそんな変は意味じゃないよ。アレだよアレ、図書室の当番が一緒だからだよ」


 と先輩が若干顔を赤くして弁解した。この人もしかして先輩のことが好きなのか? と思ってる僕の横で、


「だからかなぁ、ボクやたらとファンクラブの上の方の人に尋問されるんだ。拷問される日も近いかもしれないな〜」


 遠い目をしてそんなことを言っていた。僕は心の中でそっと先輩にエールを送った。



「それで……その……宮津先輩ってどんな感じの人なんですか?」


 ずっと遠い目をしている先輩と歩いているのも嫌だったのでとりあえず話題を振ってみた。先輩は一切悩まずにこう答えた。


「一言で言うなら“本当に本が大好きな人”かな。本だったらどんな種類のものも読むんじゃないかな。あとはスゴ腕の図書委員とか名物図書委員とかって呼ばれてるよ。小学校の時からずっと図書委員をやってるらしいよ。しかもその上をいくであろう妹さんがいるとかいないとか」


「……すごい人なんですね」


 想像していたよりもすごそうな人のようだ。どこから驚いていいのか分からずザックリとしたリアクションになってしまった。


「まぁでも成績が悪くて先生に呼び出されたりして委員会に支障が出るのはやめてほしいな」


 先輩はそう言って苦笑いをした。本当に大変そうだなと思った。



 歩きながらそんなことを話していると、突然先輩が足を止めた。慌てて僕も足を止める。僕達がいたのは普通教室が並んでいるエリアだった。教室の中では会話をしている三年生の姿があった。先輩はそっちに背を向けて、反対側の壁にある無機質な感じで物置のようなドアを見た。そして短く言った。


「ココだよ」


「…………………………………………??」


 僕は無言で首をかしげた。


「まぁそうなるよね。看板ぐらいあった方がいいと思うんだけどって司書の先生に言ってるんだけどいっつも『ダメ』って言われるのがオチなんだよね」


 そんなことを言いながら先輩はそのドアを開けた。僕はとにかく驚いた。そのドアの外見からは一切予想がつかない景色が広がっていた。小学校や中学校の図書室というよりも市立図書館の雰囲気に近い図書室だった。一階にあったあれとは一切違う、別世界のようだった。


「ああ、ちなみにだけど、一階は実は書庫なんだ。普段は誰も入らないよ」


 図書室の中には下に降りる階段と上に登る階段の両方があった。どうやら上の階もあるらしい。


「二階と三階が一般の本。漫画とかライトノベルとかもたくさんあるよ。四階は自習ルーム。参考書やコピー機が置いてあるよ。そっちにも入口があるから一年生はそっちの方が近いかも」


「……初めて聞いたんですけど」


「それは多分先生が飛ばしたんじゃないかな。自習ルームの方のドアもあんな感じだし」


 せめて自習ルームだけは看板つけようよ、と思った。


「それで先輩はカウンターにいると思うから……こっちこっち」


 僕は先輩について行く。少しするとカウンターが見えた。なんとパソコンが置いてある。さすがは私立高校。図書室の設備は市立図書館並だ。


 しかし、カウンターの中には人の気配が一切無かった。おそらくまだ来ていないのだろう。でも先輩は、


「え、まだ来てないの。いつもならボクが来たときにはいつもここにいるのになぁ。まさかアレとかないよね」


 さすがは本好きと言われるだけあるのか、来るのは早いらしい。先輩がカウンター周辺をウロウロしているのを見る。次にカウンターの何も置かれていないスペースに目を移すと一枚のメモが置いてあった。

果たしてそのメモには一体何が……

次回(表)も図書室での話です。

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