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トーストハプニング  作者: 谷村碧理
apple 落し物から始まる異能バトル⁈
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休み時間の考察結果(表

 

 結局落し物のことで授業に集中がしきれないまま二時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。僕と勇は先程の話を再開した。開始そうそう勇が口を開く。


「ここの学校の一年の女子って条件だけじゃ探すのは不可能だと思うぜ」


「頑張ったら見つかりそうだけど……」


 違う学校ならまだしも同じ学校で不可能ということはないだろう。勇のセリフを疑問に感じた。勇が続けて説明する。


「お前この学年にいくつクラスがあるのか分かってんのか?」


「…………十二クラス」


「そうだ。ただでさえこの学校は馬鹿みたいにクラスの数が多い。それに加えて他のコースとは殆ど関わりがない」


 確かこの学校には全部で五つのコースがあったはずだ。今僕達がいる総合学習コースと、あとは文系専攻コース、理系専攻コース、文理学習コース、そして特別進学コースだ。


 これはちょっと前に勇が言っていたのだが、それぞれのコースは一学年二クラスだけど総合学習コースだけ四クラスあるそうだ。


「でも他のコースの奴らと関わるなら部活ぐらいか……そういやお前部活どうすんの?」


「もちろん帰宅部だけど? そういう勇はどうなのさ? やっぱり新聞部?」


「放送部だけど」


「意外だな。理由は?」


「昼休みの放送で『生徒の声』っていうコーナーがあるんだけど、あれって結構お蔵入りが多いらしいんだよ。部員ならそれ全部見れるし」


 とても勇らしい理由だった。ちなみに新聞部は適当に言ってみただけで、実際にこの学校に存在しているのかは知らない。勇が続けていう。


「でも他に何か手掛かりがあったらもっと絞れると思うぜ」


 僕は今朝の会話を思い出す。そして手掛かりになりそうなものを見つける。


「そういえば家から二時間かけて登校しているらしい」


 勇は少しだけ間を空けてからこう言った。


「残念だがそれで絞れるかどうかはかなり微妙だ」


「何でだよ?」


 ほぼ反射的に理由を聞いた。勇は「えーっと」と呟いてから説明をし始めた。


「まずこの学校への移動手段は基本的には二つ。バスか電車だ。お前みたいな変わり者を除いてな」


「変わり者なのは勇の方だと思う」


 僕は最初に勇と喋ったときのことを思い出す。ちゃんと名前を言って自己紹介をしたらすぐさま「よろしくな、ひかりぐすく」と名前を言い間違えた。正しくは光城みつきなのに。


 僕の一言はなかったことにされて話は続く。


「バスで登校するにしてもせいぜい三十分、それより遠ければ電車を使う。それにこの学校の近くには電車の駅がある。そして学校の周辺にはバスは走ってない。だから電車で来る奴らは駅を降りたらそのまま歩いて来ることが多い」


「ということは、彼女は電車通学なのか」


「そうだ。家から駅までの距離も考えて、学校の最寄り駅から一時間半から二時間ほど掛かるとすると、その殆どが県外から来ていることになる」


 県外から来ているというのはそれなりの手掛かりになりそうだけど……と思っていると勇が続けてこう言う。


「因みに県外から来ている奴の割合は全体の二、三割強だ」


「具体的な数は?」


「そうだな……少なくともこの学年だけで六十から七十人はいるんじゃないか?」


 勇のいうとうり大きな手掛かりにはならなかった。今朝の会話をもう一度思い出す。するともう一つ手掛かりになりそうな発言を見つけた。


「あとは学費免除を取っているって言ってた。手掛かりになりそう?」


 僕はそもそも私立自体に興味がなかったので学費免除の仕組みも知らない。でも、もしかしたらそれで何か分かるかもしれない。僕は希望にに満ちた目で勇を見た。そして返ってきたのは、


「それだけで分かることは、総合学習コース以外のコースの奴っていうことぐらいだな」


 という言葉だった。僕は続けてこう言った。


「範囲広過ぎる」


「仕方ないだろ。兄弟姉妹のがないとしても、入試の点が良かったり部活動推薦とかで免除されるんだから」


 希望はあっさりと消えてしまった。僕のいるコース以外の人となるとヘタをするともう二度と会えないだろう。小さくため息をついた。


「ダメか…………はぁ……」


「ま、俺に分かるのはそのくらいだな」


「分からなかったことの方が多いけど」


 心の声がうっかり漏れてしまった。


「俺じゃなくても分かるのはこのへんのことぐらいまでしか分からねぇから。もっと詳しく知りたいなら染岡さんに相談してみたらどうだ?」


 勇は教室の端の方へ目線を移す。その先には一人の人がいる。染岡さんだ。本来ならば二年生であり、僕達の先輩にあたるはずだった。しかし去年の中頃、事故かなんかで意識不明だったらしい。そして留年することになった。


 それだからなのかもしれない。入学してから数日しか経っていなくてまだかっちりと制服を着ている人達の中で、パーカーを着ていてさらにはヘッドホンをつけている。その様子を一言で言うなら“浮いている”。当然だか誰も近寄ろうとしない。


 ついでに言うと目線が合ったときが睨まれているようで怖い。それと相手がいないということもあるけど、この人自己紹介以外で喋っているのを一度も見たことがない。なので自然と“怖い人”見たいなレッテルが貼られていった。


「学校の仕組みとかそういうのならまだしも、僕が一回しか会っていない新入生のことまでは知らないと思うけど」


 僕は睨まれないうちにそっと視線を戻し、勇にしか聞こえない声で喋った。勇はいつものトーンで喋る。


「でも、噂によると裏で情報屋とか探偵とかやってるらしいぜ」


 つまりは謎が多くてミステリアス。どうりで先生すら呼び捨てにしたりしなかったりする勇でさえさん付けしているのだ。


 そして今の二年生の人達は染岡さんのことをどう思っているのだろうかとふと疑問に思った。


「あとそういう系の相談ならこの学校の名物図書委員の先輩にしてみるのも良いと思うぜ。結構相談しに図書室に来ている人も多いらしいし」


 勇がそう言った。そんなに有名なら相談もしやすそうだ。僕はその情報の詳細を聞くことにした。


「学年と名前は?」


「学年は確か三年だった筈。名前は知らない。あ、でも今日が当番らしいぜ」


「ホントにすごいな。なんでそんなことまで知ってるの?」


「前にも言ったろ? 噂話と難読漢字は俺の得意分野だからな」


「ならばなぜ時々僕の名前を『ひかりぐすく』なんて言い間違えるのかな?」


「………………………………………………」


 僕がそう突っ込んで、その回答を待って数秒たったあと、本日二回目の休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。


 今日の放課後の予定は決まりだ。帰宅部であることも悪くない。



というわけで次からは放課後、いろんなキャラが出てきます。

バトルは……もうちょっとまってください。

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