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トーストハプニング  作者: 谷村碧理
apple 落し物から始まる異能バトル⁈
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当たらしい期札に(裏

今回は本編ではありません。読まなくても話は繋がるので時間のない方は飛ばしても大丈夫です。

 

 わたしはこれで良かったのだろうか? 最近ずっとこのことしか考えていないような気がする。


 わたしが高校生活の舞台として選んだのは知らない人しかいない遠い遠い学校。理由はいろいろ、たくさんある。


 さっき遅刻寸前だったところを助けてくれた人がいた。名前は、知らない。知っているのは同じ高校の同じ学年で、自転車で通っているというくらいだ。その人に「何でこの学校に行こうとしたの?」と聞いてきた。わたしはどう話そうか迷った。でも、嘘はつきたくなかった。結局理由はほんの一部しか話さなかった。それが正解なのかは分からない。


 そもそも初対面の人と会話をすること自体が久しぶりだった。極端な話、家族以外の人と会話をするのが数年ぶりになる。もっと小さい頃はみんなから「元気いっぱいだね」って言われていたけど今はそんな面影は全くない。


 体力はそこそこある。これだけは昔も今も変わらない。でも、今は役に立たない。宝の持ち腐れだ。


 変わらないことはあと二つある。それは、すぐに逃げ出してしまうこと、自分から行動できずにまわりに流されること。もしもこれらがどこかで変わっていたらわたしは絶対に別の、もっと家の近くの高校を選んでいたはずだ。これは断言できる。


 でもわたしはこのままが嫌だった。だから新しい場所で、今までとは違う生活を送りたかった。いつか、よくお母さんが懐かしく話していた思い出のように。


 でもただ場所を変えただけではなんの変化もなかった。なぜならわたしは何一つ変わってなかったからだ。どうにかできたのかもしれない。でもどこかで変わるのが嫌なわたしがいた。


 わたしはこれで良かったのだろうか? 正解は未だにわからない。もしかしたらそんなことを考えているのが間違いなのかもしれない。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 遅刻寸前の時間、わたしはいつものように教室に入る。中ではクラスメート達が喋っている。わたしが入ったからといってその声がやむことはない。みんな、何事もなかったかのように喋り続けている。


 荷物の整理を終えて席に座ったとき、ちょうどチャイムが鳴って先生が入ってきた。あっという間の時間だけど特に喋り相手のいないわたしにとってはちょうどいい時間だ。周りの人たちが名残りおしそうに席に着く。ろうかにいた人も教室に入ってきた。


 昔ならもっと積極的にいろんな人に話しかけていたけど、その勇気は気がついたらどこかへ消えてしまった。でもわたしはそれでもいいと思っている。仕方のないことだと思っている。



 一時間目が終わって本日一回目の休み時間に突入した。次の授業の準備を終えたわたしは自分の席に座っていた。


 やることがない。しかも休み時間はまだ半分もある。他の人はどうしているのだろう。そう思って教室を見渡した。


 喋っている人が大半だけど、携帯電話をいじっている人も多い。でもこれは参考にならない。そもそも学校では携帯の電源は切らなければいけないというのもあるけど、わたしには別の理由がある。


 わたしは現代の若者には珍しく携帯電話を持っていない。持つ必要性が感じられない。ゲームはいくらやっても操作方法が覚えられないし、調べ物は家のノートパソコンで十分。それにわたしはSNSがよくわからない。だからノートパソコンと固定電話で大丈夫と思っている。機会の操作自体が苦手というのもあるけど。


 あとは、かなりの少数派だったけど本を読んでいる人もいた。でもわたしは本が好きじゃない。十ページ読めればいいほうだ。


 結果、他の人の休み時間の過ごし方はなんの参考にもならないことがわかった。そしてまたどうしようかと悩むことになった。


 でもそんなこともつかの間、ある人が突然話しかけてきた。


「ヤッホー、はじめまして。一緒に喋らない?」


 当たり前だけど朝の人ではない。髪をポニーテールで結んでいるその子は確かクラスのいろんな人と喋っている子だ。


「あ、えっと……いいんですか? わたしで」


 会話慣れしてないせいもあって言葉はつまりまくり。でも、その子は、


「オーケーオーケー。だって今暇でしょ? なら喋るしかないっしょ!」


「はい、もちろんです!」


 わたしは思わず謎すぎる返事を返した。


「よし、決まり! じゃ、なんの話ししよっか」


 突然話題を振られて固まってしまった。その子をじっと見る。よく見たらスカートが短い。ふともものまんなかぐらいまでしかない。それによく見たら制服のデザインも違う。今わたしが着ている黒を基調としたものではなくて、高校のパンフレットで見た茶色いブレザーに青いスカートだ。今年から制服のデザイン変わったんだった。たしかお兄ちゃんやお姉ちゃんのお下がりなら旧型でもよかったらしいからお姉ちゃんがいるのかな? と質問しようとすると、


「ああこのスカート? 考え無しなねーちゃんが切りやがったんだよ〜勝手に加工してんじゃねーよってな」


「え……大丈夫なの⁈」


 思わず聞いてしまった。この質問はしてよかったのだろうか……と後悔しているうちにその子が答える。


「ねーちゃん曰く風の強い日はセーターを腰に巻けって言われたんだけどそのセーターはもうボロッボロでさ〜。しかももうこのタイプのセーターもう無いからさ〜あんまり参考になってないんだよね〜」


 ちなみに、その子はブレザーではなくベストを着ていた。スカートは短いけれど、制服はとても似合っていてかわいい。わたしからもなにか話さなきゃと思いそのことを言ってみることにした。


「でも、そっちの方がかわいいよ」


「でも制服にしては色合いが少し派手じゃない? アタシは今の方がいいと思うけど」


「どっちにしても中学のときよりかはマシだよね」


「あ〜確かにそれ分かる! あれはマジでやばかったわ〜。そっちはどんな感じだった?」


「そうだ、写真あるけど見る?」


「もっちろん!」


 初めて喋ったその子はとても明るくて、いろんな人と仲がいい。もしわたしが昔からのままだったら今頃その子みたいになっていたのかも、そう思った。こういった会話は久しぶりでとても緊張したけれどこれならやっていきそう。


 そんなことを考えながらわたしは中学のときの入学式の写真がはってあるメモ帳をとりにいく。とても大切な写真だからはっているのだ。たしかカバンの横のポケットに入れていたはずだ。けどなかった。カバンの中をあさる。そして制服のポケットも一つ一つ確認していく。でも見つからなかった。その子が声をかけてきた。


「大丈夫? 見つかった?」


「どうしよう……なくしちゃった」


 わたしはそう言った。

これからも本編ではない話も書いていくと思います。あ、表が本編です。

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