嘘ですか? 本当ですか?正直に話してください(表
ふと思ってしまった。今っていつ? 何月何日?何時? 何分? 何秒? 地球が何回回ったとき? まさかとは思うが一週間寝たきりとかじゃないよな。だったら相当やばいぞ。僕はベットから起きて部屋の中を見渡した。
見た限り点滴はしてないし、服も靴とブレザーが脱がされている以外は特に何も変わってないし、ベットの下にどちらも置いてあった。四月で長袖カッター一枚は少し寒いので、とりあえずブレザーを着た。それと、念のためポケットの中を確認。普段は何も入れてないので確認なんていちいちする必要もないが今回は別だ。赤の他人の持ち物が入ってるわけだし。
……別に落し物の存在も忘れているわけではない。カバンの中はカバンの中で色々とモノが入ってるから、何もないポケットの方が安全なのだ。それに今日は何も予定が無かったら、落し主探しをしようと思ってたし。
ポケットの中から出して本当にあるかどうかをちゃんと確認する。当たり前だが偽物ではなかった。まるで暗号のような漢字の羅列が書かれたメモ帳と、謎のペンダント。
「それにしてもなんかミステリアスな感じがするなぁ……このペンダント。もしかしてどっかの変身ヒーローの変身アイテムだったりとか……まあそれはないか」
思わず一人言が出てしまった。しかもなんかオタクっぽい感じのやつが。幸いこの部屋には僕しかいない。このままただの空気の振動として消えたら……
その時だった。僕が無意識に背を向けていたドアからガチャっという音がした。
「起きた? 怪我はしてない? ちょっと話があるんだけど時間大丈夫?」
僕は全速力でペンダントをポケットの中にしまった。ドアのところにいたのはOLという言葉が似合う、真っ黒な髪の毛を真っ直ぐ腰まで下ろしてタイトスカートのスーツでバッチリと決めた女性だった。僕はすぐさま後ろを振り返って苦笑いをしながら、
「…………あ、はい、大丈夫です(物理的には)」
と答えた。
…………本当は大丈夫じゃないです。(精神的には)
だってピンクのペンダントを持っているところを思いっきり見られたかもしれないんだよ! 絶対誤解が生じちゃってるって!
でも僕が「大丈夫です」といったのにはきちんとした理由がある。別に恥ずかしいシーンを見られたのをとっさに誤魔化そうとしている訳ではない。といっても、もしかしたらさっきのことを何か知っているんじゃないかという謎の期待なのだけど……。
だってあれ見たらなんか気にならない⁈ 色々と。だってもしかしたら昔何度も夢見ては想像したあの異能バトルだよ! 現実にあったらやって見たいよ! 僕にそんなのは向いてないかもしれないけど。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「最初に言っておくけど、あなたがポケットの中に入れていたものについては把握させてもらってるからね」
終わった……開始一秒で終わった……。確かに誰かが僕のブレザーを脱がせたということは、その時に気付いていたという可能性も無い訳では無いだろう。でもこんなすぐに言われたら……さっきがさっきだけに色んな意味でで凹む。しかも僕のイメージ的にこの人は純粋な恋愛とかは大好きだけど、現代の科学や技術を超えたアイテムや能力が飛び交うバトルモノは大嫌い、というイメージだ。念のために言っておくが、これはあくまで個人の感想です。
これまた僕の十八番の余談逃げのせいで忘れてしまったが、今僕と目の前の女性(仮にOL子さんとしておこう)は、さっきまで僕がいた部屋(仮眠室とドアの前に看板が貼ってあった)のすぐ隣にある謎空間のほぼ中心部にある無駄にでっかいテーブルを挟んで、座っていた。ちなみにイスの数がやたらと多い。このテーブルの周辺だけで約十六個はある。この部屋全体となるとこれの一.五倍はあるだろう。
「ポケットの中に入っていたものとは何のことでしょうか?」
僕はあえて知らないふりをしてOL子さんの様子を伺ってみた。もしかしたら勘違いということで見逃してくれるかもしれないと思って。しかしOL子さんの顔は最初に見たときから一切表情を変えない。完璧なポーカーフェイス。瞬き一つしない。
「何ってさっきあなたが手に持っていたペンダントのことよ。何嘘言ってるの?」
あまりにもアッサリと言われてしまった。やっぱりさっきの効果無し! しかも嘘って分かってたし! あれバリバリ見られてたし!
「あの、言っておきますけど僕、そんな痛い系の趣味じゃありませんから! まずそれ僕のじゃなくて学校の中で偶然拾った落し物ですから!」
この人には冗談は通じない。たった一回の事でそう悟った僕は全てを正直に話すことにした。嘘を一つもつく事なく。その結果、OL子さんの表情はというと……
「それは本当? まさか嘘だったりしないよね?」
「……はい」
やっぱり何一つ変わってなかった。あの顔ってもしかして最新型のお面なんじゃないか? と疑いそうなレベルで口以外一ミリも動かない。なんか段々怖くなってきた……。
「本当の本当に?」
OL子さんがそう聞いてくる。
「本当の本当です」
僕はこれ以上にない真面目な声で答える。
「本当の本当の本当に?」
「本当の本当の本当です」
「本当の本当の本当の本当に?」
「本当の本当の本当の本当です」
「本当の本当の本当の本当の本当に?」
「本当の本当の本当の本当の本当です」
「本当の本当の本当の本当の本当の本当に?」
「本当の本当の本当の本当の本当の本当です」
OL子さんは何回も繰り返して聞いてくる。これ後どのくらい続くんだろう……
「本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当に?」
「本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当です」
「本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当に?」
「本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当です」
「本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当に?」
「本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当です」
「本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当に?」
「本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当です」
「今あなたの方が『本当』が一個多かった」
「あ……」
なんだかんだで合わせてしまった。おかげさまで口が疲れた。もしもこの会話を文字に起こしたら、きっとゲシュタルト崩壊が発生するだろうな……。
「でも九回も確認したし、大丈夫なようね」
そんなにやってたんですか、このくだり。でもOL子さんは僕のことを信用してくれたようだ。こうして僕はなんとか無罪を勝ち取ることができた。これで無事帰れる。
「じゃあ、ここからが本題なんだけどいいかな?」
OL子さんはさっきよりも表情を柔らかくしてそう言った。
「え……本題って?」
あれ、そういえばなんかうやむやにしていたことがあったような……。そんな僕の頭の中がぐるぐるしているのを気にせず、OL子さんはこういった。
「実はね、君の件についてやっぱり信用してない子が何人かいるみたいで……こんな形で試しちゃってゴメンなさいね」
そして立ち上がって、隅に追いやられているイスの足元の方に転がっていた何かを拾い上げて、イスに戻りながらそれに向かって話し始めた。
「これで彼が嘘を付いてないって事は分かったよね。じゃあもう出てきて」
OL子さんはもう一度座り直してそれをテーブルの上に置いた。それは小さなカメラだった。多分監視カメラだろう。そしてドアさっき僕が出てきたところとは別のドアから、何人かの子供が出てきた。その中には染岡さんや、僕と同じ制服を着た人もいたし、私服の子もいた。
果たして僕はいつになったら帰れるのだろうか?
やっぱり説明まで行きませんでした……
「本当の本当の……」のくだりをやったのがいけなかったのでしょうか? 多分そうですね。
次回(表)はいよいよ待ちに待った説明回! 新キャラもたくさん出てきますよ!




