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黒の勇者 ―逆襲のゴーレム使い―  作者: 丸瀬 浩玄
第四章 黒の復讐者
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 現状蒼汰の武器と呼べるものは、ゴーレムと魔法しかない。しかしそのどちら共が、ティラノもどきには有効な武器(攻撃手段)とはなり得なかった。

 では今ある手札でどうすれば、より強力な武器(攻撃手段)を得ることができるのか?

 そう考えた時、蒼汰の脳裏に当然のように浮かんだのは、ゴーレム鎧の事だった。


 ゴーレム鎧は、その名の通り鎧型のゴーレムだ。それは蒼汰の意思一つで自由に動かす事ができる、パワードスーツとも言える存在だ。

 蒼汰にとってパワードスーツは、近未来の一種の兵器というイメージがあった。

 蒼汰は、その近未来兵器とも言えるゴーレム鎧を見て、同じように【ゴーレムクリエーター】の能力で新たな武器を作る事ができないかと考えたのだ。

 つまりゴーレムを使った武器――運動エネルギーを利用して攻撃力を強化した武器――を、である。


 最初に作ったのは杭打ち機――所謂パイルバンカーと言われる空想の兵器だ。

 武甕雷を一体潰し、ゴーレム鎧の右腕に被せるようガントレット形に成形、さらにその外側に太さ直径五センチ、長さ一メートルの杭を装着した。

 完成形としては、普段蒼汰が身に付けているゴーレム鎧の右腕が三回り程太くなり、そこに太い杭が付くことになる。

 使い方としては、ターゲットに接近して右拳を押し当てると同時に杭を高速で射出、打ち込むというもの。


 使用した評価は――使えない。

 まず非常にバランスが悪い。腕が三回り程太くなるようなガンドレッドに、直径五センチ長さ一メートルの鋼鉄の杭が付いてくるのだ。当然と言えば当然であろう、

 他にも、射程が短い上に杭を打ち込むのに、どうしても溜めがいるというのもよろしくない。

 理由は拳を支点としている為、ターゲットを殴れる位置まで近付く必要がある上、打ち込みの衝撃に耐えれるように踏ん張る必要があるからだ。

 どうにかならないかと色々工夫を凝らしてみたが、改善策が見られず、結局この案は廃案となった。




 続いて作ったのがドリル。

 パイルバンカーの失敗の後〝運動エネルギーとは〟と、蒼汰が改めて考えた時に真っ先に浮かんだのが、回転運動によるエネルギーだった。

 そして作ったものが穂先をドリルにした槍だった。

 穂先を、抉るような切り刃の付いた円錐状に成形し、高速回転させるように加工した。

 穂先だけでも長さ五十五センチ、直径は約三十センチ程。柄の長さは約二メートル半と言ったところか。当然ゴーレムであるため総鋼鉄製に変質させてあり、質量兵器と言ってもいい重量がある武器となった。


 使用した評価――破壊力は間違いなくある。ティラノもどき相手でも、かなりのダメージを叩き出してくれるのではないだろう。ただし初撃だけならば……


 重心が穂先に有ることもあり、突撃には非常に効果的に作用する。だがしかし、その次が続かない。

 バランスが悪すぎてまともに扱えないのだ。さらに蒼汰は槍の扱いに慣れていない。故に突撃だけならば問題はないが、その一撃で倒せなかった場合、どうしようもなくなってしまう。

 使えなくはないが、すぐにどうこうできるものではないという事だ。

 仕方なく蒼汰は、ドリル槍を一時保留として次を作ることにした。



 次に作ることにしたのは丸ノコ――電動ノコギリとも言える工具。いや、武器だ。

 しかしこれはすぐに頓挫することになる。理由は簡単、どうにも扱い難いのだ。

 そもそもティラノもどきのような巨大な魔物に対するには、それなりの大きさを持った武器が必要となる。

 それを丸ノコで行おうとすると、どんな形の武器にするにも、かなり大きな円盤型ノコギリ刃が付くことになり、恐ろしく使い難くなってしまう。はっきり言ってそれでは使い物にならない。

 そこで発想を変えることにした。類似工具の中にチェーンソー(鎖鋸)と呼ばれものがある。

 小さな刃の付いた鎖を高速回転させ、木などを伐採する為の工具なのだが、剣型で似たようなものが作れないかと考えたのだ。

 もちろん同じものを作るというわけではない。そもそも剣としての扱い易さを損なうわけにはいかないため、刃を鎖にはできない。あくまでも発想を取り入れるだけだ。


 そして出来たのが、剣の刃だけが剣の外枠に添ってチェーンソーのように回転させる大剣だった。

 ゴーレムの動きを刃の回転のみに集約させているため、刃の回転速度はかなり速い。

 モーターやエンジンのような動力を積んでいるわけでないため比較的音は静かで、わずかにする扇風機や換気扇が回る時のような〝ブーン〟という風切り音のような音さえ気にしなければ、普段使いでも支障はないだろう。


 剣の形はやや肉厚、刀身は長さ一メートル半、幅二十センチ弱とティラノもどきの巨躯にも対応できるよう、長くそして太めに作ってある。

 特徴的な部分としては、刃を剣の外枠に添って回転させるため、切っ先に若干丸みをもたせている。

 ただ刃そのものが高速で回転しているため、切っ先が鋭くないからと言って、刺突能力が落ちるということはない。それどころか、刺した後も傷を抉り続けるため、殺傷力は上がっていると言っていい。

 評価は上々。扱い易さと高い殺傷力を併せ持った武器と言えるだろう。

 またゴーレムであるため、蒼汰の意思一つで回転を止めたり動かしたりできるのも高評価に繋がっている。


 また色々試す中で一つ分かった事がある。

 それは使用する魔核により回転速度が変化するという事だ。

 つまり今、使用している【F4】ランクの魔核よりも、より高ランクの魔核を使えば、刃はより高速に回転しさらに殺傷力が増す。ゴーレム鎧同様、まだまだいくらでも強化できる武器という事だ。

 もちろん先に作り保留にしていたドリル型の槍にも同じ事が言える。だが蒼汰の好みは圧倒的にこの剣型のゴーレムだった。


 まだまだ細かな調整は必要だが、近接武器としては、この剣型ゴーレムをもって一応の完成を見たと言えよう。

 理想を言えば、武甕雷にも渡せるだけ作りたいところであったが、最低でも【F4】ランクの魔核でなかれば出力不足となる為、新たに高ランクの魔核で手に入るまでは保留とすることとなった。




 近接武器の作成が終われば、続いて行うのが遠距離武器の作成。


 遠距離武器といえば、すぐに浮かぶのが弓矢やスリング、投槍、投剣と言ったところだろうか。

 この中でティラノもどきに効果的と思えるのは投槍くらいだろう。ただし投槍一本や二本でどうこうできる相手でない以上、それも正直現実的でない。

 ではどうすればいいのか?

 そこで蒼汰が考え作る事にしたのが、彼の元の世界において強力な殺傷力を持つことで知られる、ある武器だった。


 その武器を作るにあたり、蒼汰は【F3】ランクの魔核を一つ取り出し、それを使用したある実験を始めた。

 その実験とは【ゴーレムクリエイター】の能力を使い、魔核も鉱物と同じように変形させる事ができるのかを試す、というものだった。

 結果――問題なく変形させる事が出来た。もちろん鉱物と同じように楽々に、とはいかなかったが、通常の五倍以上の魔力と時間を掛ければ、問題なく自分の思うように好きな形に変形させる事が出来ると分かった。


 続いて蒼汰が行ったのは、その魔核を岩石に混合する事だった。

 普通に考えれば、魔核も岩石も飴細工のように動かす事ができるのであれば、決して難しい事ではないだろう。実際に魔核と岩石は、多少の時間と労力を要したものの、問題なく完全に混ぜ合わせる事が出来た。


 そうして出来上がったものが、魔核が均等に混ぜ合わさった岩石の塊、直径一メートル半、高さ一メートル程の丸みを帯びた物体であった。

 ちなみ、こんな形をしていてもゴーレムとして運用することは可能だ。ただし魔核を溶かし混ぜ合わせてしまった為か、出力は使用した魔核からすると、かなり低下している。


 そんな魔核混合岩石から、小さなパチンコ玉程の塊を千切ると球体に成形、さらに鉄へと変化させる。

 続いて行ったのは、先日新たに手に入れた【ゴーレムクリエイター】の能力――魔法付与。それを使用し、今作ったその小さな鉄の玉に爆炎の魔法を付与する。

 そして出来上がったのが、爆炎の魔法を封じ込めた小さな球。


 早速試しにと出来上がったそれを、やや離れた場所に置き発動させてみる。

 するとパンッ、とかなり大きな乾いた破裂音が地底湖に響き、小さな鉄の球はどこかへと勢いよく弾け飛んでいった。

 その結果に満足したのか、蒼汰は小さく頷くと今度は、片側の穴だけを塞いだ少し厚みのある鉄パイプを作る。

 次に先ほど作った爆炎魔法の球を作り、それを鉄パイプに込める。

 出来たそれを一通りチェックした後、筒先を地底湖に向け構えた。

 再び起こる大きな破裂音――同時に筒先から飛び出す鉄の球。勢いよく飛び出しそれは、狙った場所よりもやや手前に着弾して小さな水しぶきを作り出した。


 蒼汰が作り出した物――片側の穴を塞いだ鉄パイプに弾を込め、火薬の代わりに弾に付与した爆炎魔法を発動させ弾を撃ち出す仕組みの武器。

 それは所謂火縄銃に近い構造の武器――そう、銃である。

 しかもここで使われている弾丸は、魔核を使用したゴーレムである為、他のゴーレム同様、蒼汰の魔力の中に収納していつでも取り出すことができる。つまり大量に用意しても、持ち運びに困るという事はないのだ。

 ただ、魔核を鉱物に混ぜ合わせ小さく細切りにしている以上、普通のゴーレムのようには使えない。そもそもゴーレムのように動かすことすらできないし、本来であれば何度でも使用可能な魔法付与も、一度使用しただけで使えなくなる。

 まさに【ゴーレムクリエイター】で作られた、使い捨ての弾丸ゴーレムというわけだ。

 

 この実験結果に成功を確信した蒼汰はこれを元に、この銃という武器にさらなる改良を重ね始めた。



 まず先人に習い、弾丸の形を球体から本来の銃弾と同じ形状に変え、材質も鉛に変更した。その上で弾丸を鋼でコーティングして、ティラノもどきの硬い外皮を貫けるよう貫通力を上げる事にした。

 さらに、爆炎魔法を付与する箇所を弾丸の底部付近のみとし、より元の世界の弾丸に近い仕様に変更して発射速度、威力を向上させた。


 当然、銃本体にも改良を加えた。

 元の世界の知識を元に、銃砲身内に螺旋状の浅い溝を掘り、弾丸に回転運動を加え直進性と貫通性を強化させた。所謂ライフリングというやつだ。

 もちろん簡単には出来ず、トライ&エラーを繰り返しで何度も角度や幅、深さなどを改良して、理想の形を作り上げた。


 さらに銃そのものを【F4】ランクの魔核を使用したゴーレムに変更。その上で銃砲身内最奥、つまり弾丸が装填される底部に爆炎魔法を付与した。

 目的は弾丸側に仕込まれた爆炎魔法と同時に銃砲身内でも爆炎魔法を発動させる事で、発射威力を強化するためだ、

 しかもこの銃側の魔力付与は、魔核をそのまま使用している上、小規模な爆破に抑えている為、ある程度連射が効く。概ね一秒の一発と言ったところである。

 これに関しては魔核のランクを変えると連射できる間隔も変わる為、より高ランクの魔核を使用すれば、さらに速い連射も期待できるだろう。


 武器の開発は概ね順調。だが蒼汰はまだ満足していなかった。

 作られた銃のさらなる強化、そして運用方法の改良、やりたい事は山ほどあるのだ。


 そして、前回ティラノもどきと戦ってから二ヶ月の月日が過ぎ去った頃、ようやく蒼汰にとって、一定の評価ができる物が出来上がった。

 即ち――ティラノもどきとの再戦である。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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