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噎せ返るような鉄錆の臭いと光を失った大きな瞳が三十組、ギョロリと此方を見る。
僕はつい顔をしかめた。
ボロボロに崩れた食堂もだが、どうも状態が悪い。
守るようにローマンを抱き抱えて、僕は計画の一歩を踏み出した。
「初めましてですまないが。君達には軍隊をつくってもらう」
ざわり、と空気が揺れる。
驚きのあと、敵意のこもった視線が向けられるのを感じた。
誰かが、軍隊……?と言葉を発する。
僕は耳聡くそれを聞き付け、そうだ、軍隊だ!と拳を握りしめる。
突然の行動過ぎて、僕が彼らの立場だったら呆然とするだろう。ってかされてる。
驚きだよね!ごめんね!でも譲る気はないんだ!(屑かよ)
ごめんなさーい!!その場の雰囲気に巻き込ませてもらいまぁす!
「皆、今回の戦で、何人親友を失った?」
その一言だけで、触れれば切れそうな位に敵意や殺意が僕に向かってくる。
分かってるよ。これが最悪の言葉だなんて。
分かってるよ。これが最低の方法だなんて。
でも
「僕は、家族を失った」
僕には。もう時間が無いんだ。
昨日のことだからか、鮮明に思い出すことのできる家族の死に、勝手に一筋のしょっぱい液体が右目から流れた。
たった三歳の小さな小さな子供が、家族を失って、生まれたばかりの弟を守りながら訴える姿は、きっとお兄ちゃん面したい彼らの心には深く突き刺さるだろう。
「……悔しかった。自分だけが生きていることが。
悲しかった。兄弟家族を亡くしたことが。
……僕には、僕の手のなかにある大切なものはもう、この小さな子供しか居なくなった」
ねぇ。皆、
大切なものがいれば、人生楽しいと思わない?
泣きそうな瞳を細めて、極めて悲しげに笑った
「大切なもの、皆で作って皆で守ろうよ。」
この言葉に依存してしまえば、もう簡単には抜け出せない。
きっと、この孤児院は、戦い続けることに成る。
それを知っていてなお、僕は何も言わない。
僕は食堂の中央からローマンと共に外へ出る。
他の人たちは、じっと黙しながら色々考えているようだ。
扉の外で待機していたツンデレ美少女とアルナルドの顔がなんとも言えないものを見る顔になっていて、少し居心地が悪かった。
短い!