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今回は特に関係のない話です。
読み飛ばしてもオケです
謎の白い空間。エルが一度死んだときに来たような空間が広がっていた。
いや、あのときよりもまだ賑わいがあると、上品なティーカップに口をつけ、優しくこちらもまた品のある仄かに甘酸っぱいような匂いのする紅茶を嚥下した。
かちゃりとしずかに、マホガニーのテーブルにしかれたエスニック風のテーブルクロスの上におかれた受け皿にティーカップを置くと、それと同時にコーヒー牛乳を飲み終わった相手が、何故かコーヒー牛乳をいれていた湯呑みをコトリと置いた。
「……何か用ですかね。神様」
「あは。バレてた?なぁに、これといった重要な用があるわけでもないさ」
目を三日月のような形に歪める。
あれで笑っているつもりなのだろうかと眉をしかめた。ぞわりとせすじが粟立つような不快感を覚えて、ティーカップの持ち手にちからを入れる。
「そんなに警戒しないでよ……だぁいじょーぶだって。ホントに今はなにもしないから」
今はという言葉にまた眉を顰める。いつかは何かするつもりなのかとイラつく。
「……まーホントにしないって。今日の用件はあれだよ、あれ」
「あれ?」
「今日は、君の世界では、なんと!九月十八日なんだよね!」
「はぁ」
相手は不満そうに唇を尖らせる。
といったって、白い靄のようにしか見えないのだが。
九月十八日がどうかしたというのか。
怪訝な顔になった僕を見て、相手はコロリと態度を変える。
嘲るような笑顔になって、人差し指をたてた。
「何が起きてるのかわからないって顔だね?
はっはー、だいせーかい。だって、今日はジョアンナちゃんの誕生日さ!」
「……は?」
思わず漏れた呟きを拾った相手はまた笑った。
「あ、吃驚?吃驚した?だろうね。オレも最近まで忘れてたくらいだし」
「……忘れてたのかよ……」
呆れてものも言えない。最悪だこいつ。
ため息を噛み殺していると、ヘラヘラと笑ったそいつは湯呑みからコーヒー牛乳を啜った。
「ってことで二人寂しくジョアンナちゃんの誕生日を祝おうって話をしてんの」
「主役もおらずに?」
「うん」
「寂しくね?」
まぁねーとヘラヘラ笑ったそいつはパン、と柏手を打った。
突然の行動としなやかに響いた大きな音に目を見開いていると、そいつは少し寂しげに笑った。
「エルベルトとジョアンナちゃんに祝福を……
まぁ、オレにはこのくらいしか出来ないけどね」
虹色の光が粉雪のように世界に降り注いだ。
つんとつつくともっと弾けた。
何で自分にも祝福を与えてくるのだろうかと不思議に思うも、口に出さない。
「綺麗でしょ?またいつか見せてあげるよ」
「いつか?」
「うん、オレもう時間ないから行かないと」
「へ?ち、ちょっと待って」
「またね」
すぅっとそいつは薄れて消えていった。
ジョアンナちゃんの誕生日要素はどこに消えたのだろう……
僕は口元をひきつらせた
そんなある日の夢の出来事




